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2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!これまで、この本を手に取ってくださったみなさま、応援をいただいたみなさま、本当にありがとうございました!
  

  

『人材開発・組織開発コンサルティング』(AMAZON)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4478117799/nakaharalabne-22
  
『人材開発・組織開発コンサルティング:人と組織の「課題解決」入門』は、
  
(1) 自分自身のクライアント(顧客)とともに
   
(2) クライアント組織の状況・経営課題をしっかり調べ、
   
(3) 成果につながる人材開発・組織開発を行い
   
(4) しっかりとその効果を評価していくといった一連のプロセスすべて
    
 を体系的かつ網羅的に記述した「日本初の教科書」をめざして書かれました。このたびの日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞・受賞に際し、応援してくださったみなさまに、心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。わたしにとっては「職場学習論」「組織開発の探究」「サーベイフィードバック入門」につづく4度目の受賞ということになります。いつも応援いただいて、心より感謝をいたします。
    
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 書名にある「コンサルティング」という名称から、読者の皆さんの中には「本書は、組織外部のプロフェッショナル・コンサルタントのために書かれた専門書なのぢゃないか!」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、それは「違います」。この本は「外部のプロコンサルタントのため」だけに書かれたのではありません。
     
 むしろ、わたしは「人材開発・組織開発のコンサルティング」を「学ぶ意欲に満ちたひとびと誰もが実践可能なもの」にしたいのです。さしずめ、ここでは「コンサルティング」とは「人と組織のお困り事を抱えている人々の課題解決を支援することだ」とお考えください。
   
 人材開発・組織開発のコンサルティングを「限られた一部の人のもの」にするのではなく、「誰もが学び、実践できるもの」にするための「民主化」を進める。
   
 つまり
    
「コンサルティングの民主化を果たすこと」
     
 それこそが、わたしが本書に込めた密かな思いです。
         
 本書はどなたでもお読みいただける内容になっています。企業の経営者、人事担当者、人材開発担当者、組織開発担当者、また、プロフェッショナル・コンサルタントの方、人事関連の内容を学ぶ大学院生や大学生の方にもお読みいただけます。また、気の置けない人々と、あるいは人事部内部などで勉強会・読書会などをなさるのもよいかもしれません。
    
 本文はなるべく平易に書かれています。
 図版も満載です。
 一方、玄人さんにもお読みいただけるように、脚注を250個をつけ、詳細な解説は、そこで行っています。      
    
 ぜひご笑覧くださいませ!
         
  ▼
        
 本書の構成は、次のとおりです。
   
 第1部では、「人材開発・組織開発が何たるか」を論じていく前に、まず「経営」のことを論じます。
 経営にとは、そもそも何でしょうか。また経営において人材開発・組織開発は、いったん、全体どのような意味を持つのでしょうか。
    
 後述しますが、わたしたちがベースにする、最も基本的な考え方は、「人材開発も、組織開発も、経営や現場にインパクトをもたらすためにこそ存在する」ということです。1章では、経営とは何か、とは何かからひもときながら、この問題を考えます。  
     

        
  ▼
      
 そのうえで、第2部では、そもそも人材開発とは何か(3章)、そもそも組織開発とは何か(4章)、を論じます。
   
 まず、人材開発とは「組織の戦略の実現や目標達成のために、組織メンバーの必要となるような知識、スキル、コンピテンシー、信念を提供し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」です。要するに、
   
 経営戦略を実現するために、ひとに変わってもらうこと
   
 が人材開発です。
        
 一方、組織開発とは
     
 「組織をWork(動く)ようにするためにおこなう、意図的な働きかけ」
  
 だとお考えください。組織は、ほおっておけば、必ず目詰まりをおこし、コミュニケーションが沈滞し、成熟し尽くし、活性度が失われていきます。それを救うのが「組織開発」です。   
   
 今現在の組織の状況を「見える化」しつつ、組織メンバーが対話を行い、組織が何をしていくかを、みなで「決めること」ができたとき、組織はふたたび「work」していきます。組織開発は、チームを率いるための基礎技術なのです。本来は、現場の管理職や、リーダーが、それにまつわる知識・スキルを持っていることが重要になります。
    

