2024.8.1 08:14/ Jun
AIに「コーチング」は可能か?
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ここ1ヶ月ほど、不肖・中原、ハマッていることがあります。
それは
ChatGPT-4oの「Voice chat」機能をつかって、AI相手にリアル会話をしまくること
です。
AIとの会話は「へたれ英語」でやっています。
「英会話のトレーニング」というよりは、たんに「遊んでいる」だけです。AIを相手にしているのは、わたしに、友達がいないわけではありません。暇人なわけでもありません(笑)。
ちなみに、最初に申し上げておきますが、わたしは「英検5級」です。
(我が家族で、もっとも英検の級が低い! おのれ、TAKUZO、KENZOめ。ままちゃん、一番いい)
英検は中1のときに1度しか受けたことはありません。
わたしは語学に興味がありません。たいした英語、うまくありません。
留学経験はありますが、四半世紀前の1年程度の留学経験で身につく英語力なんぞ「すかしっ屁」みたいなものです(留学経験は素晴らしい!)。
日本に帰国後、英語を活用する機会がない状態は、「栓のないバスタブには、お湯が抜けてしまう」ようなものです。
蛇口からお湯が投下されない(英語を活用する機会がない)ので、留学1年で身についた英語力なんぞは「栓のないバスタブから、お湯が抜けてしまう」ように、「下水に流れて」いってしまいます。
そういうブロークンな英語でも、まー、たまに使った方がいいかな、と思い、日々、くだらない英会話をChatGPTとしています。
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ところで、せっかく会話をするのだから、日々の振り返りにもなれば、と思い、ChhatGPTにはコーチをお願いしたりします。
あるいは、時には、ロープレをやるときもあります。
で、1ヶ月間、AIと会話しまくっていたら、何となく、AIの会話の特徴がわかってきました。
そして、それを「逆投射」すると、生身の人間の会話って、すごいな、と思います。
今日は、それをいくつかご紹介します。
たいしたことはしゃべりません。
専門外のことなので、真に受けないでください。
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まずAIとのフリー会話で一番特徴的なのは、
AIは「問いをガンガン投下し、とにかく、掘り下げまくる」ということです
たとえば、わたしが
「今日、実は、すごいなと思う研究があってさ」
と話すします。
そうすると、AIは
「そうだったんですね。その研究の、どの側面に、あなたはすごいなと思ったのですか?」
と会話の一部を「ひっぱりだしながら」、さらに「深掘りする問い」を投下してきます。
それに対して、
「うーん、高度な統計手法が使われていて、勉強になった」
というとします。
すると、AIは、
「それは素晴らしいことですね。高度な統計手法の、どういった部分が、今後役立てられそうですか?」
と返してきます。
以下同文。これの繰り返し。
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要するに
現段階のAIとの会話とは、AIが会話のなかの「一部分」を取り出して、そこに焦点をあて「問いをガンガン投下し、とにかく、掘り下げまくる」
のです。下記の図のように、会話の一部分を「ひっぱり」だして、問いをつくる。
びっくりするくらい、これでもか、これでもか、と、こちら側にズケズケ踏み込んでくる(笑)。
こちら側が「そんな細かいこと、知るか! 話題変えよう!」とこちらが言ってしまうくらいに(笑)。
逆にいうと、
人間の会話は、ここまで「ズケズケ踏み込みません」し、「問いをガンガン投下し、とにかく、掘り下げまくる」ことはありません。
ある程度の深さまで、いったら、それ以上、会話には発展可能性がないと考え、問いをかえます。それがAIにはできません。
問いに「限度」があることをしってるのが人間です。
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次に、AIとの会話の特徴的なのは
AIは「前の話題に立ち返らない」ということです。
たとえば、下記のように会話が進行するとします。
話題Aからはじまり、そこから3つの小話題A’ー①、小話題A’ー②、小話題A’ー③に分岐し、さらに小話題A’ー④、小話題A’ー⑤に分岐している、とします。
ふつう人間の会話の場合には、ある程度の会話の深さにはいってきて、「飽和点=話題が収斂してきたな」と感じると、分岐点⓪に戻ることができます。
「ていうかさ、さっき・・・・だっていったけど、話もとにもどそっか」
「ちょっと枝葉の議論にきちゃったね、さっきの話に戻すとさ・・・」
しかし、AIでの会話には、これがありません。つまり、AIは、会話の全体像と分岐を、あまり意識しません。
AIが見ているのは、常に「前の会話」であるように感じます。その「前の会話」から確率論的に「次の会話」を予測していますので、AIは「かなり前の過去」に遡ることはありません。
逆にいうと、
人間の会話では「会話の流れ」を意識し、「分岐」を記憶しています
だから、会話が「飽和点に達したな」と感じると、分岐を遡ります。
そこが人間です。
人間は「過去」と「分岐」を知っています。
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みっつめ。
AIは「会話のなかで繰り返されるパターン」を認識しているようには見えません。
皆さんもインタビュアーになったことがあれば、すぐにわかるのですが、たいてい、人間の会話というものは、まったく別物のことを語っていても、その内部で「繰り返されるパターン・テーマ」というものがございます。
