2012.10.10 13:02/ Jun
「仕事をはじめてから、あなたをもっとも成長させた出来事を思い出して下さい。そのときの、あなた、あなたの仕事・あなたの職場の状況を、ブロックを用いて、5分間で表現してみてください。
このワークの目的は、上手な作品をつくることではなく、下手であったも、その作品を指さしながら、自分の仕事や職場の状況を語ることです。それでは5分間で御願いします」
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今のあなたが、こういうインストラクションに出会ったとしたら、どのような「かたち」をつくりますか?
ここではブロックを用いていますが、1)誰にでも扱うことができて、2)上手・下手の差が出にくくて、3)片付けやすいもので、かつ、4)それなりの抽象度があるようなものであれば、どんな「表現メディア」であっても、かまいません。
いずれにしても、これまで自分が、仕事をしてきて、もっとも印象に残る場面・出来事をひとつ思い起こして、そのときの「自分・自分の仕事・職場の状況」を「表現」してみるとしたら、どんなかたちをつくりますか?
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ブロックのみならず、様々な「表現メディア」を用いて、これまで、僕は日本のビジネスパーソンに、こういうエクササイズをしてもらいました。たぶん、その総数は、もう千人規模になっていると思います。
「表現」を通じて、自分の仕事や職場の状況を他者に対して語り、「内省」を深める。いわば「表現メディア」は「語りのためのメディア」でもあり、「内省のためのメディア」でもあります。
僕にとって「表現」とは「語り」を媒介するメディアであり、「他者に対して語り」が駆動するとき、「内省」が生まれるのだと思います。
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日本のビジネスマンに対して、こういうワークをしていて、圧倒的に面白い(失礼かもしれませんが・・・)のは、自分と同年代のミドルクラスの方々にワークをやってもらった場合です。
特に彼らの「修羅場体験」の「表現」「語り」は、非常に興味深いものがあります。
さすがに、他者のつくったオリジナルを紹介するのは、憚れるので(笑)、よくあるモティーフを再現してみましょう。
まず、よくあるモティーフは、下記のように「自分が背負わされていること」を表現するパターンです。
先日印象的な作品をおつくりになったこの方は、あるIT企業につとめておられる方です。
この方の表現した内容は、「納期遅れで火を噴いているあるプロジェクト」です。自分は、この「修羅場プロジェクト」の「火消し役」として、現場の責任者をまかされました。頭の上にのっている「お花畑のついた人々」は、「プロジェクトに火を噴かした張本人たち」だと思われます。
この方が大変なのは、自分の前方に「お客様」がいて、そちらを向いて闘っているのに、後方にも、一人、組織の中から「恐ろしい影」が忍び寄っていることです。
「忍び寄る影」の手には、前で闘っている自分をねらう「刀」が握られていることがわかります。
実は、本当の敵は前にいるのではない。事実、前方の人々は、武器をもっていません。本当の後にいた「組織内部の人間」だった、というわけですね。
おお、恐ろしい。
くわばら、くわばら。
でも、こういうこと、よくありませんか?
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働く大人がつくるブロック表現で、最も頻繁にあらわれるモティーフのひとつが、「長くのびた橋」のようなものの先端に、自分が位置づけられているものです。
この方は、ある外資系の方とのタフな交渉を担当なさっていたのですが、自分(赤い忍者)は、追い込まれて、もう後がないことがわかります。これ以上、もう譲歩はできない。しかし、前方にいる交渉相手(モンスター)は、じりじりと詰め寄ってきています。
ブロックの右には、モンスターに倒された人なんでしょうか。横たわる人々の群れが見られます。
こういうモティーフも、よくあらわれます。印象的には、特に、右も左もわからないまま職場に投げ込まれた新入社員、タフな交渉を迫られているミドルクラス・役員クラスが、こうした表現をすることが多いように感じます。
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最後は、成果を出さなければならないと焦っているミドルマネジャーに多い表現です。そういう方は、よく「車」を使った表現を行います。
このミドルマネジャーは、自ら方針を示し、自ら率先して、自分の職場の新規プロジェクトを率いていたはずでした。
しかし、振り返ってみると、職場のメンバーは、動かず、ミドルマネジャーとは反対側を向いていることがわかります。
かつ、皮肉なのは自分だけが「車」に乗っていたことに気づかされます。他のメンバーは「徒歩」であるにもかかわらず。
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ちなみに、今日のブログ記事を書いたら、数時間のうちに、何人かの方から、「新人の場合はどうなんだ?」というご質問をいただきましたので(笑)、ちょっとだけ、ご紹介します。
