NAKAHARA-LAB.net

2021.8.5 08:12/ Jun

高齢になっても「学び続け」生涯現役でいるために必要な「たったひとつのこと」とは何か?

問1「あなたは、何歳まで働きたいですか?」
問2「あなたは、何歳まで働くことができると思いますか?」
     
  ・
  ・
  ・
    
 みなさんは、こういう質問が投げかけられたとしたら、どうお答えになるでしょうか?
   
 僕だったら
   
問1.何歳まで働きたいか?
「生涯現役、ずっと働いていたいですね」
      
問2.何歳まで働けると思うか?
「自分の頭がついていけるまで・・・。70歳くらいまでは、何とかついていきたいですね」
    
 と答えます。
      
 つまり、「前者の問い」に対する答えと比較して、「後者の問い」に対する答えの方が、
    
「ちょっぴり自信がなくなる(笑)」
「ちょっぴり短くなる傾向がある」
   
 ように思うのです。
   
 多くのひとびとは「長く働きたい」ないしは「長く働かざるをえないだろうな」とは思うけれど、自分の身体能力や認知能力が、それについていけるかどうかは、少し不安。そんな風に考えておられるのかもしれません。
  
 もちろん、これは僕のような職業で、かつ、僕の場合だから、こういう答えになるのかもしれません。業種、業態、組織の人事制度によっては、まったく答えがありえます。
 
  ▼
  
 Beier, M.E.(2021)「Life-Span Learning and Development and Its Implications for Workplace Training」という論文を読みました(Current Directions in Psychological Science)。
   
 この論文は、いわば「生涯働くことにまつわる研究知見」を短くレビューした論文です。
  
 論文に曰く、
    
 これまで多くの研究は「生涯、学習できること」よりも「加齢にともなう衰え」ばかりに注目してきたといいます。
      
 もちろん、ひとは高齢になれば、能力・意欲が加齢にともない変化することはありえます。
   
 しかし、ひとは高齢になったとしても「自分の予備知識」や「自分の興味」に沿った内容が示されれば、十分、学習できるのだ
  
 と主張します。
  
  ・
  ・
  ・
   
 すなわち、ひとが生涯学び続けるためには、「自分の興味関心」に沿ったもので、かつ、これまで「過去に様々な経験」を積み重ねてきた「自分の土俵」が必要ということですね。
   
 そして、この「土俵」の「内部」のことであれば、ひとは、高齢になっても、十分、学び続けることができる。
    
 また、妄想力を高めて考えますと、こうもいえるのかもしれません。
    
 ひとは、高齢になれば、まったく新しいことを「ゼロ」から積み上げていくのは、難しいかもしれない。しかし、年齢が高くなる「前」に、「自分の土俵」をもててさえいれば、職場のなかで継続的に自らのスキルを高めていくことはできる。
   
  ・
  ・
  ・
   
 こう考えていきますと、最大の課題は、
  
 高齢になった「あと」
  
 ではなく
  
 高齢になる「まえ」
  
 だということになります。だって、高齢になった「あと」の持続可能性は、高齢になる「まえ」に決まっているのですから。
    
 すなわち、生涯、継続的にスキルや能力を高めていくためには、高齢になる「まえ」に「自分の土俵を確立しておかなければならない」。
     
 こう考えていくと「最大のリスク」は、こういう状態。
   
1.ミドル・シニアにさしかかる年齢になっても、
2.わたし、何やっていいかわかんないんですよね
3.知的好奇心も、興味もさしてないんですよね
4.今まで、なにひとつ自分で決めずに
5.ただやらされて、会社に居続けただけですから
    
 という状態に追い込まれている「土俵なしシニア」なのかもしれません。
  
 ▼
  
 今日は「ひとが高齢になっても学び続ける」ためには何が必要か、ということを、やや「妄想」を含めて考えました。
  
 ・
 ・
 ・
  
 あなたは、シニアになる前に「自分の土俵」を決められそうですか?
  
 あなたには、生涯、関心をもっていられる「自分の土俵」がありますか?
  
 そして人生はつづく
   
 ーーー     
      
【立教大学大学院で大学院生しませんか?】
 立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、経営学を基盤にしながら、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実践できるアカデミックプラクティショナーを養成しています。別名、「ひとづくり・組織づくりの大学院」です。
 授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。
   
 リーダーシップ開発コースの入試説明会を2021年9月18日(土曜)午前中に開催させていただきます。来年2月の入試・コースのご説明をさせていただきます!3期生の募集になります!ご興味がおありの方は、ぜひ、お申し込みくださいませ!
   

   
【お申し込みはこちら!】2021年9月 リーダーシップ開発コース説明会開催・申込み方法について
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2021/20210730/
   
 なお、在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
  
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
   
  ーーー
      
拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
      

    

      
  ーーー
  
【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
  

新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
  
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)

   
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

     
 ーーー
      
拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
    

    

      
 ーーー
      
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約33000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

あなたの組織は「社員の主体性を喪失させる仕組み」が満載になっていませんか?:うちの社員には「主体性」がないと嘆く前にチェックしておきたいこと!?

2024.11.25 08:40/ Jun

あなたの組織は「社員の主体性を喪失させる仕組み」が満載になっていませんか?:うちの社員には「主体性」がないと嘆く前にチェックしておきたいこと!?

2024.11.22 08:33/ Jun

最近、僕は何をやっているのか?そうね、いろいろやってます!?

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?