NAKAHARA-LAB.net

2011.12.7 17:38/ Jun

人材育成の「内製化」について思う : ウチかソトかの二分法を超えて

「実務家と研究者の方々が参加する【INHOUSE】という公開研究会をやりますよ!」と宣言して、はや1ヶ月になりました。
INHOUSE.jpg
経営学習研究会【INHOUSE】 : 人材育成内製化のアート(技術)  サイエンス(科学)、そしてポリティクス(政治)
http://www.nakahara-lab.net/blog/2011/11/i_n_h_o_u_s_e.html
【INHOUSE】は、企業・組織の人材育成を「内製化」することに関連する方々のコミュニティであることをめざし、来年年明け以降、何らかのかたちで募集をはじめさせていただこうと思っています。
 ここでいう「内製化」とは、「自分の組織のメンバーを対象にして、組織につとめる実務家の方のファシリテーション・インストラクションによって創設される学習・知識創造機会」のことと定義します。
 要するに、ポイントは、企業組織外からの外部の「介入」を得ない、ということです。とりあえずは、この定義から物事を考えてみましょう。
  ▼
 公開研究会【INHOUSE】は、実務家のKさんの強力なサポートと、多くの実務家の方々からの支持を得て、明日、いよいよ「公開研究会のための(本番に向けての)準備ワークショップ」を実施させていただくことになりました。
 Facebook上の某コミュニティの方々に募集を募ったところ、30名近い方が、このワークショップに名乗りをあげていただき、まずはお互いに事例を持ち寄って、今後、何をしていけばいいのかを考えるところからはじめましょう、ということになりました。
 年明け「本番」?に何をしていくかは、またそれから考えましょう、ということですね。
 誠に緩く、それでいて、「志」は高く、明日、会をスタートさせることになったのです。
  ▼
 ところで、興味深かったのは、現在企業組織で実施されている【INHOUSE】の中身です。皆さん、だいたい、その「全貌」を想像できますか?
 実は、明日の準備ワークショップのために、Kさんが【INHOUSEの各社事例】を集めるワークシートをつくって、参加希望の方々30名弱に配布して、集計してくださったのです。
 で、そこで皆さんから集められた事例が、誠に多種多様で、どっから整理してよいか、いまだ、悩んでいます(笑)。たぶん、明日も悩んでいるでしょう。そして、結局は、参加者の皆さんと、それについて、うんうんと考えることになるんでしょうか・・・。
 いわゆる「研修の内製化」からはじまって・・・
 組織理念の共有
 組織コミュニケーションの円滑化
 マネジャー同士の対話促進
 職場の人材育成支援
 若手のフォローアップ
 経営陣とマネジャー層によるビジョン戦略構築
   ・
   ・
   ・
 多種多様な「場」が、組織内部のメンバーによってつくられていることになります。
【INHOUSE】の実態は組織内部の問題の根幹にふれるが故に、なかなか外部には出ませんが、誠に多種多様で、決して、「ひとつの括弧」でくくれないような中身が、飛び出してきました。むろん、今は【    】でくくっちゃってますけれども(笑)、それが適当かどうかは、今後の議論ということで。
  ▼
 皆さんから寄せられたワークシートの事例をじっくり眺めていて、つくづく思うことが3つあります。
 ひとつめ。
【INHOUSE】は、単なる「コストカットの欲望」から生まれているのでは「ない」ように思います。もちろん、それもある。それもあるんだけど、それだけじゃない(笑)。そこを読み違えると、【INHOUSE】の本質を読み間違えるような気もします。
 むしろ【INHOUSE】のムーヴメントは、
「現場・経営に直結するコンテンツをつくりたい」
「人事・経営企画がドゥアブルではなくデリバラブルを発揮したい」
 といったような、組織内部のプロアクティヴな衝動、あるいは人事・経営企画の組織に占める位置から「も」生じているような気がするのです。もし仮にそうなら、これはリーマンショックや欧州危機による一時的な傾向ではない、ということになります。それは戦略・経営と人事・人材開発を同期させたい、という1980年代以降の潮流の延長上にあられた現象ということになるのだ、と思います。
