2024.7.3 08:04/ Jun
転勤で単身赴任するのは「パニッシュメント(罰)」か、何かか?
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今年の慶応丸の内シティキャンパスでの、わたしの講座「ラーニングイノベーション論」も、おかげさまで満員御礼。定員を超える34名でスタートさせていただいております。人材開発の基礎を約半年間で学ぶ、もう16年続いている講座です。
先だっては、カゴメ・常務執行役員CHOの有沢正人さんにご登壇いただき、カゴメにおける人事改革のお話を伺いました。有沢さんから、いつもながらにパワフルに、エネルギッシュに、レクチャーをいただきました。お忙しいところ、本当にありがとうございました。
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有沢さんのお話は、どのお話しもプラクティカルで洞察に富むのですが、個人的には、ひとつ興味深いお話がございました。
それは、有沢さんが、会食の席上、海外のビジネスパーソンたちと「日本の転勤制度」について話していたときのことです。
有沢さんが
「日本には転勤制度があって、共働きの家庭の場合には、父ちゃんだけが転勤する単身赴任というものがある。その場合には、妻子から離れて、遠くの地方にワンルームマンションを借りて、住むことが多いなぁ。食生活も乱れがちで、コンビニ弁当になっちゃうひともいるね・・・」
と話したところ、海外のビジネスパーソンたちは、一同に、有沢さんにこういったそうです。
「それは従業員に対するパニッシュメント(punishment:罰)か、なにかなのか? なぜ、家族と別々に暮らすことを、会社から強要されなければならない? 本人は同意しているのか?」
「本人の同意も何も、異動しろ、と言われれば、それは従わなければならない」
「それはパニッシュメントではなく、トォゥチャー(torture:拷問)だな」
ちなみに、カゴメさんでは、すでに、働き方や単身赴任、転勤にまつわる様々な施策を打たれており、これには該当しないことを申し添えておきます。その真逆をいった最先端の取り組みをなさっています。
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一般に、伝統的に、日本企業は「企業拘束性」が強いことで有名です。
企業拘束性とは
1.転勤(命令されれば、どこででも働く)
2.残業(命令されれば、何時間でも働く)
3.職務の不自由(命令されれば、どんな仕事でもする)
などの、企業が従業員の自由を拘束することです。
四半世紀前、ある人事役員の方が、
「会社で正社員として働くということはですね、1.どこでもいく(転勤)、2.いくらでも働く(残業)、3.何でもやる(職務の不自由・異動命令)の3点セットを飲み込むことなんですよ。どこでもいって、いくらでも働いて、何でもやるひとを正社員というんです。会社員なら、みな、わかってると思いますけどね。断れないですよ。ホッホッホッ!」
と香ばしいことをおっしゃっておりました。
これが、まさに「企業拘束性」です。もちろん企業拘束性を「ゼロ」にすることは、できません。それでは会社が回らなくなってしまう可能性が高いですので。しかし、この企業拘束性が、忌み嫌われるようになってきています。
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この企業拘束性の代表格であるのが「転勤」
それは会社に「住む場所を決められる」、場合によっては「家族と引き離されること」を意味します。
そして、転勤・・・とりわけ単身赴任は海外のビジネスパーソンからすれば「パニッシュメント(罰)」を通り越して「トォゥチャー(拷問)」にすら見えてしまう。しかしながら、この国では、今なお、突然会社に命令され「ワンルームマンション」で幕の内弁当をひとりさみしく食べているひとがいる、ということなのですね。
嗚呼。
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わたしは、これからの時代は、転勤制度などは「より実施が困難」になっていくと思います。共働きが増えておりますし、昔みたいに、パートナーもすぐに仕事を辞めることなんかできません。ワークライフバランスを重視するひとも増えています。リモート勤務も可能になっているので、わざわざ現地にいかなくても、仕事が回る業種もあるでしょう。
「転勤制度がより実施が困難」になる最大の理由は、「日本は、バカみたいなスピードで人口減少が進んでいくなかで、労働力を確保しなければならないこと」です。
転勤するなら、辞める(転職する)
というひとが増えていくと、わたしは思います。また、従来、転勤制度が機能していたのは、会社が「嫌なことに耐えたら、将来のキャリアは、丸抱えしてやるからな」と長期雇用を約束していたからです。従業員と会社のあいだに、そうした「心理的契約」があったために、転勤は乗り越えられました。しかし、最近の会社は40代以上にリストラのターゲットをしぼっています。長期雇用が約束されていないのに「パニッシュメント」に耐えるロジックが経ちません。
もちろん、それでは「会社が回らない」というご意見もよくわかります。痛いほどわかります。工場、どうするんだ? 誰かが行かなければならない。そういう声もよくよくわかります。しかし「会社が回らない」のなら、何とかして、それを「回す」落とし所を探さなければならないのではないでしょうか。
転勤の期間を減らす、というのもそうでしょう。もし奥さんも同じ会社でつとめているのならば、一緒に転勤というのもありえるかもしれません。育児中や介護中など事情がある場合に、転勤を一時期断ることのできる制度を入れている会社もあります。
転勤の意味づけをしっかりと行い、それに報いる報酬・キャリアパスを確約して我慢してもらう、というのも、そのひとつです。いろんなやり方があります。
いずれにせよ、今までのやり方を「前例踏襲」していくことは難しいだろうな、というのがわたしの見たてです。
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外国人から見ると「転勤」、とりわけ単身赴任は「パニッシュメント(罰)」を通り越して「トォゥチャー(拷問)」にすら見えるようです。しかし、日本人は、これまで黙って、それを「受け入れて」きました。
「おまえ、サラリーマンなんだから、わかってるよな。断れないからな」
の一言で。
あなたの会社の「転勤」は、これからどうなりますか?
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■アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のWebページはこちら!■
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「チームワーキング研修版」リリースされました!
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チームワーキング座談会
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すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!
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職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発)
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
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上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
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中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
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おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
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「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
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Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/k00HD0024/
OJT指導員向け・短時間&動画で学べる 部下育成スキルの動画もございます。中原が新人育成のポイントについて解説しています!
短時間&動画で学べる 部下育成スキル・解説動画
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これまで税務・法律の観点からしか語られなかった「企業合併(M&A)」の問題に対して、ひとと組織(人材開発・組織開発)の観点からアプローチし、シナジーを生み出す可能性を考えます。
M&Aという「巻き込まれ事故」に関わってしまった経営企画・人事・現場の管理者・リーダーの皆様にぜひお読み意いただきたい一冊です!
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「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
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「中小企業の人材開発」(中原淳・保田江美著、東京大学出版会、2021年)マニアックなガチ・学術研究書なのですが、発売10日で重版出来となりました。ありがとうございます。中小企業の人材開発メカニズムに接近を試みています。どうかご笑覧くださいませ!
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【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約42000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
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