2021.4.7 07:14/ Jun
わずか10年前くらい前まで、我が国では「中途採用者の組織適応・活躍に関する研究」は、非常に数が限定的でした。
新卒一括採用・長期雇用が前提とされてきた我が国では、「転石、苔を生ぜず」という言葉に代表されるように、中途採用者はどちらかというと「異端」であり「例外」。
そもそも、それほど数が多くなかった中途採用者を、いかに組織適応させるか、など、テーマとして、それほどニーズがない。ゆえに、中途採用者・転職者をターゲットをしぼった組織研究があまり生産されることがなかったのかもしれません。
最近、尾形真実哉先生(甲南大学教授)が上梓なさった「中途採用人材を活かすマネジメント」を読みました。「中途採用者の組織適応」を長年にわたり研究なさってきた著者が、その研究をまとめた書籍です。
一読して、この本は、おそらく、長いあいだ、多くの人々に読み継がれる、この分野の定番書になるのではないか、という感想を持ちました。私自身が勉強になりましたし、おすすめの一冊です。
下記に目次を示します。
第1章 中途採用者の「組織再適応課題」は何か
第2章 人的ネットワークの重要性と効果的なコミュニケーション
第3章 組織内人的ネットワークのつくり方、広げ方
第4章 中途採用者の適応エージェントの性質
第5章 中途採用者の能力を引き出す職場環境をデザインする
第6章 オンボーディング施策の現状とその効果
第7章 組織再適応をどう促進するのか
補 章 中途採用者の組織再適応施策チェックリスト
一見してわかるとおり、中途採用者の適応に関するマネジメントが、人的ネットワーク、職場環境など、さまざまな観点から考察されています。オンボーディング(On Boarding : 組織に新たに参入してくるひとを、同じ船のメンバーとして早期に適応させること)の具体的施策についても、言及されています。ここまで網羅的にこの問題を扱った類書は、いまだ、存在していないのではないか、と思います。
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中途採用者の課題については、僕自身も、かつて2012年に著書「経営学習論」において一章をさき「組織再社会化」の観点から考察・実証研究を行いました。しかし、扱えたといっても、わずか一章。今回の尾形先生の本は、それをさらに彫り込み、考察されていますので、おすすめです。
最近では、僕もパーソル総研・小林祐児さんらと著した近著の「働くみんなの必修講義 転職学」では、従来の「組織内部で実践されるオンボーディング(クローズドオンボーディング)」ではなく、「オープンオンボーディング」という「謎」に満ちた概念も、共同研究の成果として提唱しています(これはまだ仮説であり、その検証には、さらなる実証研究が必要です)。
オープンオンボーディングとは、ひとが「組織の外で、自組織のことを他者に語ることを通して、自組織の人間になっていく(組織適応)していくプロセス」を描いたものです。
皆さんも、これまで、組織の外の他社のひとびとに対して、
「うちの会社はさ・・・・なんだよね」
とか
「えっ、うちの組織は違うなぁ・・・うちの組織は・・・だよ」
とかいう語りを、一度くらいは行ってきたのではないでしょうか。
ひとは、こうした語りを通して、組織外に「うちの組織」と「非・うちの組織」の境界をつねにつくりつづけます。「うちのホニャララ」という語りは、「うちと外」の境界をつくり、「うち」を本人に意識化させます。
すなわち、「非・うちの組織」の人々との出会いを通して「うちの組織のひと」というアイデンティティを高めていくことが「オープンオンボーディング」です。だから、少し逆説的ではありますが、ひとは、組織適応を為したければ、組織の外で、異質なものとの出会いを必要とするのかもしれません。
いずれにしても、興味深いことですね。
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中途採用者に関する研究、転職に関する研究が盛り上がってきました。わたしとしては、非常にうれしいことです。今回の尾形先生の著書がきっかけで、より多くの中途採用研究が生まれることを願っております。
そして人生はつづく
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また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
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研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
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拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
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【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約32000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
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