2021.8.24 07:23/ Jun
わたしたちの生きるリアル社会は、常に課題解決の連続です。そして、シャバにあふれる「課題」を解決するための「メソドロジー(方法)」のことを「課題解決法」といいます。
わたしの勤める立教大学経営学部では、大学1年生のうちから、民間企業の皆様とコラボ授業をさせていただき、
1)企業のひとびとも悩む真正の課題(ホットイシュー)を
2)学生たちがチームになって課題解決を行い
3)発表・提案を行う中で
4)自らのリーダーシップを高める授業
を実施しています。
わたし自身は、現在、大学院拡充の件もあり(そちらの仕事をメインにしています)、この学部の授業には関与していません(かつては関わっておりました)。舘野泰一先生や、田中聡先生、宇田武文先生など、多くのパッションあふれる先生方、小森谷祐司さん、司村千尋さんなど、事務局のみなさん、また学生スタッフによってプログラムは運営されています。
その公開講演会が、下記にありますように9月3日に開催されるようです。ぜひ多くの皆様にご参加いただければと思います(無料・オンラインです)。
大学と企業がコラボして、どのような授業が生まれ、どのようなインパクトを産みだしているのか、お聞きいただきたいと願っております。
公開講演会「立教BLPカンファレンス2021——企業と大学のコラボレーションが生み出す新たな学び」(9月3日・無料・オンライン)
https://www.rikkyo.ac.jp/events/2021/09/mknpps000001o5y2.html?fbclid=IwAR1Y-R0N7Es5xsY3JHLjPP6VzwVwy5CNcNrBJHIdLTJH2YdzhOBD9jWZ-WA
今年は、パーソルホールディングス株式会社の木下学さま、カルビー株式会社の見目泰彦さま、株式会社TBSホールディングスの西岡武嗣さまにもご登壇いただけるとのことです。大変ありがたいことです。心より感謝いたします。
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ところで、学生あるいは大学院生に「課題解決を教える局面」で、もっとも難しいことは何かと申しますと、それは2つございます。
ひとつは「課題を決めること」
より具体的にいえば、課題解決の初期プロセスにおいて「自分たちが、何を問題として、何が課題であるかを、自ら決めること」に困難を感じます。
学生たちは、現状と理想を決めたうえで、それをはばむものがいかなるものなのかを分析し、すべて並べることが難しいのです。
ついつい、
「ま、これが課題ってことでいんじゃね?」
「いいね」
「いいね」
とか
「じゃ、これが絶対に、課題だよね?」
「それな」
「それな」
になってしまいます。
要するに、課題解決のプロセスにおいて、課題を一択で決めてしまう「思いつき王子」がどこからともなくやってきて、思いつきで意志決定を行ってしまうのです。
本来ならば、課題と思えることは網羅的に「すべてテーブルのうえに並べて」、どこにレバレッジ(注目)すれば、どの程度のインパクトを与えられるかを考えなくてはなりません。
しかし、この「すべてテーブルに並べる」ということに苦手を感じる学生が多いものです。
問題設定・課題設定ができてしまえば、課題解決プロセスの「6」はおわったも同然です。しかし、これが学生たちの伸びしろです(大学院生のみなさんもですね・・・)。
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学生が陥りがちなもうひとつの落とし穴は、「よき解決策つくること」です。これは課題解決プロセスの「3」くらいをしめます(残りの1はデリバー・自分のオーディエンスにいかに伝えるかということでしょう)。
そして、ここでも「思いつき王子」に加えて、もうひとりの人物が登場します。いわゆる「思い込み姫」です。
要するに
「この解決策、ぜったいに、うまくいくって。ワンチャン、やってみようよ」
「いいね」
「いいね」
「この解決策、いったく、これしかないっしょ」
「それな」
「それな」
になってしまいます(泣)。
つまり、ここでも「思いこみで解決策を一択しか提案しない姫」がどこからともなくやってきて、思いこみで解決策をパコーンとひとつだけ決めてしまうのです。
本来ならば、経穴作と思えることは網羅的に「すべてテーブルのうえに並べて」、どこにレバレッジ(てこ入れ)すれば、どの程度のインパクトを与えられるかを考えなくてはなりません。
しかし、この「すべてテーブルに並べる」ということが苦手なのです。
かつて、ドラッカーは、下記のような名言を残したといいます。
問題分析によって「解決案」が、「ひとつ」だけしか見つからなければ、その解決案は、あなたの「先入観」に「理屈」をとってつけたものにすぎない
(ピーター・ドラッカー)
網羅的に考える
すべて並べる
ということは、かくのごとく課題解決の基礎中の基礎なのですが、それがなかなか難しいのです。
しかし、リアル社会では、それでは困ります。
目の前に押し寄せる大変重大な危機や局面に対して、「単体の施策」だけで乗り切るのは、シャバ(リアル社会の課題解決)では、実に困難なのです。
シャバの課題解決は、常に「総力戦」
すなわち、すべて解決策を並べること。場合によっては「プランB」「プランC」を考えること。これがもっとも重要なことなのですが・・・。でも、シャバでは、実に「竹槍で闘え」的な課題解決が多いことか。。。
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ちなみに、なぜ「思いつき王子」と「思い込み姫」が、「思いつき」や「先入観」だけで物事を決めることができるのか。それは「個人の資質」によるものでしょうか(思いつき王子と思い込み姫がイカれているからでしょうか?)。
いいえ、違います。
彼・彼女らが「思いつき」や「先入観」だけで物事を決めることができるのは、実は、「ソーシャルなやりとりの結果」なのです。だって、そうでしょう。彼 / 彼女の先入観に満ちた事柄は、「社会的」にやりとりをされ、みなで決定されているのですから。
要するに、彼らのまわりに「いいね、いいねピーポー」と「それなパーソン」という「何も考えずに、面従腹背」する「おとり巻き」がいなければ、こうしたことは起きないのです。だから「同罪」。
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今日は課題解決のことを話しました。
あなたのまわりには「思いつき王子」と「思い込み姫」と「いいね、いいねピーポー」が「残念な課題解決」を行っていませんか?
そして人生はつづく
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新刊「中小企業の人材開発」(中原淳・保田江美著、東京大学出版会、2021年)マニアックなガチ・学術研究書なのですが、発売10日で重版出来となりました。ありがとうございます。中小企業の人材開発メカニズムに接近を試みています。どうかご笑覧くださいませ!
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【お申し込みはこちら!】2021年9月 リーダーシップ開発コース説明会開催・申込み方法について
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なお、在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
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拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
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【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約34000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
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