           
  ▼
      
 第3部では、いよいよ、組織内外のコンサルタント(実践者)が人材開発・組織開発の課題解決を行っていくプロセスを見ていきます。ここが本書のメインディッシュです。くどいようですが、ここでコンサルタントとは「組織外部のプロのコンサルタント」というものだけをさすのではありません。「人と組織」の観点から、組織に「働きかけ」を行い、組織の課題解決を行うひとびとを「コンサルタント」と呼んでいます。「支援者」といってもいいです。
  
 本書では、人材開発・組織開発の課題解決プロセスを、
      
 
 (1)出会う
    
 (2)合意をつくる
  
 (3)データを集める
   
 (4)フィードバックする
  
 (5)実践する
  
 (6)評価する
  
 (7)別れる

         
 の7ステップとして定式化し、それぞれのプロセスにおけるひとと組織の「科学知」と「臨床知」を余すところなく記述します。 
       
  
     
 ここに本書の独自性があります。
   
 本書は、いわゆる研究によって明らかになっている「科学知(理論・原理・原則)」だけを記述しているのではありません。それだけでは「片手落ち」だからです。
 人材開発・組織開発の実践は「科学知」だけに立脚するのではありません。そこで、さらに必要になってくるものは「臨床知」です。

 ここで「臨床知」とは、ひとびとが「自らの身体」を現場に向かわせ、現場の人々と出会い、話し合い、かかわり、ともに考えるときに発揮される「知の総称」です。本書では、この「人材開発・組織開発の臨床知」を余すところなく論じています。
         
 本書の最大の特徴は
       
 科学知とともに臨床知を駆使した「両利きのコンサルティング」を論じていること
   
 です。
   
 その「両利き性」が「野生に生きるビジネスパーソン」がもっとも蓄積しなければならない知であると、わたしは思います。
         

     
  ▼ 
            
 近年は、データに基づきながら「人材開発・組織開発」の企画立案を行うことが多くなっていると思います。本書では、定性的な現場のヒアリング手法に加え、定量的な調査の手法についても論じています。先行研究のレビューの仕方、それらにもとづいた仮説の作り方も論じています。
        

         
 また、本書では、データの分析はもちろんのこと、その分析結果を「どのように現場のひとびとにお返しすればいいのか」についても、徹底的にこだわり論じています。
      
 なぜなら、
  
 現場を変革するのは「厳密な統計分析」ではありません。
      
 現場を変革するのは「分析結果を、現場のひとびとが、納得して受けとり、対話が生まれたとき」のみです。
     
 よって、データのフィードバックの仕方にも多くの紙幅を割きました。
        

  
 また、クライアントのあいだに、どのような「対話」を促すのかを論じるかについても、実際のビジネス事例をもとに解説しています。これらのテキストを読むだけでも、「どのようにデータをフィードバックし、対話を促すか」についての実践知を学ぶことができるでしょう 
  

    
  ▼
  
実践を行ったあとは「評価」です。人材開発・組織開発については、その施策は企画できても評価については、まだ苦手意識を持つ方も少なくありません。本書では、それについてもまなぶことができます。
   

   
  ▼
   
 もうそろそろやめますが(笑)、本書では、近年多くの企業で配置が行われている「事業部に貢献する人事」、いわゆるHRBP(Human Resource Business Partner)についても、本邦のデータを用いて、はじめて、その行動実態が明らかにしています。これまでブラックボックスにされてきた事業部人事の行動実態についても学ぶことができるはずです。自社のHRBPと比較して、何が違い、何が同じなのか。HRBPの方々の勉強会のときの、基礎データとしてもご活用いただけるかもしれません。
    

     
 なお、2021年に実施されたHRBP調査に関しましては、多くの企業のHRBPのみなさま、また、ダイヤモンド社の皆様に、心より御礼を申し上げます。これらのデータに関しては、すでにワークショップのかたちでフィードバックをさせていただきましたが、ようやく書籍として文章に残すことができました。本当にありがとうございます。
     

      
 本書をきっかけに「力強いHRBP」が多数生まれることを、筆者としては願っております。
     
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 最後に謝辞を述べさせてください。
    
 過去20年、わたしは、これまで30冊を超える本の執筆に関わってきましたが、はじめて、わたしは「この本は、世に出ないのではないか」と思ったほどです。途中で、心が挫けそうになりました。
 
 執筆の様々な過程で、己の遅筆と浅薄を呪いました。しかし、それを支えてくれたのは、この本の制作・編集に携わってくださった方々のご尽力によるところが大きいと思います。このたびの受賞に関しても、これらの方々に心より御礼を申し上げます。
         
 また本書は、立教大学大学院での大学院授業「人材開発・組織開発II」をもとにしています。立教大学大学院のアラムナイのみなさま、また現在大学院に所属している大学院生の皆様、また教職員の皆様、事務局の皆様に心より感謝をいたします。ようやく、あのカリキュラムを「文字」にすることができました。本当にありがとうございました!
           
