2021.6.12 08:32/ Jun
あなたの組織では、パワハラが「感染拡大」していませんか?
あなたの組織では、パワハラを放置して、未来を潰していませんか?
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人材開発の世界では、人間の「学習」とは「正の方向」にも「負の方向」にもひらかれています。
多くの人々・組織・社会にとって「望ましいことを学ぶ」のが「正の学習(望ましい学習)」であるならば、「誰にとっても迷惑極まりないものを学ぶ」という「負の学習(学んではいけないものを学習すること)」も、この世には、立派に存在するということです。
今日のテーマであるパワハラ(パワーハラスメント)も、そんな「負の学習」の典型例かと思います。「負」が極まりすぎて、もはや、号泣だわ。
端的に、人材開発の観点から申し上げますと、
パラハラは「学習された結果」である
ということになります。
今日は、このことを考えてみましょう。理論的考察ですので「机上の空論」ですが、たかが理論、されど理論。シャバで起こることの「大枠」は、描き出すことができるはずです。
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不肖・中原がズズイと分析(というか妄想)するに、パワハラが人々に学ばれ、それが広がっていくメカニズム・・・すなわち「学習メカニズム」は、下記の3つのレベルから、成立するように思います。少なくとも理論的には・・・
第一のレベルは「パワハラされるという経験と観察学習」
第二のレベルは「フィードバックがないことによる学習」
最終メカニズムは「組織レベルの共有とルーティンの定着」
です。
これを順に見ていきましょう。
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まず、第一のレベルは「パワハラされるという経験と観察学習」です。これは、「今、パワハラを行っている本人」が、昔々・大昔は「他の誰かにパワハラされた経験」ないしは「他の誰かが行っているパラハラを見た経験」があることが多い、ということです。
すなわち、今、「パワハラ」をしている本人は、過去のどこかで「他の誰かが行っているパワハラ」を事前に「観察学習」ないしは「経験学習」しているのです。
そこで得られる「優越感と自己陶酔」、そして「相手に与えられる精神的苦痛」という「負の成果」も含めて、パワハラ実践者は、「かつて自分がパワハラによって抑圧された経験」、「他人のパワハラを観察して学ぶ経験」を有していることが、実に多いのです。
この意味において、
パワハラとは「世代を超えて継承されるもの」であり「学習されてしまうもの」
ということになります。
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第二のレベルは、かつて第一のレベルにおいて「パワハラされる側」ないしは「他者のパワハラを観察していた人物」が、長い年月をへて、「パワハラする側=加害者側」にまわってしまう瞬間におこる学習です。
彼 / 彼女は、ふとした折りに、他者に対して、仕事のなかで感情を爆発させる経験をもちます。感情どかーんI 感情、ぶちまけ、ぶちまけ、バコーン!(泣)
そのとき、ついつい、かつて自分が経験したり、観察していたパワハラを、今度は、自らが「当事者」として行ってしまう。
あんなに自分はパワハラで苦しめられたり、嫌な思いをしていたのにもかかわらず、ついつい、それを「自ら実践していく側」に回ってしまうのです。これは「被害者が加害者にかわる瞬間」です。
ここで周囲にとって、本当に大切なことは「その瞬間に思いとどらせること」です。本当に、この瞬間こそが「はちゃめちゃ重要」なのです。なぜなら、それは残された「最後のフィードバック機会」だからです。
この瞬間に、組織のなかの他の誰かが、気を利かせて
「Aさん、それって、パワハラと解釈されるかもよ」
「Bさん、そういう言い方は、NGだよ」
「Cさん、それは、言い過ぎだよね」
とフィードバックをしてあげられれば、それでいいのです。それがあれば、彼 / 彼女は「救われる」かもしれない。そこで思いとどまることもあるかもしれない。
しかし、たいてい、パワハラが横行する組織は、このフィードバックが「存在しない」か「機能しません」。誰もが知らんぷりで、パワハラを容認し、敢えて、とがめることもしません。なぜなら、パワハラが横行している組織では、「余計なことを」すれば「誰もが被害者になりうる」可能性を有しているからです。
