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2008.5.3 06:50/ Jun

大学と教室

 現在、東京大学には、学部と大学院あわせて3万人弱の学生が学んでいます。
 ここで「問題」。
 机と椅子を自由に動かすことのできる、ワークショップやグループワークに適した、50名程度収容の教室が、東京大学本郷キャンパスにはいくつあると思いますか?
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「そんなもん、知らねーよ」、と便所スリッパで殴られそうですが、答えは「4教室」です。万の単位の学生がいて4教室(本郷だけなので3万ではありません)。
 この数字、僕も聞いたときは、耳を疑いました。キャンパスは広いんだから、「机と椅子が動く教室くらい、たくさんあるんじゃないの?」と。
 昨年、あるワークショップを学内で実施したいと思い、ある方に調べていただいたのですね。もちろん、半年前のデータですので、今はもっと増えていると思います。
 限られた時間でしたので、学内すべての教室を調べられたわけではありません。そのときは、いろいろ事務職員の方とかにも聞いてくださったそうですが、4つしか見つけられなかったそうです。参考程度の数字だと思って下さい。
 ちなみに、結局、去年のワークショップは、学外の施設で開催しました。予約で埋まっていたりしましたので・・・。
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 共同学習に適した教室が、大学には以外と少ない。先ほどの数字が多いか、少ないかは判断のわかれるところですが、でも、おそらく確実なことが3つあります。
 ひとつめ。
「教室のデザインとは、それをデザインした人、デザインされた当時に趨勢だった教育観を、暗黙のうちに、反映しているものです」
 ふたつめ。
「教室のデザインとは、暗黙のうちに、教授スタイルを決定してしまう可能性があります」
 みっつめ。
「教室のデザインは、グループワークの成果に重大な影響を与える可能性があります」
 学問的にはいろいろ論じたいところですが、ここは時間がないのでやめます。
 でも、常識的に考えて、階段型教室で、グループワークをさせにくいですよね。やりにくいでしょ、コラボラティブな授業を。
 階段型教室だったとして、学ぶ側だったとしたら、そこで4人で議論したり、協同作業したりすることは難しいでしょう。何となく、学びにくい気がするでしょ。
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 大学では「知識の暗記」にとどまらず、「コミュニケーション力を獲得させろ」「問題解決能力を鍛えろ」とか、いろいろ言われているそうです。近頃の、「何にでも~力をつければいいと思っている風潮」もどうか、と思いますが、まぁ、おっしゃる意味はわかります。
 そして、もし仮にそうだとしたら、大学にはそうした「能力」を発揮できる「課題」と、それを可能にする「環境」がなくてはなりません。しかし、「大学の教室環境」は、そこまで追いついていないのが現状です。
 もちろん、これは「追加の教育投資なし」で可能になることではありません。ボルトで机をうちつけるだけの一斉授業型階段教室よりはコストがかかることが予想されます。
 これは以前にも言いましたが、日本は「教育にはあれこれ要求しますが、お金をかけない国です」。
 日本の教育への公財政支出は、年間国家予算の3.5%です。これは、OECD加盟国30ヵ国最下位(2003年)。高等教育に至っては、我が国の公財政支出割合はGDPの0.5%。米国は1.0%、イギリスは0.8%。OECD平均は1.0%。つまり「半額」です。
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 本心をいうと・・・僕は、大学は、もっとツンツンしていて欲しいと思います。あらゆる意味で、研究的にも、教育的にも、先端的であってほしい。「先端的」すぎて、「おっと、ベイビー、オイラの近くにくると、ケガするぜ」くらいがいい(笑)。
「社会から大学に寄せられるニーズ」に「大学の教室環境」が後追いするのではなく、「先端的な大学の教室環境」が「社会にシーズをつくりだす人」を育成できるような場でなくてはならないと思います。
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 今年、東京大学では福武ホールが完成しました。また、他にも、コラボラティブな授業を可能にする教室、部屋の設計の話もあるようです。少しずつですが、大学も変わっています。

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