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 本書を書籍とする、すなわち、これまで行ってきた20年にわたる実践・科学の内容をまとめるにあたり、まずお声がけをさせていただいたのは、ダイヤモンド社の皆さまでした。
 ダイヤモンド社の皆さまは、20年弱前に、わたしが「茶髪ロンゲで、黒の革パンツをはいた、あんちゃん(20年ほど前、あんちゃん時代の中原、笑)」だったときから目をかけてくださり、様々な執筆の機会をいただきました。
      
 編集者の広瀬一輝さん、小川敦行さん、永田正樹さんに心より感謝をいたします。また「あんちゃん(もう一個、見つけた、笑:あんちゃん時代2)」の持ち込んだ企画「企業内人材育成入門」を世に出していただいた同社・社長の石田哲哉さん(編集者)に心より感謝いたします。また、本書の構成は、やはり20年弱、ともに奮闘をさせていただいた井上佐保子さんにお願いさせていただきました。本当にありがとうございました。

 下記は、編集者の広瀬一輝さんと撮影した写真です(田中聡先生にとっていただきました!感謝!)。広瀬君、ありがとう! 
 あたりまえですが、著者だけでは、本は完成しません。本が人々の手に届くためには、編集者の方がおられて、営業の方がおられ、書店の販売員さんの方々がおられます。それらの方々を代表して、広瀬さんと写真を撮らせていただきました。初稿からはじまり、念校に至るまで、最後の最後まで、35万字、脚注250以上、イラスト100点以上、と格闘した広瀬さんに、心より感謝いたします。ありがとう!、広瀬君!また次の旅を一緒にできるといいな。
       

      
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 かつて、森鴎外は、自らの労働を論じるとき、「仕事(しごと:誰かに仕えること)」という文字に代えて、「為事(しごと:誰かのために為すこと)」という文字を使っていたそうです。「仕事」ではなく「為事」。わたしも、この森鴎外の思いに深く共感します。わたしにとって、「自分自身の為事」とは、「人材開発・組織開発の知」を民主化し、それを実践したいと願う、おひとりおひとりに「お届けすること」です。今回の受賞がきっかけになり、さらに多くの方々に本書をお読みいただけるのだとしたら、望外の幸せです。
         
 わたしは、ただ単に「文章を書く」わけにはいかないのです。
 わたしにとって「書くこと」とは「届けること」だからです。
         
 この本が、現場に立つ実践者の皆さんに「届くこと」を願います。
 おそらく、このバトンを受け取った実践者の方々も、また、それぞれの現場で、わたしの知らない誰かのために「為事」を為してくれるでしょう。その「為事」が、人材課題・組織課題に日々心を悩ませている多くの人々の生活を豊かにすることを願っています。
         
 現場を変革する、すべての人々に
 わたしの「泥臭い学問」を捧げます
             
 どうぞご高欄くださいませ!
 学びに満ちた人生を!
       
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 最期になりますが、今回の受賞をきっかけに、わたしには、またひとつ「夢」ができました。
 I have a dream!(わたしには夢がある)

 
 わたしの夢は、立教大学経営学部、立教大学大学院経営学研究科で、人材開発・組織開発を学んだ方々のなかから、次の時代の「HRアワード」を入賞・受賞なさる方がでてくることです。
  
 学部で、わたしのゼミに所属していた皆さん。大学院修士課程(LDCコース)で、わたしどものコースで御活躍いただいていた皆さん。そして大学院博士課程で、ともに共同研究をわたしと成し遂げた皆さん。わたしは、みなさんに「バトンタッチ」をさせていただきたいです。
 
  
 つぎは、皆さんがこのアワードを取得なさってください。
   
 「この夢は、かならず叶う」と信じています。
    
 夢なんて、たかが夢です。
 しかし
 夢しか、現実にはなりません。
           
 この夢は現実になります。
 そして人生はつづく


  

『人材開発・組織開発コンサルティング』(AMAZON)
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