誰かのパワハラをとめにはいって、「パワハラ野郎」に目をつけられ、今度は「自分自身がパワハラの餌食」になってしまっては元も子もありません。
また、上司も「くそったれ」の場合は、彼 / 彼女も「パラハラ」をなかったことにします。あるいは、見て見ぬ振りをするはずです。なぜなら、職場に波風たてれば、面倒くさいからです。
この傾向は、パワハラをしている人材が「ハイパフォーマー」であったときはさらに深刻になります。上司は8割ー9割の確率で「見て見ぬ振り」をするか、「それって、ちょっぴり強い指導だよね」と小ボケをかますはずです。なぜなら、パワハラを言挙げして、成果を出せる部下がいなくなると困るからです。職場の成果を出すのが上司の仕事なので、成果がだせるなら、パワハラのひとつや、ふたつ、目をつぶるのです。
ですので、パワハラ組織では、パワハラに対するフィードバックは「存在しない」か「機能しない」ことが多いのです。
そうしますと、ここに「悲劇」がおこります。ついついパワハラを行ってしまった本人は、偶発的に、たまたま行ってしまったパワハラが「人々から容認」されたと勘違いし、これを「学習」しはじめます。 何を勘違いしてんだか、これが「パラハラ指導が、ノーマルだよね」と学習してしまうのです。
また、悲劇的なことに、この「偶発的なパワハラ」によって、さらに「パワハラした相手がシャキシャキとして、自分の思い通りに動き始めた」とします。そうなると、さらに「事態」は深刻になります。
パワハラによって、部下がシャキシャキ動き、成果が出たんです。
パワハラ、いいじゃない! もう最強!
ちょっぴり強い指導かもしれないけど、何が悪いの?
手っ取り早くて、最高じゃない。
てことになるのです。
かくして、パワハラに味をしめたひとびとは、
パワハラは「やってはいけないもの」ではなく「効果的なマネジメント手法」だ勘違いして「学習」してしまう
のです。
実際、パワハラを行っているひとというのは、多くの場合、自分のパワハラには「気付いていません」。そんなケースばかりです、シャバでは・・・・(泣)。
なぜなら、誰も、その行為は職場のみんなに「容認」されているからであり、フィードバックがかかっていないからです。組織のなかの誰ひとりとして「それがパワハラである」というラヴェリングを行わないために、本人は、それを「効果的なマネジメント手法」だと思いこみう、学んでいるのです。
かくして、パワハラは繰り返されます。いったん「学習されたパワハラ」は、そう簡単には学習解除(Unlearning)はできません。
だって、くどいようですが、本人にとって、パワハラは「効果的なマネジメント手法」なんです。
パワハラしとけば、手っ取り早く、部下が動き、成果がでるのです。
これを「実践しない」という選択肢はないでしょう???
だから、解除はなかなかできません。
当たり前です。成果がでるんですから。
周囲からのお咎めもなし、なんですから。
もう、おわかりでしょう。
多くの場合、パワハラとは、「今日、突然に引き起こされるもの」ではありません。
パワハラとは、繰り返し、繰り返しなされてきた「負の学習の成果」です。よって「パワハラが発覚する」とは、組織の内部でひそかに「繰り返されてきた暴力」が、今日、たまたま、明らかになっただけです。
だから、多くの場合、パワハラとは「常習犯」です。
「パワハラが発覚する」ということは、「いつもいつも、組織のなかで繰り返されたパワハラ常習犯が、ヘタをうって、ひょんなことから、たまたま捕まっただけ」です。
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最後のレベルは、個人の問題行動であったパワハラが、組織内に、いわば水平に「感染」してしまうこと、すなわち、パワハラが「組織学習(組織のなかで、ひとびとに共有され、定着してしまうこと)」されていく段階をさします。
もうこうなってしまうと、「パワハラの感染拡大」は、なかなか、とめられません。
パワハラを「効果的なマネジメント手法」と勘違いしている「恫喝・勘違い野郎」が、ここ、あそこに存在しているので、なかなか根絶は難しいのです。
恫喝屋は、すぐに「自部門に新たな恫喝屋」を生みます。
恫喝屋は、やがて部門の境界をこえ、「他部門に恫喝屋」を生みます。
恫喝屋は、時空をこえて、「次世代の恫喝屋」を生みます。
また、場合によっては、そういうパワハラ・恫喝屋の引き起こす「悲劇」が「武勇伝」のように語られていたりします。そうなると、パワハラは、ひとびとの「ストーリーテリング」によってさらに強化されていきます。
