2022.4.11 08:33/ Jun
「大学院での学び」と「研修の学び」は異なります!?
教え方も異なります!
・
・
・
せんだって、立教大学大学院 リーダーシップ開発コース(ひとづくり・組織づくりの大学院コース)に新入生(第三期生)向けの、入学式やキックオフを無事終了しました。厳しい入試を突破してきてくださった20名の方々に感謝するとともに、非常にともに学べますことを、心より嬉しく思います(準備をしてくださった事務局の皆さんもお疲れ様でした)。
さて、先日の授業キックオフでは、しょっぱなから、いろいろなお話をさせていただきましたが、最後に、強調したのが、冒頭の内容です。
端的に申し上げれば、
「大学院での学び」と「研修の学び」は違いますよ!
ということです。
イメージでいえば、
大学院の学びというものは、
1.学位取得(学問すること)をめざして
2.すでに色づいているキャンバスを
3.部分的に漂白しつつ
4.新たな色(知識・スキル・マインドセット・ものの見方)を
5.じわじわ、と、染みこませるような学び
です。
(大学院といっても、いろんな大学院がありますので、もちろん、一概にいえません。ここでは、私どものコースのように、社会人が通われる文系の大学院を想定しています)
端的にいえば「染みこむ学び=大学院での学び」です。
これに対して、企業研修における学びとは、少しメタファが異なります。
(といっても、いろいろなタイプがあるので、なんとも言えないのですが、ここでは半日・1日で行われるようなものを想定してください)
一般に、企業研修における学びというのは、
1.目的をしっかりとらえながら
2.必要な知識・スキル・マインドセットを
3.確実に「打ち込む学び」です。
企業研修とは「経営・現場にインパクトを与えるために、仕事とは異なる場所で、学習というメカニズムを用いて、行われる教育的な働きかけ」です。企業研修での学びは「打ち込む学び」というメタファが、わたしにはピンときます。
皆さんだったら、どのようなメタファで捉えるでしょうか。
▼
一般に、これら2つの学びは「同じようなもの」として認識されがちなものです。「学びは学び、ひとつでいーじゃねーか」という感じです。しかし、ふたつの場所を常に往還しながら20年間、教えてきた人間としては、個人的には、質が異なるものと考えています。
その秘密は「尺」にあります。
大学院での学びは、15コマ(1コマ:90分:30単位分)+学習時間+プロジェクト時間+論文執筆時間という膨大な時間を必要とします。つまり「尺」が圧倒的に「長い」のです。
これに対して、企業研修は半日といっても、休憩とれば、90分×3本くらいが限界ではないでしょうか。つまり「尺」が圧倒的に「短い」のです。
尺が長い大学院の場合は、毎回、毎回の授業で、必ずしも「わからなくても」いいのです。
時には「学習者を揺さぶらせたり」「モヤッ」とさせることも(意図的にちゃんと行えるのなら・・・ただしスキルがいります。できるひとは限られています・・・教えるスキルがない方がやると、それは、単に「下手くそ」なだけです)、大切なことです。
大学院での学びは、2年間の、様々な授業を通して、
「点」と「点」がつながり「線」になり
「線」と「線」がつながり「かたち」になり
「かたち」と「かたち」がつながり、やがて、
卒業する頃に、「一枚の絵」になればいい
のです。
別の言葉でいえば「大学院での学びは、簡単にわかったよーん!と言われたら、困る学び」なのです(笑)。
しかし、尺が圧倒的に短い企業研修では、そうはいきません。時間が短い中で、確実に「お土産」を渡して、ただちに、次の日から、現場で活用してもらわなくてはならないのです。それを「研修転移」といいます。
・
・
・
やっかいなのは、こういう「尺」、別の言葉でいえば、学びにかけられるリソースの事を考えないケースが散見されることです。
つまり、
・大学院での教え方を、そのまま企業研修で行ってしまうケース
・企業研修での教え方を、そのまま大学院で教えてしまうケース
です。大学院で教えている先生が、企業研修に向かないときがあるのは、こういう理由です。また、企業研修をやっている先生が、大学院で、いつもと勝手が違うな、と思うのは、こういう理由なのです。
(だから、両機関ではじめて教えるときには、フィードバックなどを受けて、自分の教え方を見直さなくてはなりません)
また、さらにやっかいなのは「学び原理主義」です。
「学びとは・・・・本質的に、かくかくしかじかであるべきだから、企業研修での学びも、本来・・・・であるべきだ。打ち込むなんて、けしからん」
「学びとは・・・・真の意味では、ほげほげちょめちょめであるべきなのだから、大学院での学びも、本質的には・・・・であるべきだ。けしからん」
・
・
・
シャバでは「本質的に」「真の意味」「本来」といったような形而上学的な言葉が安易に使用されたら、気をつけましょう。
その方が言いたいことは「わたしの話を聞け」「わたしが言っていることが正解だ」「わたしが絶対だ」です。
▼
今日は「大学院での学び」と「研修の学び」は学び方、教え方が、異なるよ、というお話をしながら、その質についても考えてみました。目的も、尺も、かけられるリソースも異なるのに、「教える方法」だけが同じ、ということは、あまり想定できないよ、というお話をしました。
あなたの近くにある学びは「染みこむ学び」ですか、それとも「打ち込む学び」ですか?
そして人生はつづく
ーーー
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください!
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
https://amzn.to/3esCOrW
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!
ーーー
職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発)
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
ーーー
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
ーーー
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます!
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q
ーーー
新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
ーーー
【泣くな!新米管理職!】
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
ーーー
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
ーーー
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約37000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
最新の記事
2024.11.9 09:03/ Jun
なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?
2024.10.31 08:30/ Jun
2024.10.23 18:07/ Jun
【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)
2024.10.14 19:54/ Jun