2022.4.30 08:12/ Jun
これらの議論は、周知のとおりミシェル・フーコーの「性の歴史」による問題提起と相似しており・・・である。
この概念は、読者もおわかりのように、ロラン・バルトが著書「零度のエクリチュール」で取り上げた・・・と同じである。
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学生時代、僕は、いわゆる人文社会科学の、一部の「高尚な文章」が「嫌い」でした(全部ではない!)。誤解を避けるために申し上げると「書いてあることが嫌い / 読めない」というわけではありません。申し訳ないけれど、国語は得意なので、読めないことはありません(体育と図工は2です)。むしろ「書き方」が嫌いなのです。
いわゆる高尚な文章には、冒頭の文章のように
・「語の定義」がきちんとなされておらず
・「知っていること」が前提に書かれていて
・「周知のとおり」「わかっているように」が連発し
・「作者の頭に想起されていること」と「それ以外の人々の頭の中」が
あかたも「同じ」であるように書かれている
文章が散見します。
端的にいうと、「そのくらい、あんた、わかってるよね。そーそー、それよ。そんなもん、わかってて常識だろ、ヴォケ」的なノリがあります。
学生時代、大先生の書いた「高尚な文章」を見るたびに、
「周知のとおり」じゃねーよ
おれ、知らねーよ
ちゃんと、ここでの語の定義を書いてよ
とひとり突っ込みを入れておりました。
まぁ、専門家の方からすれば、たとえ教養学部の授業の教科書であったとしても「そんなことはわかっていて当然」。「わからないやつが悪い」「そもそも専門家以外の読み手を意識していない」ということだと思うのです。
ないしは、自分自身が「どんなレベルの言葉」を用いているのか、わからなくなっているか。はたまた「専門家である自分」と「読者である一般のひと」に「言葉」を用いて、猛烈な境界をつくりたい、のかもしいれません。
いずれにしても・・・僕は、そういう専門家には「なりたくなかった」。僕のやっている学問なんて、そもそも、それほど難しいものではないのですが、それでも、自分が文章を書くときには、
1. 語の定義を必ず行う
2. 定義を行ったうえで、さらに別の言い方で説明する
3. 読者を煙にまかない、誰一人取りのこさない
などのことを誓ってきました。端的にいうと、どんな概念であっても、「知らないひとがいること」を前提に書くのです。だから、僕の文章は、少し「くどくなる」。しかし、くどくなる犠牲を払ってでも、上記の3つは、なるべく守ってきたつもりです。まだまだ自戒をこめて・・・なのですが。
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先だって、僕の文章を読んでくださった、ある方(ご迷惑をおかけするかもしれないので、お名前は出しません)が、下記のようなことを言ってくださりました。
中原の書く文章は「定義」が何かを冒頭に述べている
続く文章には、その「定義」を噛み砕かれて説明している
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これは、ちょっと、嬉しかった(笑)。
ものを書くようになって25年間、ひそかに、ひそかに繰り返していたことでしたので、そのことに気づいてくれる方がいらっしゃった、というのは、嬉しいことでした。
ささやかな喜びですが。本当にありがとうございます。
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かつて作家の井上ひさしは、下記のような言葉を残した、と言います。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そして、ゆかいなことは
あくまでゆかいに書くこと
とりわけ注目したいのは「むずかしいことをやさしく」の部分です。これは言うのは簡単だけれども、かなり「意図をもって書かない」とそうはならない。
反対にシャバにあふれているのは、
やさしいことを、むずかしく
(シンプルにいえばいいことを、小難しくいう)
ではないでしょうか。
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願わくば「誰一人取りのこさない文章」を書きたいものです。
そして人生はつづく
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