 だから、畢竟【INHOUSE】を宣言することは、結局、組織内部に返ってくる問いになってしまいます。
「人事・経営企画といった部門が、どのような価値を組織に対して提供しうるのか」
「また、そのためにはどういうコンピテンシーを有する人材が必要なのか」
「部門としてはどういう組織力を高めておかなければならないのか」
 を結局、問うことになると思います。
【INHOUSE】は、一見、組織外部に投げられた刺激です。しかし、その「問いかけ」は、すべて、結局は、組織内部に返ってくるということです。
  ▼
 ふたつめ。
【INHOUSE】は、インハウスといいつつも、きっとちゃんとやろうとすると、組織外の様々な力を借りることになるんだろうな、ということです。
 どんなに努力しても、おそらくですが、組織の中の人には「できること」と「できないこと」がある。「できないこと」に関しては、「外部」の智慧や技術を借りる他はない。
 一方、「組織外部」から組織に介入する人々にとっても、やはり「できること」と「できないこと」がある。「できないこと」に関しては、「内部」の動きや働きかけを借りる他はない。
 問題は「内部にはできないこと」と「外部にできること」がマッチングしているのか、ということです。
「内部にできること」と「外部にできること」が重なっていれば、それはアンマッチです。もちろん「内部にできること」と「外部にできないこと」が重なっていれば、やはりアンマッチです。
 また、「内部にできないこと」で「外部にできないこと」を追い求めることは「夢想」です。それは「誰にもできないこと」です。
 いずれにしても、この「可能性の4象限」そのものを、反省的に吟味することから、まずははじめるべきでしょう。
 そこを読み違えて、早とちりして、【INHOUSE】を曲解すれば、外部にとって【INHOUSE】は、単なる「脅威」でしかなくなります。しかし、そこを看取ることができれば、【INHOUSE】は組織内外の人々にとって、互恵的な関係のもと遂行できるプロジェクトに成り得るのではないか、と思います。
  ▼
 みっつめ。
 それは、【INHOUSE】に取り組む人々にとって必要な智慧と経験とは、予想通りですが、いわゆる「一般的なワークショップ」、いわゆる「一般的なファシリテーション」のそれとは異なるとは言わないけれど、それだけではない、ということです。
「組織を離れて、人が、自分のために、自由意志によって、自発的に集まる場」と「組織内部において、人が、組織のために、自由意志とは無関係に集められる場」とは、本質的に必要なスキルが異なると僕は思います。
 問題は、それに関する智慧が、どのように獲得可能で、もし自力では難しい場合、誰が提供可能か、ということです。
  ▼
 以上3点を、ワークシートを読んでいて、僕は感じました。
 是を仮にワンセンテンスで述べるとしますと、
「ウチか、ソトかではない。ウチとソトがいかなる関係の中で、協働し、どのような価値をつくりだせるか」
 だということになります。
 結局、問われているのは、ウチもソトもでもあります。
 それは、大げさにいえば、人材育成のエコシステム(生態系)そのものである、ということです。
 ともかく・・・明日は、まず、これらの事例を共有しつつ、少しずつ整理し、それぞれごとの問題点や葛藤などから議論できればいいな、と重います。もし皆さんの中で、ご意見をお持ちの方がいらっしゃったら、下記のFacebookページにご意見をお寄せください。
INHOUSE.jpg
INHOUSE Facebook ページ
http://www.facebook.com/pages/INHOUSE/255545127832314
 明日が楽しみです。
追伸.
 ちょっと前のことになりますが、企業人材育成のウチとソトの協働については、リクルートWorks誌が示唆に富む特集を組んでおられましたね。ひそかに活動理論なども登場して、ワクワクしました。
外部パートナーとの協働
http://www.works-i.com/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=181&item_no=1&page_id=17&block_id=302
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■2011/12/07 Twitter

