2022.3.14 07:57/ Jun
あなたのためを思って、よかれ、と思って、これ、用意しているのよ。
あなたは、自分で決めずに、黙って、従えばいいの
悪いようにはしないから。
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パターナリズム(温情主義)という言葉があります。パターナリズムには、様々な定義がありますが、ここでは
1.相手の意志にかかわらず、
2.相手のために「よかれ」と思って為され、
3.本来、相手がなすべき意思決定を
4.本人に代行して行ってしまうこと
とします。
冒頭の3行の台詞、これは、ある親が子どもに対して発した台詞ですが、これがパターナリズムの典型です。
あなたのためを思って、よかれ、と思って、これ、用意しているのよ。
あなたは、自分で決めずに、黙って、従えばいいの
悪いようにはしないから
・
・
・
「あなたのため」を思って「よかれ」と思って為される意思決定は、ときに「お節介」や「暴力(ブルデュー的にいえば、象徴的暴力ですね)」にもなりえますが、パターナリズムは、それを覆い隠します。
パターナリズムは、自己決定能力のない(欠けている)存在(たとえば幼児)などにはメリットをもたらします。だって、経験も自己決定能力のないひとに
「あなたの、好きにしていいんですよ。好きにおやりなさいな」
といったところで、それは、ほぼ「放置」を意味します。
しかし、一方、パターナリズムが行き過ぎてしまうと、当人の「自己の意思を確認する機会」「自己決定の機会」を奪ってしまうから注意が必要です。
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ところで、教育という領域は、このパターナリズムがはちゃめちゃに「駆動」しやすい空間です。
親が子どもに発する言葉、
あなたのためを思って、よかれ、と思って、これ、用意しているのよ。
あなたは、自分で決めずに、黙って、従えばいいの
悪いようにはしないから
もその典型です。
一方、先生が、生徒に発する言葉、
おまえたちのためを思って、よかれと思って、校則を用意したんだ。
みんなが気持ちよく生活できるようにな。
おまえたちは、あまり深く考えず、黙って、従いなさい。
悪いようにはしないから。
皆さんも、こうした台詞を聞いたことがあるでしょう。
そして、辟易とした経験もね。
▼
ひるがえって、人材開発の世界のことを考えてみます。
人材開発の世界では、ここ十年ほど、下記のような変化が起きているような気がします。
それは
研修は「組織から与えられるもの」から「自分で決めて選ぶもの」への転換
です。
もちろん、組織が用意する研修もありますし、悉皆研修のものもあります。しかし、大きな変化を看取ると、上記のような変化が生まれつつあるように思うのです。ま、先進企業の皆さんからすれば、何を、今さらジロー的話題ですが。
かつての人材開発業界には、パターナリズムが強く駆動していました。
あなたのためを思って、よかれ、と思って、これ、用意しているのよ。
あなたは、自分で決めずに、黙って、従えばいいの
悪いようにはしないから。
しかし、昨今の人材開発は、
あなたのためを思っているけど
自分のことは、自分で決めて、自分で実行してね
あなたの仕事人生は、あなたのものだから
という風に変わってきているように思います。パターナリズムは弱まり、ひとびとが「自己」という存在を、まるごと、自分で引き受けなければならなくなっているようにも思います。
(教員研修の世界は、まだまだパターナリズム丸出しですね)
これは、一見、よいことのようにも思います。
でも、
自分の学びを、自分で引き受ける
自分の学びを、自分でデザインする
というのは、言うのは簡単ですが、とても難しいものです。逆にいうと、厳しい世界なんです。「自分で引き受けられないひと」や「自分でデザインできない」ひとは、学べないですし、浮かばれませんので。
これからの学校教育や、人材開発では、パターナリズムが弱まる世界において、「自分の学びのデザインを行っていける人材」の育成が、もっとも重要なことだと、わたしは思います。
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