2008.3.18 07:00/ Jun
東大・駒場キャンパスで開催された「現代GPシンポジウム:ICTを活用したアクティブラーニング~未来の大学教室のデザイン」に途中から参加した。所用があり駒場キャンパスの会場に入ったころには、会場は満員御礼。
東京大学現代GP:ICTを活用したアクティブラーニング
http://www.komed.c.u-tokyo.ac.jp/gendai/index.html
シンポでは、「大学と教室空間のあり方」というテーマで、マサチューセッツ工科大学のピーターさん、スタンフォード大学のダンさん、はこだて未来大学の美馬さん、東京大学の同僚の山内さん、望月さん、ガリーさんらが、それぞれの大学での取り組みを紹介していた。
どの事例も非常に興味深かったけれど、個人的には、美馬のゆりさんの話が印象深かった。
美馬さんは、日本文化をさかのぼりながら、「お茶の間」が「マルチファンクショナルでコモンな空間」であることを指摘する。
お茶の間は、「家族が食事をする場所」であり、「家族が眠る場所であり」、「家族がテレビを見ながら団らんする場所」である。そこは一人に占有されるわけではない。西欧人の目で見れば「ウサギ小屋」のような「狭い空間」でありながらも、たくさんの用途に利用する工夫があふれている多機能な、共有空間である。
美馬さんの深みのある主張を、エイヤッと要約すれば、「大学にマルチファンクショナルで、コモンな場を増やすべきだ」ということになる。
様々な社会的背景をもった人々が、それぞれのニーズに従って、集っては、アイデアを練り上げ、そしてそれを記録できるようなフレキシブルでいて、マルチファンクショナルな場。確かに、そうした場があれば、大学教育はよりよいものになると感じた。はこだて未来大学については、下記の本にも概要が述べられている。
美馬さんは、大学の教室空間について一通り言及したあとで、はこだて未来大学のFD活動について話を進めた。
はこだて未来大学では、FD活動を「教員個人としての資質の向上だけでなく」、「よりよくなろうとする学習共同体の構築とその維持にある」と定義しているそうだ。
教員、職員、学生・・・大学に集う人々の学習者共同体を構築し、自分たちの学びの場を、自分たちで改善していくことこそが、FDの眼目であるという考え方である。
美馬さんのこの指摘は、以前Learning barで講演していただいた、名城大学の神保さんの指摘に通じるものがあった。これに関しては、以前からずっと僕も問題意識をもっており、このブログで述べたことがある。
ファカルティディベロップメント2.0ワークショップ
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/08/20_1.html
美馬さんによると、はこだて未来大学のFD活動の成否は、はこだて未来大学のユニークな学習空間にも強い影響を受けているという。
未来大学では、これまでの取り組みをまとめ、「学び方を学ぶことに関して意識を高めるためのセンター=メタ学習センター」を学内につくるそうだ。今後、非常にユニークな取り組みがなされそうで、注目である。
その後、シンポジウムはパネルディスカッションに入ったが、残念ながら、僕は私的都合で中座。
ともかく、シンポジウムの準備を中心的にすすめた西森年寿先生、望月俊男先生、林一雅先生、お疲れ様でした。
最新の記事
2024.11.9 09:03/ Jun
なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?
2024.10.31 08:30/ Jun
2024.10.23 18:07/ Jun
【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)
2024.10.14 19:54/ Jun
2024.9.28 17:02/ Jun