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2022.4.7 08:20/ Jun

人材開発・組織開発の実践者にとって「必要な資質」とは何か?

 人材開発・組織開発の領域で仕事をしていくうえで、必要なスキル・知識・マインドセットといったら何でしょうか?
   
 この問いには、いろいろな答え方があるのだと思います。
   
 やれ、コーチングだ、傾聴だ。
 やれ、組織調査のスキルだ、分析だ。
 やれ、人事の知識だ、ビジネス経験だ
  
 そのどれも「間違っていない気」もします。
 また、人材開発・組織開発にまつわる団体で「コンピテンシーモデル(必要な能力・資質)」などをだしているところもあります。
  
ATD Talent Development Capability Model™
https://www.td.org/capability-model/tdbok
  
 そうしたものを参照し、自己チェックを為さるのも一計かと思います。
  
  ▼
  
 ところで、シャバの議論においては「あまり語られない資質・能力」なのですが、個人的に、僕が「人材開発・組織開発の仕事をやっていくうえでは必須だろうな」と感じているものがあります。それは何だと思われますか?
  
 そんなん知らんがな(笑)。まー、そう、言わず。
   
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 それはですね・・・ドンドンドンパフパフパフ(笑)
  
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 ドン!
 答えは「曖昧さ耐性(あいまいさ・たいせい)」です。
  
  ▼
  
 一般に「曖昧さ耐性(Tolerance of Ambiguity)」とは、専門家に、便所スリッパで後頭部をパコーンとたたかれる覚悟をして、端的にいうと、
  
(1)新規なものでどこから手をつけたらいいかわからない事象
  
(2)複雑すぎてワケワカメ(死語?)な事象
   
(3)こんがらかっていて、矛盾していて、途中で枯れてる事象
    
 に対して、個人がどの程度反応できるか、どのような態度をもつのか、ということです。
   
・見たことがないものや前例のないものに「小躍り」するひともいれば、不安にかられるひともいる
  
・見通しがきかないことをチャンスだと思う人もいれば、立ちすくむひともいる。
  
・不完全なものをそのまま抱えられるひともいれば、白黒はっきりつけたくなるひともいる
  
 曖昧さ耐性が高いというのは、新規なもの、複雑なもの、矛盾を抱えるものを「抱きしめ」耐えることができることです。
  
  ・
  ・
  ・
  
 そして、ここからは仮説ですが、
  
 人材開発・組織開発に向いているひと、というのは「曖昧さ耐性」が強いひとではないか
  
 とわたしは思います。
  
 なぜなら、彼らが相手にする「ひと・組織」というものが
  
(1)いつ、何が起こるかわからない
(2)見通しがきかない、全体像を把握することが難しい
(3)朝令暮改、すぐに変わるし、意固地にもなる
(4)必ずしも論理で動いているわけではなく、感情の塊みたいなもの
  
 だからです。つまり、「曖昧」という粘土をこねれば、あら不思議、「ひと・組織」になっちゃったって、いうくらい、「曖昧」!
  
 そういう曖昧でうつろで矛盾に満ちた存在に対して、
  
「おまえら、曖昧なんぢゃ、ボケ!」
「シャンとしろ、シャンと!」
    
 とキレてみたところで、物事は何一つ解決しません。
  
 むしろ、人材開発・組織開発のプロフェッショナルならば、「曖昧さ」を「ともに抱きしめる」くらいの度量がなければ、仕事をしていけません。
  
クライアント 「うちの組織、曖昧っすね」
コンサルタント「そうですね」
クライアント 「いや、どっから手をつけていいのやら」
コンサル   「まぁ、そう気を落とさず」
クライアント 「どうしましょ?」
コンサルタント「ともに考えましょうか・・・地道に、ひとつひとつ」
   
 こういう姿勢が、ときに、必要なのです。心をひろくもたなきゃね。
  
 ▼
  
 今日は「曖昧さ耐性」のお話をしました。
  
 シャバの物事のなかで、大切な物事ほど「曖昧なもの」です。「曖昧さ」を毛嫌いするだけでなく、うまく自分を御しつつ、お付き合いできる度量を持ちたいものです。自戒をこめて
  
 そして人生はつづく
       
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「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
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強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
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自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
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https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
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