2009.6.9 09:48/ Jun
野口裕二(編)「ナラティブアプローチ」を読んだ。看護学、医学、心理学、社会学、経営学等におけるナラティブアプローチの、最近の展開について、よく理解することができた。
企業人材育成の領域でいうと、本章の一章として、加藤雅則さんが、「組織経営におけるナラティヴ・アプローチ」という論文をお書きになっている。
「組織の中で語りが変化するときに、場面が転換する。語りが一人称になり、自分ごとので語りが始まると、周りに共感が生まれ、個人の孤立感が和らぐ。一人称の語りが生まれる場、いわば、”私が私について語る場”では、組織が活性化するという現象がある」
(同書より引用)
加藤さんもおっしゃるように、経営学では、ナラティブのことを「ストーリーテリング」と呼んできた経緯がある。
このあたりについては、「ダイアローグ 対話する組織」でも書いたように、従来のストーリーテリング研究は、「いかにトップがストーリーの形式で、ビジョンや戦略を伝えるか」という導管モデルに基づいてきた傾向がある。
その意義は認めるものの、ややストーリーテリングやストーリーのもつ豊穣な世界を狭めているような気もする。これを相対化する意味でも、本書の論考は非常に興味深いな、と思った。
ちなみに、マルヒトークをすると「ダイアローグ 対話する組織」は、もともと「ストーリーテリングする組織」というタイトルを想定して執筆されていた。
当初、本の中では、従来のストーリーテリングを「モノローグストーリーテリング」、人文社会科学のナラティブの系譜に位置付くと思われるストーリーテリングを「ダイアローグストーリーテリング」と整理していた。でも、舌をかみそうなので、ダイアローグという言葉を使った。ナラティブという言葉を使わなかったのは、また他に理由があるけれど、それは、また他のところで。
そして人生は続く。
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