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2021.4.21 08:22/ Jun

ベンツ1台分の自己投資のすえにたどり着いた「プレゼンテーションのコツ」とは何か?

 先日、PCのなかで「ファイルの捜し物」をしていたら、とんでもないものが引っかかってきました。
   
 それは今から23年前の、1998年に行った、僕の、はじめての学会発表のファイルです。
  
 当時の学会発表は、パワーポイント+プロジェクター投射ではありませんでした。透明なOHPシートに、研究室のプリンタで文字を印刷して、それを1枚1枚OHPにかかげ、光で投射していた記憶があります。そのときのファイルを23年ぶりに目にしました。
  
 懐かしさがこみあげると同時に、当時のことを思い出し、「苦笑い」がこぼれました。
  
  ▼
  
 僕は、なぜ23年前のファイルを見つめ「苦笑い」がこぼしてしまったのか。
   
 それは、当時の僕が「プレゼンで話すのが苦手」だったからです(笑)。早口で、独りよがりで、何しゃべっているのか、わからない。
  
 当時、あるひとから、こう言われたことを思い出します。
  
「中原君は、難しいことをよく知ってるけど、話すのがイマイチだね・・・プレゼンは、あんまりうまくないよね。ハハハ」
  
 ハハハじゃねーよ(笑)。
    
 自分的にはこの言葉が結構ショックで、以来、プレゼンを克服するべく、奮闘を繰り返してきました。
     
  ▼
    
 まず、僕が取り組んだのは、自分がリスペクトできる他人(先輩)のプレゼンの技を徹底的に観察することでした。
  
 どのようにプレゼンを組み立てているのか?
 どのように論理展開をしているのか?
 どのように笑いをとっているのか?
   
 徹底的に「観察」を繰り返し、しだいに「謎」がとけてきました。観察を繰り返し、それを自分なりに実践して「場数」をつみました。次第に、僕は、先輩がやるように、プレゼンを行うことができるようになってきました。
    
 もちろん、自分のスキル向上に対して「自己投資」もしました。
 一番、投資を行ったのは、米国留学中だと思います。留学中、僕は、様々な人材開発系のカンファレンス、ワークショップ、セッションに「参加者」として参加しつづけました。
     
 留学の前と後で、虎の子の貯金+奨学金は、すべて使い果たしました。
 清水の舞台から飛び降りる覚悟で、僕は、全米どこにでも行きました。宿泊費+飛行機代ふくめれば「ベンツ1台」くらいは購入できるくらいの費用を、自分に「投資」したと思います。
   
 人材開発を専門にするなら
   己が登壇できなきゃならない。
  
 人材開発を専門にするなら
   人材開発ができなきゃ説得力が無い。
  
 当然プレゼンも、ファシリテーションも
   できなければならない
  
 当時の僕は、企業の方とのお付き合いで、そのことを痛感しました。
  
「先生は、人材開発が専門なんだって?じゃあ、こういうときに、どう教えていいか、先生がやって見せてくれ」
  
 ある会社の経営者の方に、そう言われたことを思い出します。はやく一人前になりたい、という思いが、僕を駆り立てていました。
   

   
  ▼
   
 10年程度の紆余曲折をへて、僕が、自分なりのプレゼンのスキル、スタイルを確立できたのは30代中盤くらいだったように思います。まだまだ修行中ですが、なんとなく、自分のスタイルが決まってきたのがこの頃。
      
 興味深いのは、ここからです。
 といいますのは、結局、僕のプレゼンスタイルにもっとも寄与したのは、なんだったか?を考えると、実は、答えは、「自分から遠いところ」にはなかった、ということになるのです。僕のプレゼンを改善した最大の要因は「一番近いところ」にありました。
  
 先輩の技も、役に断ちました。
 ベンツ1台分くらいの投資も、おそらく役に立ちました。
(プレゼンだけにベンツ1台かけていたわけではありません。とにかく、人材開発の知識・スキルのすべてを吸収することが、僕の目的でした)
     
 しかし、僕のプレゼンスタイルを最も決定づけたのは、自分から「遠いところにあった、他者がつくったノウハウ」ではありませんでした。
  
 それは何か?
   
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  
 それは
  
「自分がふだん使っている言葉づかいのまま、自然体で登壇して、おしゃべりすること」
   
 です。
  
 自分に「もっとも近いところ」に、僕が求めていた答えが、ありました。
 たとえ1000人の前で登壇したとしても、「自分が、ふだん使っている言葉で、いつものように、話せればそれでOK」なのだ、ということになります。
    
 は?
 うそでしょ?
     
 と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、これは本当なのです。
    
 それまでの僕は、プレゼンをする際、「いつもとは違ったやり方」「自分がふだん使っていない言葉・仕草」を「敢えて外部から」身につけ、それを利用して役割演技をしたほうがいいのだと思っていました。
     
 もちろん、そういうテクニックが役立つところもあるのです。プレゼンとはある意味で、パフォーマンスであり、演劇であり、役割演技です。そういうところもあるのです。プレゼンは「力技」「寝技」を駆使しなければならないところもあります。
    
 しかし、一番重要なことは何か、と問われれば、僕は、迷うことなく、こう答えます。
    
「いつも使わない、よそ行きの言葉」ではなく
「自分がいつも使っている言葉」を使いなさい!
     
 それが一番難しい、といったら元も子もないのですが、それが僕の行き着いた「境地」でした。よそ行きの言葉を使うから、緊張するのです。いつも使っていないから、うまくいかないのです。ふだんと同じ言葉づかいで、話しかければいいのです。ただし、普段と同じ言葉づかいで、すっと他者の前にたつのは、一番、難しいかもしれない。妙になれなれしくなったりしても、ダメ。安っぽくなってもダメ。意志をもって「いつもの自分通り」で「いること」なのです。
    
 答えは「自分の最も近いところ」にある。
 それは十数年、苦闘してつかんだ結果だったように思います。
  
 なんだ・・・「そのまんま」でよかったんじゃないか(笑)
  
(もちろん、ふだんしゃべっているように、プレゼンをするためには、それなりのテクニックも必要です。それが一番難しいというところはあるでしょう。)
  
 ▼
  
 今日は、朝っぱらから、思わず昔話をしてしまいました。
 ゼミでは、よく学生などから、「どういう風にプレゼンすればいいのでしょうか?」という質問を受けたりします。
   
 そのときごとに、彼らの行うデリバーにアドバイスをしています。が、心のどこかで、いつも思っていることは、
  
 いつもの君の言葉づかいで、話せばいいんだよ
 自分に一番近いところに、答えがあるんだよ
  
 と思ったりしています。
 
 逆にいうと、だからいって「ふだんから何もしなくていい」わけではないのです。「普段から、意思をもって、自分の言葉を選び、届けること」を常に実践し続けなければなりません。
 その内容を、あのひとに伝えるときに、その言葉づかいでいいのか。あの内容を、あの子たちに伝えるときに、相手は受け取ってくれるだろうか。この順番で、物事を話すより、あえて、こちらを先にした方が「すっと」入るのではないだろうか。「自分の言葉を選び、届ける」ということは、意思の力です。
  
「いつもの言葉」以上のプレゼンはできないよ
「いつもの言葉」を磨きなさい!
      
  ・
  ・
  ・
     
 あなたは、どんな言葉で、プレゼンをしていますか?
 あなたの求めている答えは、あなたの最も身近にあるかもしれませんよ。
   
 そして人生はつづく
   
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