2021.11.5 07:20/ Jun
「学びの研究はな、基礎を積み重ねたって、そのまま応用にはならんぞ。応用したけりゃ、最初から、応用することを考えろ」
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今から25年くらい前、僕が、当時の指導教員の先生に言われた一言です。4半世紀の歴史を超えても、まだ覚えてる(笑)。この忘れっぽい、わたくしめが(笑)
ここで先生が「基礎」というのは、「ザ・鉄板研究」です。
1. 実験群と統制群という2つの集団をつくり
2. その2つのあいだに、ものすごく微細な介入の差をつくり
(介入の差=たとえば、片方には、ちょめちょめ学習法を行う、行わないとか、そういう差です)
3. 時間的経過をおき
4. 介入の差の効果を検証しようとする研究
のことです
このポイントは「この2つの群のあいだの違い」は、単一(たったひとつ)で、それ以外は「2つの群のあいだに差があってはいけない」ということです。2つの群のあいだの差が「介入の有無だけ」だからこそ、その「介入を行ったときの因果関係」が測定できるのです。
ここで、わたくしの先生が申し上げたかったことは、こうした基礎研究が意味がない、ということではありません。それは「実践」や「シャバ」とは違う、ということだと思います。
つまり、
1. 先ほどの研究パラダイムで得られた「微細な、単一の介入の効果」というものが、応用(ここでは実践のこと、シャバのフツーの人々)に、そのまま適用すれば、効果がでるかというと、そうならんことの方が多い
2. 応用(実践)の世界というのは、実験と「同じ環境」ではない。多種多様な社会要因、価値観も、モチベも、能力も違うひとびとがまじりあっている。だから、実験で得られた「単一の介入」が、場が変わり、人が変われば、シャバでも再現できるとは限らない
3. そもそも応用(実践)の世界というのは、介入が「単一」なんてことはありえない。常に状況は変わり、常に多種多様だ。だから、応用の現場にいる人間は、単一の介入だけで、効果をだそうなんて、そもそも思わない。あの手、この手を使って、状況にあった、あらゆるものをブリコラージュしながら、効果を出す、それが応用であり、わたしたちの日常だ。実験室で見いだした介入が、他の要因とまじりあったときに、どんな効果を生み出すかは、わからない。
4. だから応用に興味を持ちたければ、あの手、この手を使って、状況にあったものをブリコラージュする、そういう主体を研究対象にして、その主体に、最初から知見を還元できるように、研究を組み立てなければならん。最初から応用することを考えろ。わかるか、おぬし。
ということだと思います。
1と2はよくわかる。しかし、いまだに、わたしは、4をどのように実現するのか、わかりません(笑)。が、少なくとも研究をはじめる最初から「応用すること」を想定しながら、研究しているという点では、先生の教えを、ちょびっとは、守っているような気もします。
ちなみに、この25年前の教え・・・せんだって国重浩一さんの著書「もう一度カウンセリング入門」を読んでいたら、こんな文章にぶち当たり、4半世紀の時間を超えて、思い出してしまいました。国重さんは、セイックラ・アーンキルの「オープンダイアローグ」の一節を自著に引用なさっています。
下記がその部分です
精神医学の専門誌には、実験的なセッティングでおこなわれた研究しか掲載されない。(中略)精神医学で実験的研究デザインをつくろうとすれば、「単一の作用係数」に切り分けられる治療モデルで行わなければならない。(中略)心理的社会的危機が増え、それに対して様々な治療の可能性が増えているが、かたや、その研究については、「たったひとつの研究方法」しか認められなくなってしまっているのである。
(セイックラ・アーンキル「オープンダイアローグ」)
ここでセイックラが述べている「単一の作用係数」というものが、上記で僕が述べた「基礎」の「微細な、単一の介入の効果」ですね。
世の中は大変複雑で、また、人々も多種多様。シャバには、実験時とは違う様々な条件が存在しているのにもかかわらず、その研究方法は、「たったひとつの研究方法」しか認められない・・・しかもそこで得られた「単一の作用係数」は、そのまま実践で役立つわけではない・・・
おそらく、セイックラが嘆いていたことは、25年前、僕の指導教員の先生がおっしゃりたかったことに類似しているのではないか、と思います。
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今日はすこしマニアックなことを書きました。
応用に資する研究って、なんだろう?
最近、そんなことをよく考えます。
僕は僕の道を行くよ。
そして人生はつづく
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