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2008.7.12 00:15/ Jun

高業績プロジェクトマネジャーの育成を考える : Learning bar@Todai

 本日のLearning barは、常磐大学の伊東昌子先生、株式会社 日立製作所 デザイン本部の山寺仁さん、グローバルナレッジネットワーク株式会社の戸部伸彦さんを、講師にお招きし、
「高業績を出せるプロジェクトマネジャーは、どのような行動・思考特性をもっているか、さらにはどのように育成すればいいのか?」
 ということについて、皆さんで議論を深めました。
 まずは、会の冒頭、僕の方から「趣旨説明」をさせていただきます。
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 いつものように、Learning barの説明です。Learning barは、常に3割程度の方が「はじめてのご参加」になります。よって、毎回、会の趣旨についてご説明させていただいています。
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 Learning barは、
 1.聞く
 2.聞く
 3.聞く
 4.帰る
 という場ではなく、
 1.聞く
 2.考える
 3.対話する
 4.気づく
 ような場であるということをご説明いたしました。つまり、参加者の皆さんにとって「学びの場」であることを願っている、ということです。
 今回の参加者は、140名の満員御礼。
 民間教育企業の方、企業人材開発担当者、経営者の方、お医者さま、看護婦さん、小学校や中学校の先生方、大学の先生方、幼稚園の先生方、など様々な方が集まっておられます。
 残念ながら抽選にもれた方も多数おられました。こちら、心よりお詫びいたします。ともかく、教室の座席は、すべて参加者で埋まりました。大変ありがたいことですね。
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 Learning barですので、バーもあります。バーにはたくさんの人が押し寄せておりました。
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 —
 早速、山寺さん、伊東先生のご発表がはじまります。
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 山寺さんの方からは、なぜ、日立が「高業績プロジェクトマネジャーの行動特性に関する共同研究をすすめることになったのか」、その背景についてお話をいただきました。
 伊東先生は、認知科学の理論と方法論を用いて「高い成果をだせるプロジェクトマネジャー」の思考や行動には下記のような特徴があることを明らかになさいました。
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 高業績をだすプロジェクトマネジャーとは、
・プロジェクトに関する「構想」や「たたき台」をまずは自分からたてる人であり、
・様々な専門性や経験をもった人をプロジェクトに巻き込み、あらかじめつくった「たたき台」の批判を行わせつつ、協力してプロジェクトにあたらせる人であり、
・他者からの批判や議論の発散が怖くない。議論を発散させた上で、合意をつくり、みんなでプロジェクトを「かたちづくること」を許容する人
 ということになるでしょうか。
 伊東先生は、こうした事実を、実験計画法に基づくリゴラスな方法論と、明確なデータをもとに明らかになさいました。
 プロジェクトマネジメントの巧拙とは、決して、個人の資質や知識や技能「だけ」に依存するのではなく、「分かちもたれた知性」をいかに集合的に組み合わせることができるか、であるという知見は、非常に興味深いものです。
 比喩的に言いますと、
 賢さは、「僕のアタマの中」にない
 賢さは、「僕とみんなのネットワークとして」達成される
 ということでしょうか。
 伊東先生のご講義のあと、戸部さんからは、プロジェクトマネジャーの育成の最新事例についてショート講演をいただきました。研修で学んだことをいかにトライアウトする場をつくるか、また、非公式な組織コミュニケーションの重要性について言及がありました。
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 ちなみに、Learning barは東京大学大学院の院生有志によって運営されています(ありがとう!)。
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 そして、この場は彼らにとっての「学びの場」でもあるようです。
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 —
 ここからはLearning bar恒例の「お隣ディスカッション」です。
 ディスカッションタイムがはじまる前から、いろいろなところで、既に議論がはじまっていました。
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 皆さん、本当に熱心に議論に参加していただいています。
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 この後、携帯電話を使った質問タイム、中原のラップアップセッションに突入します。
 ラップアップでは、
 プロジェクトマネジャーの育成に関しては、「単一の教育手法」で実現できるものというより、複数のレベルの教育手法、学習手法を組み合わせてアプローチするべきではないか、という趣旨のお話をしました。
 つまり、一人前になる前に必要な「個人開発」がまずは必要でしょう。これに当たるのは、いわゆる「研修」。たとえばPIMBOKなどがこれにあたるかもしれません。
 次に必要なのは、職場に出たあとの「経験学習」。
 これについては、「ストレッチ経験」「ひとつぬきんでるマネジャーとの徒弟的な協働体験」がキーになるような気がしました。
 さらに、職場のコミュニケーションの円滑化や、Know who can do whatな(誰が何をできるかに関する知)を持つことなども重要でしょう。このあたりは、「組織開発」などによって可能になることなのかもしれません。
 このように、プロジェクトマネジャーの養成は「個人開発」「経験学習」「組織学習」のMixed Approachによって達成されるべきものではないか、というのが僕の仮説であり、雑感です。
 もちろん、しかし、これに関しては、まだまだ実証研究が足りておらず、データに基づいているわけではありません。あくまで僕の雑感です。今後の研究が待たれるところですね。
 —
 最後になりますが、伊東先生、山寺さん、戸部さん、そしていつも本会の実施を陰ながらサポートしてくれている、東京大学大学院の院生諸氏、さらには議論に参加してくださった皆様に感謝いたします。
 本当にお疲れ様でした。
 そして、ありがとうございました。
 次回のLearning barは、8月22日(金)!
 野村総合研究所の永井恒男さんをお招きして、「社長発!?対話を通して組織が変わる?」をお送りいたします。
 募集要項は、一週間以内に、下記メルマガで配信される予定です。まだメルマガに登録いただいていない方は、これを機会にぜひどうぞ!
Learning barメルマガ
http://www.nakahara-lab.net/learningbar.html
 また来月お逢いしましょう!

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