NAKAHARA-LAB.net

2012.9.21 15:00/ Jun

「親が子どもに望むもの」と「子どもが本当に欲しいもの」

「親は、ベスト盤を、子どものために、よかれと思って選んでしまう。そして、子どもの本当に聴きたい曲に限って、ベスト盤には入っていない」
(重松清「小さきものへ」)
   ・
   ・
   ・
 先日、ある造形ワークショップに息子「TAKUZO」とお邪魔したときのことです。
 そのワークショップでは、「床に青いビニールシートでひいたうえで、子どもに絵の具と筆を与え、自由に絵を描かせる」というワークをしました。
 ワーク自体はとても面白く、TAKUZOのみならず、親である僕もとても愉しむことができました。
 しかし、そこで僕は、はたと考えさせられる出来事に出会いました。「親として子どもに望むこと」は必ずしも「子どもの望むこと」とは重ならないこと – あたりまえのことではあるのですが – そのことを改めて実感したのです。
 ▼
 皆さんがもし「親」だったとしたら、先ほどのような「自由絵の具お絵かきワークショップ」において、子どもに「何」を望むでしょうか。
「どんなに汚してもいい空間」が与えられ、自由に絵の具と筆を使っていい、と言われたら、子どもにはどのような絵を描いて欲しい、と願うでしょうか。
 明確に口に出さずとも、子どもの描く絵がどんな絵だったら、いいなと考えるでしょうか。
 僕は、何色を使ってもいいのだから、なるべくカラフルに絵を描いてもらいたいな、と思いました。そして、TAKUZOにそれを、それとなく促しました。
「ここ、青とかを使ってもいいんじゃない」
「ここ、黄色と赤がきれいじゃない」
「もう少しカラフルな方がいいんじゃない」
 しかし、こうした親の予想に反し、TAKUZOや子どもたちがもっとも喜んだのは「青」でも「黄色」でも「赤」でもなく、「黒」なのです。
「カラフルに色を使うこと」ではなく、「黒で白色の空間を塗り、ただひたすらつぶすこと」なのです。それが彼らにとっての「自由」でした。
 ただ黒一色で、ひたすら、誰に邪魔されることなく、黒で空間を塗りつぶすことに没頭することが、子どもの求める自由でした。
 この様子をみて、ハッと僕は、我に返りました。そしてつくづく痛感しました。
「子どもの本当に聴きたい曲に限って、親の選ぶベスト盤には入っていない」
 のだと。
 子育ての経験は、僕にいろいろなことを教えてくれます。その経験から導き出される教訓は、時にビターであることもあります。
 しかし、僕自身も、様々な「思い込み」に囚われている存在であることを自覚させてくれる点で、それはかけがえのない一瞬です。
 そして人生は続く。
 —
追伸.
 最近、盆栽に凝っています。本当は自分のことを「アイアム・盆栽ボーイ」といいたいのですが、さすがに、四十肩の、頭髪薄めのオッサンが「ボーイ」はないだろ、という「激しく鋭く内角きつめのツッコミ」が入って、小生、リブート不能になってしまいますので、「アイアム・盆栽ミドル」ということにしておきます(笑)。「盆栽中年」はやめてけれ、せめて「盆栽ミドル」(笑)。
 まぁ、 いずれにしても、茶髪でイケイケゴーゴー?だった10代後半の頃の自分が、もし仮に「20年後の自分が盆栽をいじって悦に入ってる」と知ったとしたら、きっと、「腰砕けてヘロヘロ」になってる、と思うけどね(笑)。変わるもんだ、人は。
 
jun_bonsai_iizo.jpg
 真ん中の「松」の盆栽は、昨日、ラーニングイノベーション論受講生の皆様にプレゼントいただいたものです。この場を借りて感謝いたします。本当にありがとうございました。その他のは、渋谷のオシャレ盆栽屋さん「NEOGREEN」で購入したものです。ここは最高です。
NEOGREEN
http://www.neogreen.co.jp/
 盆栽ボーイ、盆栽ガールって、絶対に流行ると思うけどな。

■2012/09/20 Twitter

  • 14:24  おめでとう、すごいですね。スピーチジャマーとは、また驚き!http://t.co/mOTnPt74 RT @qurihara: イグノーベル賞 とったどー”
  • 12:45  布施さん、はじめまして。大変興味深い試みですね。応援しています!RT @cotafu otontoを運営している布施といいます。子ども会社見学会が広がると、otonも子どもも/元気に誇りを持って生きていけるんじゃないかと思うんです。http://t.co/Uiho8coK
  • 01:25  うちのオヤジも、オフクロも、仕事は「電話系」でした。子どもの頃、電話交換機(電話をつなぐ巨大な機械)がバチバチと音をたてて電話がつながるところ、とかを職場見学させてもらいました。そのときのことは、今でも覚えています。子どもを連れて職場にいくって面白いかも。
  • 01:21  オトンの会社で子どもが仕事をする。面白い>「otonto」pd子ども会社見学会 http://t.co/Uiho8coK
  • 01:18  メモ>父と子の遊びサイト「Otonto(オトント)」:http://t.co/IpU0pn5e
  • 00:18  ラーニングイノベーション論、受講生のみなさま、本日は本当にありがとございました!心より感謝です!RT @makimuramaho: お誕生日プレゼント大量に抱える @nakaharajun 先生 http://t.co/qMadFZFj
  • 00:16  曽山さん、今日はありがとございました!RT @SOYAMA: ありがとうございます!とても嬉しかったです(^^) RT @makimuramaho 中原先生、今日お話を伺ったサイバーエージェント 曽山さん、なんとお誕生日も一緒でした!授業終了後にお祝い中


Powered by twtr2src.

■2012/09/19 Twitter

  • 23:17  RT @t_mochizuki: ヒューマンインターフェイス学会論文誌 「教育・学習」への論文投稿のご案内 http://t.co/qL4hhpvw 投稿締切:2013/01/31(木) 必着  掲載予定:2013年 8月
  • 22:33  断言して、退路を断つのが、好きなのかもしれません(笑)。どMですね。>@tkanai1954 前回を超えるという断言は、すごい、すばらしい、わくわくですね RT Unconference 2012@吉野  [in reply to tkanai1954]
  • 22:31  「アンディ・ウォーホルは当時の慣習にことごとく逆らい、大勢の人々を激怒させていたんだ」>アンディ・ウォーホル「スーパースター」:関係者の語りを通じて、アンディの人間像・作品に迫る。面白い。:http://t.co/NZ8qBtmT


Powered by twtr2src.

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.22 08:33/ Jun

最近、僕は何をやっているのか?そうね、いろいろやってます!?

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)