新人(新入社員)に対して、入社半年後、「現在の、あなたの仕事・職場の状況を表現してください」というインストラクションをいたしますと、よく彼らの作品の中に出てくるメタファは「階段」や「輪」です。
「階段」は、下図に見るように、おそらく、仕事ができるようになっていくプロセスを表現している場合と、キャリア(昇進)までの長さを表現しているのではないか、と思います。
興味深いのは、自分と上の世代とのあいだには、比較的長い「間」が表現されることです。つまり、人形と人形の間隔は広い。それに対して、上の世代同志は近い関係にあり、「だんご」のようになっていることを表現なさる方が、時折おられることです。
これは「上の世代(バブル世代以前)」の人数が多く、いわば「だんご」になっており、「上が、つかえていること」「自分のキャリアに見えない天井があること」を表現しているのだと思います。
新入社員のつくる作品に多いのは、あとは「輪」です。「輪」というより、「人形の向いている方向が向中心的である」というんでしょうか。作品の中に含まれる人形が同じ中心を向いているものを、僕は「輪」とよんでいます。
「輪」は「自分の働く圏内」、すなわち「職場」を表現しているのだと思います。「輪」には「ポジティブな輪」と「ネガティブな輪」いうものがあります。
「ポジティブな輪」は、下図のように、マネジャーを中心に、職場の統制がとれており、かつ、皆が同じ方法(中心に向かって)を向いているような「輪」ですね。比較的、「よい職場」に配属された新人達の作品に多いでしょうか。マネジャーの頭が「火がボーボー」になっているのは、多忙さの表現でしょうか。
「ネガティブな輪」は、確かに人形は「輪」を構成しているものの、全員がバラバラな方向を向いていたり、かつ、「頭がとれている人形」「倒れてしまっているような人形」から構成されます。
多くの場合、新人は、自分の働く先を選ぶことはできません。あまり状況のよろしくない職場に配属された新人が、こうした表現を行うことが多いような気がします。
あとは、近年、とみに多くなっているのは、自分が「新人」として保護されていることを、下図のように「壁」で表現する事例です。
新人は、新人としてよばれる1年間は、なるべく外界 / クライアントなどからの厳しい要求にあてずに保護されている会社も少なくありません。この壁が急になくなるのは2年目以降になります。この2年目以降に戦々恐々としている事例も、まま、目にします。
また「新人を保護している」というモティーフの作品をつくるのは、人事・人材開発をご担当なさっている方に多いような気もします。実際、そのような人事施策が打たれているケースも少なくないのかもしれません。
だいたい新人のつくるブロック、表現は、こんなかたちでしょうか。これ以外に、先ほどにも述べましたように「細い棒」というのも、頻発するモティーフです。皆さんの会社・組織の新人さんたちは、どのような「かたち」を表現なさるでしょうか。
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Anyway・・・
こういうワークに「正しい / 間違っている」「うまい / 下手」はありません。
自分が思いもよらないことを、自分で表現してしまっていることを発見するのは驚きですし、また自分の作品を他者に語り、そこから意外なコメントがくるのも面白いものです。
今日はビジネスパーソンの事例を紹介しましたが、これまで、僕は、民間企業の役員、ミドルマネジャー、実務担当者に加えて、医師・看護師・小中高校の現場の先生方など、多種多様な職業の方々に、このワークをやってきました。
今まで最低人数は1対1です。つまり「サシ」(笑)。その方は経営者の方でしたが、レゴを素材に2時間語り続けました。涙あり、笑いありのハートフルなストーリーでした。
最大人数は、横浜市教育委員会の仕事で、500名の10年次研修の教員の方々に、レゴワークをやらせていただきました。学校の様子、現場をとりまく500のシーンが、あらわれました。
面白いのは、職種によって、表現が微妙に変わることです。
たとえば、医師・看護師のおつくりになる作品には、「ベット」や「寝ている人形」が多くなります。言うまでもなく、「ベットサイドの患者」ですね。印象深い出来事は、患者との相互作用の中にあることを表現なさっているようです。
下記に期間限定!?(わかんない・・・盛り上がらなければすぐにしめる)で、Facebookページをつくってみました。ぜひ、皆さんの作品・そこにまつわる物語をアップロードしてみてくださると面白いかもしれません。
1.タイトル
2.どのような業界におつとめですか?
3.何を表現していますか?(ポジション・役割など含む)
投稿なさる際は、ぜひ、上記を書いてくださると、コメントや思わぬ共感が生まれるかもしれませんね。
そして人生は続く。
「忘れられない仕事の一瞬」:Management, Expression and Reflection
http://www.facebook.com/ManagementExpressionAndReflection?skip_nax_wizard=true
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■2012/10/09 Twitter
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