2021.8.30 08:31/ Jun
大学院の集中講義「人材開発・組織開発1」が終わりました。
今年は、昨年までの授業を大幅改訂(ほとんどゼロからつくりなおし)、はじめてオンデマンドビデオを用いたミックス型授業をつくってみました。
すなわち、
1.オンデマンドビデオによる一斉講義の配信
2.ZOOMによるリアルタイム・双方向授業
3. 学生によるケーススタディ(グループワークと課題発表)
を組み合わせ、
1. 人材開発・組織開発の基礎理論を学ぶ
2. 人材開発・組織開発のケース(事例)を学ぶ
ことを実現しようと画策しました。
その評価は、学生のみなさんにお任せしますが、自分としては、より密度をあげて理論・ケースを学ぶ場をつくることができたのではないか、と思っています。受講生のみなさんも、とても熱心に課題に取り組んでいただきました。
(2年生のみなさんは、去年学んでいないところは、コンテンツのお裾分けをさせていただきました。それぞれにご活用ください)
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大学教育の文脈では、コロナ禍以降、
1)知識の伝達を行う「一斉講義」の部分は、オンデマンド講義でおこない
2)実際の授業はZoomなどで双方向・インタラクティブにディスカッションさせ
3)学生には予習・復習で、課題解決を別途行わせる
などのことは、よく語られます。これまでよりも、インタラクティブに、濃密に学ぶ場を設計せよ、ということです。
これは口にするのは「簡単」です。
が、これは、「ヘタをうつと、大火傷をする授業手法」だな、と思いました。質保証を行いながら、こうしたコンテンツをつくるには、それなりの工夫と配慮がなければならないのです。
といいますのは、こうした複雑なカリキュラムには、ともすれば、下記の問題が忍び寄ります。
1) 何をオンデマンドビデオにして、何をリアルタイムZoomにするか、という「コンテンツの切り分け問題」
2)学生にはどのような発問・課題設定を行い、それを授業で、どのように盛り込み、フィードバックしていくかという「課題設定の問題」
3)バラバラになった各コンテンツを「のりしろ」でつないで(各コンテンツの意味的連関をつくる)、ひとつの授業として編み込んでいく「のりしろ・接続問題」
4)そして、1)から3)を行うために、常に「授業の全体像」を意識して、組み立てる「カリキュラム構築の問題」
などの問題です。
図にすると、下記のようなものです。
こうした複雑なカリキュラムでは、常に、全体像を意識しつつ、コンテンツと課題を切り分け、のりしろでつなぎながら、一貫した学習経験(カリキュラム)をつくらなくてはならないのです。これは図にすると簡単そうに見えます。でも、これを実際にやるのは難しい。各コンテンツの「尺」と「意味的連関」を考えながら、時間におさめていくのは、なかなか至難の業です。
これをうまくできないと・・・すぐに下記のような「阿鼻叫喚の事態」が発生するはずです。
すなわち、オンデマンド+リアルタイムZOOMを組み合わせて、質の高い授業をつくれるはずが、、、しかしながら「テンデバラバラのぶつ切りコンテンツ」の束ができてしまうのです。
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なんで、知識の伝達なのに、Zoomのリアルタイム授業でやんの・・・。時間の無駄じゃないのかなぁ・・・。
前の授業で、出された課題のフィードバックがまったくないんだけど・・・あの課題って必要だったの?
今回の授業と、前回の授業、どんなつながりがあんの? いまいち、ぶつ切りで、わかんないんだけど・・・
個別のコンテンツは理解できるけど、全体として、何を学んだのか、わかんない・・・
あべし。
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今回はじめて、こうした複雑な授業にチャレンジしてみて、これは、なかなかテクと経験・・・というよりも、「複数のひとびとによるチェックの目」が必要だなと思いました。
実際、わたしの場合は「今回がはじめての挑戦」だったので、これを、教員ひとりだけ開発することは難しかったように思います。100%不可能です。そこまで意識が回らない
ティームティーチングをさせていただいた藤澤先生、スタッフの加藤さん、鹿島さん、井上さんらのチェックやサポートを得ながら、シラバス、各コンテンツの細部をようやくまとめることができました。
複数の目に協力していただきながら、「のりしろ」「全体像」「切り分け」「課題」などの諸問題をチェックしていったように思います(事例ビデオの開発にもご協力いただきました)。みなさま、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました。
こうしたことを考えていっても、コロナ禍以降の大学教育が、このようにメディアを駆使して、質保証を行っていくのなら、やはり必要なのは、「教員と教員の協働」「教員と職員の協働」そして、「教員の準備と学生の主体的参加」だと思います。
コロナ禍以降の大学教育の一部は、
授業は「教員から提供されるもの」というよりも
授業は「教員・スタッフ・学生」で「ともにつくりあげていくもの」
になるのだと、わたしは思います。すなわち、端的にいえば「組織ぐるみ」のものになるのだと、わたしは感じるのです。
みなさんはいかが思われますか?
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あなたの周囲には、「テンデバラバラのぶつ切りコンテンツ」は、あふれていませんか?
あなたの周囲には、のりしろがなく、全体像がボンヤリとした「オンライン授業」があふれていませんか?
そして人生はつづく
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相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
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http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
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中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約34000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
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