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2022.3.3 07:59/ Jun

結局、大の大人に「教えられる」ようになるためには何が必要なのか?

 先だってのブログ記事(下記)で、僕は「大人に教えること」と「子どもに教えること」は、何が違うのか、何が同じなのかについて論じました。
   
「子どもに教えるのはいいけど、大の大人に教えるのは苦手なんだよな」は、いったい「なぜ」なのか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/13846
  
 そのうえで、
  
「子どもに教えるのはいいけど、大の大人に教えるのは苦手なんだよねという状況」
  
 はなぜ生まれるのかを考察しました。
 
  ▼
  
 ありがたいことに、この記事には、多くの方々からメッセージや質問をたまわりました(感謝)。
  
 そのメッセージのなかで、もっとも多かったのは、
  
「それでは、大人に教えるためには、何が必要なのか?」
  
 というものでした。
  
 先日のブログ記事にありましたように、大人の学びは、
  
1.権力を前提にできない
  
2.意義や目的を言葉で語らなくてはならない
 
3.それぞれの大人の経験を重視したカリキュラム展開をしなくてはならない
  
 などなどの注意点があります。
  
 それでは、そうした留意点に配慮しながら、「大人に教えるようになる」ためには、何が必要でしょうか。
  
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 それは「トレーニング(Training)」です。
 トレーニングがなければ、うまくなるわけがありません。
   
 たとえば、子どもを教えていたひとでも、大人の前で登壇するときには、大人の前で教えることにまつわるトレーニングを受ける必要があります。それがないのに、突然、大人の前で登壇させても、うまくいくわけがありません。
    
 子どもに教えることができたからといって、大人に教えられるわけではない
    
 のです。
   
 トレーニングの内容を、もう少し解像度を高めていうと、下記の5要素が必要だということになります。
  
1.【経験】
 大の大人の前で話をして、授業をする経験を多様に持つこと
  
2.【フィードバック】
 大の大人を対象にした授業の登壇経験に対して、多種多様なフィードバックをもらうこと
  
3.【リフレクション】
 登壇経験やフィードバックを通して、自分を見つめること
  
4.【評価】
 登壇経験について他者評価が行われ、それらをもとに、新たな目標設定を行うこと
 
5.【知識】
 大の大人に教えること、大の大人が学ぶことにまつわる知識をつけること。
  
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 この5要素の重要性を、ザクッと並べると、下記の順番になると思います。
 要するに、前半部の「経験・フィードバック・リフレクション・評価」の方が、「知識」よりもずっと大事。
  
 経験・フィードバック・リフレクション・評価 > 知識
  
 もちろん、知識が重要ではない、ということではありません。反知性主義に陥らないようにする必要があります。
 しかし、知識は知識単体として存在していても、仕方がありません。勉強したことにはなるかもしれませんが、「ひとさまに教えるようになること(行為できること)」とは別のことです。
     
 人材開発の世界では、こうしたトレーニングを、Trainer’s Training(TT)とか、Train the Trainer(TT)といったりします。わたしも、過去に、この種のプログラムを何度か受講しました。
   
 もっともクオリティを重視する講師養成機関、民間研修会社になると、このTTだけに1年をかけたりします。
 1年をかけて、大人の前で徹底的に登壇させて、フィードバック・リフレクション・評価をかけていき、さらには座学を学ばせるのです。
  
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  ・
  
 もちろん、研修講師は「無免許」です。
 国家資格があるわけでも、免許があるわけでもありません。ですので、教育のクオリティ(質)は玉石混交です。
   
 ただ、あえてあえて指摘させていただきますと、国家資格があっても、免許があっても、授業の質が担保されているわけではありません。
  
 それはみなさんが被教育経験を通じて、多くの「素晴らしい授業をする先生」にも出会えたし、「ぺんぺん草もはえないような授業をする先生」にも出会えたことが、その証左です。
  
