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2021.9.2 08:21/ Jun

「古典」を通して気がついた「激変する学問の内部」!?

 先日、大学院ゼミの、夏の勉強会が開催されました。
   
 夏の勉強会では「古典を読もう!」ということで、今年はロシアの心理学者、ヴィゴツキーの著作を読みました。
(企画してくださった新村さん、ありがとうございました。又大学院生のみなさんもお疲れ様でした)
  
 ヴィゴツキーといえば1890年代に生まれ、40歳手前で夭折した天才心理学者。唯物論をベースにしながら、新たな心理学の大系を打ち立てました。
 1990年代に、マイケル・コールらによって再評価がなされ、のちに、状況的学習論とよばれる学問的潮流を生み出すきっかけのひとりになった研究者です。
  
 今から20年前。わたしが学部生、大学院生の頃は、ヴィゴツキーが、ある種のブームになっており、熱狂的に読まれていました。ほぼ20年ぶりに読むヴィゴツキーは、なんだかとても新鮮でした。
  
 嗚呼、あの頃は、こんなことが議論されてたな・・・
 嗚呼、あの頃は、あの論文が、読まれていたな・・・
 嗚呼、あの頃は、熱い議論があったな・・・
  
 大学院生の多くのみなさんにとっては、「初出」の論文が多かったものと思いますが、わたしとしては、当時読んだものが多く・・・なんだか「懐かしさ」などがこみ上げてきて、昔話が長くならないようにしたいなと思いながら、ゼミの議論に参加していました。
(それでも、喋りすぎたかもしれません・・・すみません)
  
 ▼
  
 勉強会をへて、考えたこと。
  
 20年という長い時間は、わたしにとってはわずか「20秒」のように感じられる短いものでしたが(笑)、その中でも、学問のあり方は、ずいぶん変化したな、ということを再認識しました。
  
 端的に言ってしまえば、かつての学問は、今よりもずっとずっと「理論」が強かった(少なくともわたしの関係する分野では・・・研究領域によると思います)。
  
 理論とは、端的にいってしまえば、「現象と現象を説明する首尾一貫した抽象的なストーリー」です。学問の世界では、「理論」が、今よりも、もっと意識されていたように思うのです。
  
 そのうえで、理論は・・・
  
 人間とはどういう存在か?
 知るとはどういうことなのか?
 学ぶとは何か?
  
 を説明しようとしていました。
  
 大言壮語なところはあるかもしれない。しかし、そういうものが、常にひとびとに意識され、学問が進展していました。
  
  ▼
  
 しかし、20年という月日は、知らず知らずのうちに「学問の内部」を変えてしまったような気がします。
  
 端的にいうと、理論というよりは「個別の現象データ」が重視されるようになりました。
 そして、いまや、現象を構成する個別の「要素X」と、個別の「要素Y」の微細な因果関係・相関関係を明らかにすることが、「学問」と言われるようになり始めているような気がします。
  
 そこでは、
  
 人間とは?
 知るとはどういうことなのか?
 学ぶとは?
  
 ということはあまり問われることはない。とにかく「XとY」を「果てないあやとり」のように調べることが、研究者のやることになっているような気がします。
    
 ここで非常に興味深いのは、「学問の内部」にいて、この20年を過ごしてみると、その変化には、なかなか気付かない、ということです。
 しかし「古典を読む」という、いわば「タイムマシン」にのるような経験を通してみると、そのことがよくわかる。
   
 そうか、僕らは、こんな変化のまっただ中にいたのだ、と。
    
 そうか、知らず知らずのうちに、僕らも変化してきたのだ、と。  

 ここから導き出される命題は下記ですね。
  
 変化しているまっただ中にいるひとは、
 変化に気付けない
  
 逆にいうと、自分が今、どういう時代を生きているのか、自分の立ち位置とは何なのかを、おりに触れて、再確認する意味でも、古典を読むことは重要なのだ、と思いました。
  
  ▼
  
 今日は、学問内部に生まれる変化について書きました。
  
 思うに「要素Xと要素Yの因果関係探しゲーム」は、さらに変化していくものと思います(わたしのいる研究分野では)。
   
 おそらく、1)データのデータベース化、2)分析の自動化、3)知見の一般化をへて、最終的には、人間が、今よりも介在しないものになる気もします。
   
 そして、そうなれば、研究者が「外部」から、現象を観察する意味もありません。
    
 経営・組織の研究でいえば、おそらく、それぞれの組織・企業が、データを蓄積し、サイトスペシフィックな知見(自分の組織にもっとも刺さる知見)を、自ら生産する未来が見て取れます。
 実際、すでに、先端的な企業では、そうなりはじめているのです。わたしが関わっているいくつかの企業では、データをもとに、自分の現場にもっとも刺さる知見を生み出し始めているのです。
    
  ・
  ・
  ・
  
 畢竟、やがて「今」も「過去」になる。
 そして、わたしも、あなたも、「変化のまっただ中」にいる。
  
 わたしは今45歳なので、残りの仕事人生は20年たらずほどでしょう。しかし、見方をかえれば、来し方の「20年」と同じ長さの時間が、わたしには、まだある(元気であれば)。
  
 そういえば、僕は若い頃、「仕事人生は前半20年、後半20年」とうそぶいていました。
  
 前半20年は25歳から45歳。
 後半20年は45歳から65歳。
    
 残りの20年・・・変化のまっただ中にいながらも、自分の立ち位置、自分がやるべきことを、見失わないようにしたいものです。
   
 20年なんて20秒。
 まことに、人生は短い。
 そして人生はつづく
    
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