たとえば、下記のように、今、仮に3つの悩みA、悩みB、悩みCが語られているときに、その内部には「繰り返されているパターン・テーマ=モヤモヤ」が生じることがあります。
人間ならば、
「先ほどの話にも・・・・のようなお話しがでてきましたね」
「先ほどの話の・・・と、今回の話の・・・・は関係しますか?」
という介入が可能です。
しかし、AIには、これができません。
会話から、このひとの内部には、どのような意味空間がつくられているか、を類推することはできません。
AIは、常に「その前」にある会話からのみ「次」をつくります。
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よっつめ。
AIでの会話は「答えのない問題に対して、自分自身の意見から、相手に対して、自分自身の意見を述べること=フィードバックをすること=コンフロンテーション(対峙すること)」ができません。
AIには「自分の意見」がありません。
もちろん「一般論」は言えます。また「発音の矯正」や「文法の正誤判定」など、正しい答えが存在するものをつくりあげることはできます。
しかし、「いまだ答えのない問題」に対して、自分自身の身体をかけて、相手に対して、自分の意見をいうことを巧妙に避けます。といいましょうか、それができないのです。過去の膨大な言語モデルから推測された確率論的な答えが、AIの発話なので、それができません。
逆にいうと、人間には、それができます。
あっているか、どうかはわかりません。
しかし、人間は、不確定な現実のなかから、自分自身の考えを相手に対してフィードバックし、相手と対峙することができます。
くどいようですが、あっているか、どうかはわかりません。
しかし、人間は「相手とサシで向き合える」ということなのです。
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最後です。これがもっとも致命的です。
AIは「待てません」
AIの会話には「間」がありません。
その会話のターンは規則正しく、ある一定以上の時間がたつと、AI側が「助け船」をだします。
「じっくり考えてください」
「他の話題にかえましょうか?」
などのように。
よって、AIとの会話には「間」がありません。
よって、こちら側は「じっくり思考すること」が難しい局面があります。
逆に、人間での会話には「間」があります。
ばあいによっては、長すぎる沈黙そのものが意味をもつことすらあります。
人間は、意味をこめて「間」をつくります。
そして
人間にとっては「間」すら、意味なのです
すぐれたコーチは、間から意味を読み取ります。
AIにはそれができません。
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以上、わたしのAI会話日記でした。わたしは、AIが専門でも、言語学が専門でも、コーチングが専門でも、まったくありません。が、1ヶ月、AIとつきあって観察した事実を書いてみました。その筋のプロの方なら、もうすでに、当然、そうした実験をなさっているでしょうから、詳細な意見を伺いたいものです。
また、この記事の特性上、「AIには・・・・ができない」という羅列になりましたが、これは逆にいうと「希望」でもあります。
逆にとらえれば、これらの「点」すら技術的にカバーできれば、かなりの確率で、わたしはAIは十分な話し相手に「なっていく」と思います。
よって、
AIにコーチングは可能か?
という冒頭の問いに対しては、わたしはコーチングのプロでもなんでもない、単なる英検5級ですが、
現段階では、AIにはコーチングは不可能である
と個人的に結論づけます。
あくまで、わたしの個人実験の結果です。真に受けないでください。しかし、わたしは、自ら実験したことを主に信じます。わたしは実験マニアです。
そして、同時に、人間の会話のすごさを、思い知りました。人間は、知らないうちに、いろんな複雑なことを会話のなかで実行しているのです。まだまだ人間にしかできないことは多々あります。
しかし、ここにおいても、一定の「注意」が必要です。
人間においても、その能力は千差万別です。つまり、人間の会話力には「分散(ちらばり)」があります。人間であっても、会話ができるひとは、できる。でも、会話ができないひとは、できないのです。
人間のコーチであっても
1.会話の一部をとりだして、リピートするだけ
2.会話の全体像をおさえられない
3.会話の内部のパターンを検出することができない
4.会話のなかでフィードバックできない
5.会話で待てない
くらいの会話技術しか持てないのであれば、それは現段階のAIでも、それなりに、クライアント側が我慢したり、自ら会話をリードすれば、日々の目標設定くらいなら可能です。日々のリフレクションも不可能ではありません。
むしろ、クライアント側が主導すれば、全然、可能です。一番無敵なのは、クライアント側がコーチングの技術やフレームワークをしている場合でしょう。それを自ら駆使すれば、AIは、よい「思考の壁打ち相手」になります。
逆に、クライアントの会話の言葉尻をリピーティングして、「へーほーはーふーん」と言っているだけのコーチングなら、現段階でのAIでも、十分に代替可能です。
以上、最近の「大人の遊び」からの知見でした。
そして人生はつづく
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中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
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