2023.1.24 08:22/ Jun
研究生活を(あきずに)おおよそ25年もしておりますと、「全然、うまくいかなかった研究」というのもゴマンとあります。
その筆頭格にあげられるのが、
管理者(マネジャー)のもつイラショナルビリーフに関する研究
です(泣)。
イラショナルビリーフとは「合理的ではない信念」のこと。単純にいえば「思い込み」です。
たとえば、
「管理職とは〜しなければならない」
「部下とは〜しなければならない」
といったような「思い込み」に過剰に囚われている管理職は、自分自身を苦しめ、パフォーマンスを落とす原因になっているのではないか。当時のわたしは、そんなことを考えていました。
すなわち、
管理職のもつイラショナルビリーフをたくさん持てばもつほど、管理職のパフォーマンスは弱くなり、かつ、管理職が感じるストレスもあがるだろう
という仮説を検証しようとしていました。
実際、過去、たくさんの管理職研修を通して、管理職の方々とお会いしましたが(今は原則、研修は控えております)、下記のような様々な症状に罹患している様子を見てきたのです。
その様子が、どうにも苦しそうで。。。わたしには「イラショナルビリーフで、自分を苦しめなくてもいいのに」という具合に見えたのです。
たとえば下記のような症状です。
1.管理職は「弱さ」を見せちゃいけない病
2.強くなきゃマネジャー失格病
3.部下に言いたいことを言わせたら負け病
4.部下に弱みを見せると、刺されちゃうかもしれない病
5.マネジャーかくあるべし病
6.どうせ、おれが巻き取った方が早い病
7.長時間労働しなければ、部下は育たない病
8.熱意をもって仕事をすれば必ず成果がでる病
9.管理職は正しい方法をしっている病
これらのビリーフのなかには、仕事をしていくときの「よすが」として「役に立つ」ものも当然あるのかもしれません。
しかし、それを過剰に持ちすぎてしまうと、成果があがらない、管理職の生きづらさをあげてしまうのではないか。わたしはそんな風に考えていました。
しかし、この研究は、まったく検証されませんでした。泣。
大失敗よ(泣)。
理由は・・・・。
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当時、質問紙調査による定量的検証を試みたのですが、イラショナルビリーフへの共感を尋ねたところ、多くの管理職が、そこに「高い値」をつけてしまった。それほどまでに、これらの文言は、管理職が「そうだ、そうだ」と思っていた(泣)。
別の言葉でいえば「社会的望ましさ(調査回答者が、世間から好意的に見られる方向で質問に答えようとする傾向)」から、そのように回答してしまった、とも言えそうです。
結果は、もうおわかりですね。管理職がみんな高い値で回答しているのですから、この項目と、どのような成果変数を「かけ算」しても、そこに差は生まれません。
よって検証失敗。
まぁ、今から考えれば、こういう生々しいものを定量的調査の質問紙調査で行ったのは無理があったかもしれませんが・・・。
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今日は管理職のもつイラショナルビリーフに関する研究(未検証)を久しぶりに思い出し、ご紹介しました。昨日、博士課程の堀尾志保さん(立教大学大学院+JMAM)井上佐保子さんと新刊の案出しをしていて、急に10年前のチャレンジを思い出したのでした。
ま、結果はNGでしたし、いまどき、あんまり流行らないのかもしれませんが、こういう生々しい研究を僕はしたいな、なんて思います。
社会の誰かの「お困り事」にフィードバックできる研究、というのかな。ま、、、結局、研究としてはうまくいかなかったのが、忸怩たる思いですが。
あなたの周囲の管理職は、イラショナルビリーフに囚われていませんか?
誰か、やって!
そして人生はつづく
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