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2008.7.3 17:32/ Jun

「出会いの連鎖」の中で考える

 数年前、米国に留学していた頃の話です。
 留学中は、いろいろなことを勉強させてもらいましたが、特に印象的だったことのひとつに、「人に逢うこと / 紹介することの敷居の低さ」と「異質なものをまずは褒める度量」というのがあります。こうしたものが、何か「新しいアイデア」を生み出そうとするときに、とても重要なのだ、と痛感しました。
 たとえばこんな感じです。
 今、仮に、あなたが、ある人と自分の研究についてディスカッションをしているとします。ディスカッションも終わりにさしかかる頃、あなたはこんな「台詞」を相手から耳にします。
「なるほど、君の考えていることはわかった。で、その問題だったら、きっと、この人に相談してみるときっと何かいいアドバイスをくれるような気がする。君をCCにして、その人に電子メールをうってあげよう。
ぜひ逢ってみるといいよ。最初に自分のやりたいことをきちんと説明して。そうしたら、絶対にいいアドバイスをくれるから」
 で、その人に逢う。名前とメールアドレスしかしらない、全く顔も知らない相手です。緊張した面持ちで出会い、喫茶店にいって話し出す。そうすると、まずは、その人は、僕のやりたいことを、まずは「受け入れ」、「褒めて」くれるのです。
「君のやりたいことはわかった。君のやりたいことは、変わっているが、オモシロイと思う。それがうまくいけば、○○の問題が解決するだろう」
 そして、その上で、今の僕には何が足りないのか、どういう情報を付け足せばいいのかをサジェストしてくれたり、建設的な批判をしてくれる人が多かったように思うのです。
 そして、ディスカッションも終わりにさしかかると、また、人を紹介されるのです。
 こんな風に、紹介が紹介をよんで、人がどんどんとつながっていきました。紹介された人からさらに紹介を受け、またさらに紹介を受ける。次々と人々に逢っていく。
 そうこうしているうちに、だんだんと、自分の問題が「クリア」になっていく。だんだんと自分のやりたいことと、やれることがわかってくる。アイデアがどんどん洗練されていく。そんな不思議な感覚がありました。
 当時の僕は、「大人の学び」という研究領域にどのように切り込んでいくか、煩悶していた時期でもありました。
 米国では、いったいどのようなリサーチがなされ、どんな関連したプロジェクトがあるのか。
 今から考えてみると、僕は、このような「出会いの連鎖」から、学ぶことが多かったように思います。そして、この領域を自分の研究領域にするにあたり、様々なアイデアを、このような「出会い」からもらいました。
「人に出会うこと、紹介することに対する敷居が低いこと」、そして、「異質なものをまずは受け入れたり、褒めたりできること」、これがアメリカの文化なのか、どうかは知りません。データもないので、一般的なことかどうかはわかりません。
 でも、僕が、それにずいぶん助けられたことは事実なのです。
 たとえ自分の問いに真正面から答えてくれなくても、ちょっとしたヒントをくれる人に逢うことができる。次から次へと逢うべき人を紹介してくれる。
 そして、まだ暖まっていないアイデアを、のっけから「ボコボコ」にするのではなく、まずは受け入れ、褒めてくれる。
 こうした「出会いの連鎖」に、僕は救われました。おかげで、新しいことにチャレンジすることができました。
 もちろん、すべての問題が「出会い」で解決するとは思いません。また、厳しく批判されることはとても重要なことです。「出会いの連鎖」がすべてを解決してくれるわけではありません。
 でも、全く新しいことにチャレンジしようとするとき – 特にまだアイデアが固まっておらず、どこからアプローチしてよいかわからないとき – そんなときは「人に逢うことの敷居の低さ」と「まずはアイデアを受け入れ、褒めること」が、とても重要なのではないかと思ってしまいます。
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 ともかく、それから4年。
 今度は僕自身が、自分が受けた恩を返す番なのかもしれないな、と、最近、よく思ったりしています。

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