あなたの組織に、パワハラが「武勇伝」として語られていたら、それはかなり「赤信号」だと思ってください。その組織は、ひとびとのストーリーテリングによって、パワハラが容認されつづけているのです。
かくして、パワハラは、組織の各所に、人を動かすための「ルーティン(決まり切った手法)」として蔓延していきます。
ここまできてしまえば、パワハラをゼロにする手法は、もう、そう多くはありません。
まずは、よほど強力な罰則、いわば「ワクチン」のようなものが「新規・積極・断固たる覚悟で導入」されることです。
パワハラをしたひとびとが、どのように罰せられるかを他の組織メンバーが目にしたとき、組織は、パワハラのルーティンから抜け出すチャンスを得ます。しかし、たいていは、そうしたワクチンが導入されるのは、「被害者が多数出たあと」です。もう、多くの犠牲者が組織をあとにしているはずです。
もうひとつは「組織に入ってくる、新規参入者がいなくなるとき」です。
後者でいうと、そういうパワハラ組織に悪評がたち、新たに若い世代が新規参入してこなくなるときに、パワハラは根絶されるでしょう。というか、なくなるんです。「組織が沈没します」ので。
要するに、組織のなかに優秀なひとが入らなくなるので、だんだんと組織は回らなくなります。そうなってくると、組織が成果をあげられなくなります。
かくして、パワハラウィルスは、行き場を失うのです。くどいようですが・・・・組織の沈没とともに(合掌)。
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今日は、なぜ、パワハラが生まれるのかを、「学習」という観点から、ゆるゆると書いてみました。このように、いったん組織のなかに感染拡大してしまったパワハラをなくすのは、非常に骨がおれます。
できるのであれば、なるべく早い時期に、早期の段階で、フィードバックを行い、パワハラが組織内に感染拡大しないようにすることが一番懸命だと思われます。
また、もうおわかりだと思います。
パワハラとは、極めて「ソーシャルな病い」なのです!
パワハラを行うのは「個人」ですが、そうした個人は「社会的に構築」されています。組織の多くのひとびとが、おそらくはパワハラの成立に関与しているはずです。
そしてね、、、まだ「パワハラなんて、たいしたことねーよ」と思っている方のために、パワハラを放置することが、中長期に、どれだけ組織や個人に「害をもたらすか」についても、最後に確認しましょう 。
組織的観点からいえば、たとえば、パワハラを放置し、それがきっかけに1名離職すれば、彼 / 彼女に投資した採用投資・人材育成投資は、すべて「無」に帰します。ひとがいなくなれば、通常は、採用をまたかけますよね。また採用費用がかかります。これを繰り返していくと、すぐに猛烈なコストが組織外に流出していることに気付くはずです。組織にとっては、実は、莫大な被害です。
悲劇的なことに、たいていの場合、パワハラは「常習犯」です。被害者は1名ではすまないのです。たいていはね・・・。経営の観点からすれば、パラハラは放置してはいけません。それは百害あって一利なしです。パワハラは「組織の負債」です。
個人に対しても「甚大な被害」です。
どんなに優秀なひとでも、どんなやる気のあるひとでも、パワハラを前にしては「無力」なものです。なぜなら、それは「点」ではないから。それは「ソーシャルに構築された病い」であり、どうせ「みんな共犯だから」。それは「絶望」をもたらします。そのことが、個人のメンタルにどんな被害をもたらすか。
わたしは人材開発の専門家として、「パラハラの根絶」を願っています。
なぜなら、それは「百害あって一利なし」だからです
しかもパワハラは「学習された結果」であり「実は、他者のフィードバックや勇気あるひと言で、防ぐことができるから」です。
本記事に見るように、パワハラは長い時間をかけて、ひとびとの負の合意、フィードバックレスによって強化され、学ばれていくものです。ならば、なるべく早いうちに目をつみましょう。手遅れになる前に。学習メカニズムがレベル1、レベル2、レベル3と進行すればするほど、解除が難しいものなのです。
パワハラは「予防」に限ります。
パワハラは「対処」に回るころには、たいてい「手遅れ」なのです。
あなたの組織では、パワハラが「感染拡大」していませんか?
あなたの組織では、パワハラが「学習」されていませんか?
あなたの組織では、パワハラを放置して、未来を潰していませんか?
そして人生はつづく
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