  • 15:39  「職場学習の探求」(生産性出版)・・・各章の分析・編集は、何とかメドが見えた。来週、全体を通しての最終編集に入れそう。


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■2011/12/06 Twitter

  • 21:58  専門的な教育・文献・団体を備えた、独立の専門職としての科学が確立したのは、この3世紀から4世紀のことである。/ 近代初頭においては、多くの科学者はアマチュアであり、財産または科学に関係のない収入によって生活していた。http://t.co/yqD8Ep91
  • 21:42  素敵な言葉だね>RT @makimuramaho 『ちいさいおうち』の翻訳などをされた石井桃子さんの言葉。「子どもたちよ。子ども時代をしっかりとたのしんでください。大人になってから、老人になってから、あなたを支えてくれるのは子ども時代の『あなた』です」  [in reply to makimuramaho]
  • 21:40  先日、TAKUZOと科学未来館に遊びに行きました。と・・・いうわけだからじゃないのですが、門外漢ながら愉しく読めました。科学・科学者に関するコミュニケーション史、メディア史>ヴィッカリー著「歴史の中の科学コミュニケーション」http://t.co/bis9O3jm
  • 18:35  大学院・中原ゼミ。今日の英語文献、レビューが勉強になる。Google booksで読めるようです。Wayne Baker「A dual model of reciprocity in organizations」http://t.co/Htj0cxum #nakaharalab
  • 17:10  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab)。研究発表はD3の舘野君、脇本君。英語発表は木村君。Baker「組織における互恵性のモデル」#nakaharalab
  • 15:00  私大文系版・私大理系版だとどうなるんでしょうね? RT @y_hirose 学生サボるなよ!国立でこれだから私立は(*_*) RT 国立大学に4年通ったら約245万円。120単位だとして1単位分2万円、1授業2単位だったら1授業あたり4万。1講義90分であたり2700円。  [in reply to y_hirose]
  • 14:00  国立大学に4年通ったら約245万円。仮に120単位だとして1単位分20500円。つまり1授業2単位だったら、1授業あたり41000円。1授業15回の講義があるなら1講義あたり2700円。1日に仮に3授業くらいをとっていたら、1日あたり8100円くらい支払っている計算になりますね。
  • 13:05  以前僕も藤田さんに「お名紋」をつくっていただきました(感謝)。僕のお名紋はこちらです http://t.co/RGkLJlNz > ロールモデルを探せ!藤田朝美さん: http://t.co/nhIOs7ny
  • 12:53  国際大学間アライアンス>修士2年のうち最初1年を欧州の大学、2年目の前半を阪大で学ぶ:阪大、留学で2つの修士号 欧州3大学と共通課程(yomiuri) : http://t.co/7hp3c5TB
  • 12:41  「REMIX2011@neomuseum」のFacebookページに、参加予定者の方々から続々と書き込みが(感謝!)。イベントとFacebookの連動は、今回はじめての挑戦だけど、結構面白いかも。 http://t.co/CDXdrlmb #neomuseum
  • 11:02  3/19 テアトロフォーラム「人材育成の未来をACTする:職場学習の探求出版記念」(中原研×生産性本部)の参加申し込みは12/19スタート予定です(110名抽選)。もしご都合あうようでしたら、ぜひお越しください!#teatrojp2012
  • 11:01  3/19 テアトロフォーラム「人材育成の未来をACTする:職場学習の探求出版記念」(中原研×生産性本部)を内田洋行ユビキタス協創広場 CANVASで開催決定。即興劇・研究発表・カフェなどを統合した新たなスペクタコー。スケジュール帳にメモをお願いします!#teatrojp2012
  • 07:33  某経営系学会・査読終了。8時から会議。あと27分か。コーヒーでも飲むか。
  • 07:00  朝、まだ薄暗い中、研究室に来たら、大学院生の @mitsuru_3261がいてびっくり。5時から原稿を書いているのだとか。精が出ますな。良いことあるよ、きっと。
  • 04:31  山田先生、ご無沙汰です。愛媛「ラーニングBar」のお取り組み、ぜひ愉しんでください!RT @tsuyomickey 紹介ありがとうございます。中原さんらの取組にインスパイアされています。RT 「いよココロザシ大学」で「ラーニングBar」http://t.co/JJJEG4dG  [in reply to tsuyomickey]


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■2011/12/05 Twitter

  • 17:26  いよココロザシ大学の他にも、公務員・民間企業の方々などで、ラーニングバーをヒントに、様々な場作りにチャレンジなさっている方々がおり、メール等をただきます(感謝!)>どうか素敵な出会いをと学びを!「知がめぐり人がつながる場のデザイン」 http://t.co/l9dRcfKY
  • 17:22  愛媛「いよココロザシ大学」で「ラーニングBar」が開催されるようです。「良質大人時間」というキャッチコピーいいですね。学びの技術はオープンソースです。その様子をさらに公開していただけると、またさらに輪が広がるかも。Have fun! http://t.co/JJJEG4dG
  • 12:10  某書の編集作業。各章を精読し、著者の方々に最終修正要求をお返しする。8章分終わった、残り3章を今日中に。最後の一山、〆切すれすれ、年末綱渡り。
  • 09:09  保育園送り迎え。ママチャリ、爆走。風きって、寒い。しばれるねー。さ、仕事しよ。頑張る。
  • 09:03  小林さん、愉しく読むことができました。学環教育部でご教授なさっていると水越先生から伺いました。今後接点があることを愉しみにしています。@kobahen 著者です。中原先生ありがとうございます!RT 「メディア化する企業はなぜ強いのか?」 http://t.co/dX8ZrczY
  • 09:00  現代大学生の学びとキャリアをデータと実践で理解する>『大学生研究フォーラム2011』講演録公開 『IKUEI NEWS』vol.56 (PDF) : http://t.co/aO7YNz7s


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