2008.5.9 07:18/ Jun
僕の身の回りだけで起こっていることなのでしょうか。最近、僕がふだんお付き合いをしている方の中では、新聞をやめる人が増えているような気がします。
先日も大学院時代の同期と久しぶりにあったら、「うちは、もう新聞をとるのをやめたよ」と言っていました。
理由はいくつかあるようです。
1)情報の早さがインターネットの方が早い
2)ネットならば無料
3)かさばる
4)捨てるのが面倒くさい、エコ的にもどうかと思う
でも、最大の理由としてどの人もあげるのは「ひとつの会社の、ひとつの記事を鵜呑みにする時代じゃない、複数の新聞社の記事を比較する必要がある」ということです。
つまり「記事」とは「言説」である、と最近痛烈に感じるようになった。だから「言説」同士の比較をすることで、何が本当なのかを自分の「目」と「アタマ」で確かめなければ、世の中の動向を読み間違う、と言っているのですね。
確かに、彼らがいうように、記事は決して「中立」ではありません。といいましょうか、それは新聞社や記者が悪いわけではなく、人間の書くもの、人間の表現に「中立なもの」などありえないのです。記事には必ず、新聞社や記者の政治的な主張、利害、関心といったものが含まれます。
ひと月4000円も払って、ひとつの新聞社から新聞をとって、ひとつの言説を信じるくらいなら、自分の興味のある事件や記事に関して、複数の新聞社の記事を、ネットで「横断的」に読んだ方がいい。僕の知り合いたちは、どうも、そう考えているようです。
そして、彼らが最も嫌う言葉が、新聞は「社会の公器」であるとか、「世論を形成する」とかいう言葉です。そういう「上から目線が我慢ならない」というニュアンスのことを、言う場合が多いですね。
中には
「僕と同年代で、今時、新聞が最大の情報ソースだっていう人がいたら、もう先がしれてる」
なんて、うそぶく奴もいる始末・・・。相変わらず過激な人です。
—
ちなみに、僕は、新聞をとっています。夕刊も朝刊も。でも、それはちょっと特殊な理由です。
僕の場合、自分の専門領域に関する記事を、すべて切り抜きしているのですね。それをスキャンして、すべてコンピュータにストックしている。そうすると、授業や講演のときに、さっと使えるのですね。だから、新聞をとっています。
僕は、いつも、だいたい5時くらいに起きます。まだカミサンと子どもは寝ていますが、ここからの1時間が勝負です。まず朝刊と前の日の夕刊に目を通して、切り抜きをする。その間、NHKをつけっぱなしにして聞いている。
それが終わると、RSSリーダで国内外のブログ(400個くらい)のタイトルだけ流して読んでいき、興味深いものがあれば読む。その後、インターネットで大手の新聞社、海外の新聞社のトップページだけを読みます。興味深い記事があれば、そこだけ読みます。
で、今やっているみたいに、自分のブログを書くのですね。
—
僕の場合、「切り抜き」では大変お世話になっているし、おそらく、これからもしばらくは新聞をとるでしょう。ブログに僕が期待するものと、新聞に期待するモノは異なっています。特に専門領域に関する事、書評などに関してはブログは非常に有益な情報を提供してくれます。ですので、新聞に対して、それほど過激な意見や要望を持っているわけではありません。
ただし、「記事とは政治的中立な文章ではない」という点においては、彼らの意見に同意します。これはブログであろうと、新聞であろうと同じ。どういう手段かは人によって違うのでしょうが、ひとつの言説に固執していると、世の中の動向を読み間違うのではないでしょうか。メディアを問わず、様々なメディアの情報を読みとく能力が必要になるのだと思います。
そして、今更ですが、ネットは記事の比較をもっとも簡便に行うことのできるメディアであるとも思います。もちろん、それには、それ相応の知的労力も時間も必要です。
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海の向こうでは、新聞業界の凋落に歯止めがかかりません。あのニューヨークタイムズですら苦戦を強いられているようです。
第5回 NYタイムズ前編集長、「新聞社のビジネスモデルは破たんしている」とため息
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080410/298684/
ニューヨークタイムズ、新聞広告の落ち込みをネット広告では補えず
http://zen.seesaa.net/article/25791700.html
もちろん、アメリカの新聞業界と日本のそれは、ビジネスモデルも規模も違いますし、そのまま比較はできません。
ですが、僕の知り合いの最近の動きから、この日本でも「地殻変動」が起こっている、と考えるのは考えすぎでしょうか。もちろん、この「動き」は、僕の身の回りだけで起こっていることなので、一般化はできませんが。
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