2022.2.25 08:16/ Jun
人材開発の世界で、20年ほど研究や実践を進めていると、世代の「断層」のようなものを感じることがあります。
たとえば、研修に関して。
今の50代ー60代以上のビジネスパーソンの方々のなかには「研修大嫌い層」とも形容できるような方々が、確実に存在する気がするのです。
研修内容に対する疑念や違和感というよりは、「研修そのものが嫌い」という感じです。この感じ、おわかりいただけるかなぁ・・・。
一方、現在の30代ー40代の方々には、あまりそういうものを感じません。これが「断層」です。
たとえば管理職研修などをやったとしても、その層は、むしろ、よりスムーズに研修内容や、研修そのものの存在意義を受け入れてくれる気がします。
もちろん、みな、忙しいので
「なんで、このクソ忙しいのに、研修に、呼んでくれちゃってるわけ?」
的な思いはあるんだと思います。そりゃ、そうだよねぇ。はやく終えて、ビジネスで成果だしましょう。
しかし、一方で、下の世代からは、あまりむげに、研修そのものが嫌いという感じはしません。そこに断層があるような気がするのです。
ま、N=1の感想ですけど。
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研修にまつわる負の感情の「断層」。しかし、これは「上の世代」が悪いのでしょうか?
いいえ、それは違うのだと思います。わたしは、この問題は「人材開発の闇」に直結している問題だと思うのです。
かつて、人材開発の世界は、今よりもずっとずっと、KKD(勘と経験と度胸)の世界でした。
「わたしの教育論」が跋扈し、極端な話、えらいひとが「いいと思うような教育」が、さして根拠も、エビデンスも、理論も、データーもなく導入されていました。極端な話、えらいひとが、自分がかつて受けた軍隊式の研修を導入したり、知人の研修会社に丸投げしていたりすることが、かつては、たくさんありました(全体から見れば、少数なんでしょうけれども)。
(今でも、そういう企業はあるでしょうね)
そして、そのなかには「倫理がない研修」もたくさんありました。
研修参加者が、大勢の前でつるし上げられたり、叱責されたり、極端な話、暴力を振るわれたりすることもありました。はっきりいって、傷害事件レベルです。そういうものが、かつては存在しており、ときどき社会問題化しました。
(今でも、そういう企業はあるでしょうね)
研修提供側の「専門性のなさ」も拍車をかけました。研修講師というものは、ときに、「先生」と呼ばれる職業なのかもしれませんが、免許もなければ、必要な知識・スキルが定義されているわけではありません。
専門的な職業団体があるわけでもなく、体系的な知識体系、スキル開発の仕組み、倫理綱領、学位などが定義されているわけではないので、研修講師は、畢竟、「玉石混交」ということになります(海外でいえば、人材開発・組織開発の仕事は、修士号以上の学位を有しているひとが多い国もあります)。そして、研修室という「閉じられた空間」にはいってしまえば、「王様」のように振る舞ってしまう、勘違い講師が、かつては、今よりも存在していたように思います(全体から見れば、少数なんでしょうけれども)。研修の提供手法も、一昔前は、悲惨なものもありました。一方向の一斉授業で、数時間、講師の話を聞くだけといったものも少なくありませんでした。
そして、そのような「ぺんぺん草」もはえないようなクオリティの研修の受講を通して、「研修嫌い」が大量に量産されてしまうのです。
「なんで、こんな意味のないことをやってるんだ。研修なんて、大嫌いだ」
「なんだ、このクソ研修講師。えらそうに。研修なんて、大嫌いだ」
「研修なんて、やったって、意味がない。研修なんて大嫌いだ」
かくして、この思いは、そのひとが上司になったときに、部下に対して「世代」をこえて、世代継承されていくことになります。
「えっ、研修いくの? そんな意味のないものに行く必要ねーよ。仕事しろ」
「そうか、今日、研修なんだ。ま、適当にやっとけ。どうせ、意味ないんだから」
かつて、自分が受けた研修に対する「ルサンチマン(怨念感情)」は、かくして、下の世界に「世代継承」されてしまうのです。
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今の企業からは、すこしずつ「研修大嫌い層」が減っているような気がします。
むしろ、1990年代以降、企業は人材開発投資を減らしているところが多いので、必要な知識・スキルなどを学び直す機会に「飢えている」ひともいるな、と感じることもあります。
これ以上「研修大嫌い層」を生み出さないためにも、人材開発の知識・スキルを、理論的にも高度に体系化していくことは、極めて重要なことです。さらには、そこに倫理綱領を導入していくことも。
(それが、立教大学大学院がLDCコース:ひとづくり・組織づくりの大学院を開設している理由のひとつでもあるでしょう)
わたしたちは、まだ旅の途中にいるようです。
そして人生はつづく
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