 結局、免許があろうが、なかろうが、国家資格があろうが、なかろうが、
  
 自ら登壇し
 自らフィードバックを受け
 自らリフレクションし
 自ら評価を見つめ
 自ら学ぼうとする
  
 かどうかだけです。
  
 ちなみに、またまた「ちゃぶ台」をかえすようで恐縮ですが、
  

  
 このことって、「大の大人」に教えることにだけに、言えることでしたっけ?
 そうじゃないですよね。大の大人だろうが、子どもだろうが、結局、同じ。子どもに教えるためには、結局、子どもを前にして、この5つを繰り返し、繰り返し、繰り返していくことです。それがちゃんとやられていない場合、授業がうまくなるわけがない。
  
1.【経験】
 子どもの前で話をして、授業をする経験を多様に持つこと
  
2.【フィードバック】
  子どもを対象にした授業の登壇経験に対して、多種多様なフィードバックをもらうこと
  
3.【リフレクション】
 登壇経験やフィードバックを通して、自分を見つめること
  
4.【評価】
 登壇経験について他者評価が行われ、それらをもとに、新たな目標設定を行うこと
 
5.【知識】
 子どもに教えること、子どもが学ぶことにまつわる知識をつけること。
  
 たとえば、新任教員ならば、4月1日からひとりで授業なんていう「無理ゲー」が通用するわけがない。ある程度の時間をかけて、トレーニング期間を設けなければなりませんし、それが無理なら、トレーニングを前倒して徹底的に行う必要があります

      
 しかし、子どもの教育の場合は、ちょっとした「落とし穴」があります。
 それは、子どもの教育の場合には、教える側が、教えられる側よりも「権力」をもっているということです。
  
  大人の教育であれば、授業がうまくいかなければ、受講生からクレームを受けます。あるいは、クライアントから「発注」を受けられなくなり、リピートされません。 
 一方、子どもの教育では、教える側(大人)と教えられる側(子どもや親)に「非対称な権力関係」が存在するために、クレームは大人ほど存在しません。成績が怖いので、フィードバックをすることもありません。だから、なおさら5つのプロセスをきっちり回していくことが必要です。
  
 結局、「教えられるようになるためのメカニズム」は、子どもであろうが、大人のであろうが、同じです。
 しかし、注意しなければならないポイントは、ちょっぴり異なる。
 以上。
 ちゅどーん。
  
  ▼
  
 今日は大人に教えられるようになるためには、何が必要か、について書きました。
  
 自ら登壇し
 自らフィードバックを受け
 自らリフレクションし
 自ら評価を見つめ
 自ら学ぼうとする
  
 大切なことは、いつだって、シンプルです。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
【受講生募集】
 慶應丸の内シティキャンパスで中原が主任講師をつとめている「ラーニングイノベーション」の第14期生が募集開始となりました。人材開発、組織開発などについて広く学ぶことができる講座です。すでに400人以上の卒業生を輩出している講座です。
  
 ラーニングイノベーションは、毎年カリキュラムが変わり続けています。今年のアップデートの大きな目玉は「人事パーソンの学びとキャリア」を扱うプログラムを大幅導入したことです。これによって、人材開発・組織開発のみならず、キャリア開発もプログラムに導入されることになりました。「だんご三兄弟」ならぬ「開発系3兄弟」ですね。
 
 ぜひお越しくださいませ!
  
ラーニングイノベーション
https://www.keiomcc.com/program/lin22a/
  
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中原も少しだけ解説で登場させていただいたNHK総合「逆転人生」ですが、再放送があるようです。金曜日の深夜です。
  
番組は、組織を変えるために、リーダーの登用を変え、評価システムを変えるお話です。後半部では、新たなリーダーのおひとりが、職場・チームに心理的安全性を確保していくプロセスを扱っています。もしよろしければ、ぜひご覧ください。NHKディレクターの久慈瞳さん、山本直史さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。
  
「逆転人生」3月5日(土:金曜深夜です)NHK総合 午前0:10-0:55
https://www.nhk.jp/p/gyakuten-j/ts/JYL878GRKG/episode/te/G56V7LNNVP/
  
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武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
       
ダイヤモンド社が「アンコンシャスバイアス研修」を開発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000045710.html
    

    
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新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
      
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
     
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
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すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
       
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 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
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