NAKAHARA-LAB.net

2005.10.25 21:29/ Jun

読書

 海外出張中は、本当に本を読む。ここぞとばかりに本を買い込み、退屈な機内で、はたまた、枕が変わって眠れないホテルの長い夜に読むことができる。
 前回のロシアは10冊、今回のフロリダ出張では8冊の新書、専門書をもっていき、すべて読破した。
 今回の出張中に読んでオモシロかった本。
黒田玲子(2002) 科学を育む. 中公新書, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121016688/nakaharalabne-22
 黒田氏は東京大学に勤務する著名な化学者で、総合科学技術会議のメンバーでもある。
 「優秀な科学者を育てること」「科学に理解のある市民を育てること」は、制度、政策といった問題であることがよくわかる。科学を振興するには、場当たり的に対応してはいけない。戦略的に、科学を育む「環境」をつくりだしていくことが重要なのだろう。
ミドリ・モール(2001) ハリウッドビジネス. 文芸春秋, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166602101/nakaharalabne-22
 著者は、ハリウッドで知財の案件を扱う弁護士。本書では、ハリウッドで起こった著作権、知的所有権関係の事件を簡単に紹介している。
 映画産業とは、権利ビジネスの王道。映画は映画だけで収益をあげているわけではない。
 映画に付随するビデオ、DVD、ケーブルテレビ放映料、キャラクターグッズの売り上げ、書籍・・・ひとつの映画には、様々な2次利用が付随している。複雑に絡み合う権利を整理し、それを掌握したものが莫大なお金を手にする。
 お金の臭いのする場所には、争いがある。これは世の中の摂理である
「行き着くところは裁判所」という言葉にあらわれているように、ハリウッドでは、権利に関する裁判が毎日毎時間のように行われている。裁判所での悲喜こもごもの物語、それが本書のテーマである。
 —
 仕事柄、僕も、最近、権利に関しては相当考えることが多い。4月、東大に異動した頃は本当にこういう話しが苦手だったんだけど、最近は、だんだんとわかるようになってきた。
 僕がいつも関係しているのは、教育の世界のことであり、映画の世界のようにドロドロ・生臭い世界ではないけれど、それでも、基本は変わらない。
 コンテンツに関与する人には、おすすめの1冊かもしれないなと思う。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.7.9 08:06/ Jun

「ファスト化」する組織開発!? :組織開発は「カオナシ」になってはいけない!?

転勤で単身赴任するのは「パニッシュメント(罰)」か、何かか?

2024.7.3 08:04/ Jun

転勤で単身赴任するのは「パニッシュメント(罰)」か、何かか?

2024.7.1 08:16/ Jun

先行研究を調べるとは「マトリョーシカを開けつづけること」である!?

2024.6.28 08:25/ Jun

あなたのチームや職場はすでに「ピークアウト」して「劣化」の方向に向かっていませんか?

人材開発の仕事ってさ、〆切いつなの?  期限はないの? : 事業部から人材開発部署に異動したときに必要な「学び直し」のこと!?

2024.6.27 08:28/ Jun

人材開発の仕事ってさ、〆切いつなの? 期限はないの? : 事業部から人材開発部署に異動したときに必要な「学び直し」のこと!?