2021.4.5 08:30/ Jun
対面授業では「ノリと勢い」に甘えることができるのかもしれない!?
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週末は、立教大学大学院・経営学研究科・リーダーシップ開発コースの新入生の皆さんのオリエンテーションが開催されました。
「ひとづくり・組織づくりの大学院(リーダーシップ開発コースの俗称)」には、今年、22名の大学院生の皆さんが入学なさり、新たに、経営学・人材開発・組織開発にまつわる学びを深めることになりました。誠におめでとうございます。
僕も担当している授業「リーダーシップウェルカムプロジェクト」も、週末、キックオフでした(石川淳先生、藤澤広美先生との共同授業です)。
リーダーシップ開発コースのすべての授業はフルオンラインで受講可能です。
しかし、初回授業のみ、いわゆる「対面授業(正確にはハイフレックス授業)」の形式で行われました。
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久しぶりにオンラインの世界を抜け出し、リアルに「対面授業」をしてみて、改めて気づいたことがあります。
それは下記の3点です。
1.人が動くのは時間がかかる
2.オンライン授業とは授業者が「強大な権力」をもっている
3.対面授業はコンテンツが詰め込める+早く進められる
今日は、これらをもとに、対面授業のことについて改めて考えてみましょう。
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まず、「1.人が動くのは時間がかかる」ですが、これは、そのものズバリです。
とりわけ、グループワークでチームを組んでもらう、話し合いを進めてもらうためには、人がリアルに動かなくてはなりません。
しかし、これが、時間がかかる。
まず、この時間が、授業者としては、非常に気になりました。
オンライン授業であれば、ブレークアウトセッションにしてしまえば、すべてのひとがただちに集まり、真正面を向いて整列します。しかし、対面授業ではそうはいきません。よっこらしょと腰をあげ、机と椅子をただし、真正面を向いて話し合いをするまでに、かなり時間がかかるのです。
このことから「2.オンライン授業とは授業者が「強大な権力」をもっている」という命題が得られます。要するにオンライン授業とは「ボタン一つで、学習者の行動を、強力にコントロールできる」授業だったのです。
ブレークアウトセッションのボタンを押せば、すべての学生をただちに厚め、真正面を向いて整列させることができる。マイクやカメラをONすることも、オフすることもできる(声を出させることも、静かにすることもできる)。
ふだん、オンライン授業をしているときには、このことには気づきませんでしたが、対面授業を実践してみると、その特質が浮かび上がってきます。
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しかし、オンライン授業が授業者に強大な権力があるからといって、コンテンツを素早く進めることができるわけではありません。
昨日やってみた感覚では、「3.対面授業はコンテンツが詰め込める+早く進められる」感覚がありました。
オンライン授業であれば、もっとゆっくり進めるところを、対面授業では、ぶっ飛ばして進むことができる。
しかし、これには「からくり」がある気もいたします。
といいますのは、
対面授業というのは、その場に生まれる「ノリや勢い」に甘えることができる
ような気がするのです。
対面授業では、教員は、その場で、身体を大きく動かして、パフォーマンスを行います。アイコンタクトを行い、ときどき冗談もいれつつ、学生とのあいだに「コミュニティ感覚」をつくっていけます。このことによって、対面授業には、ひとが対面したときにしか得られない「ノリや勢い」が生まれる気がします。
しかし、この「ノリや勢い」は授業を面白くする一方、ネガティブな側面も持ちます。つまり、コンテンツを盛り込んで、すっ飛ばして伝えることができる。なんとなく進め、なんとなく笑いをとり、わかった気にしておいて、コンテンツの情報提供を早める気がするのです。
盛り込んだコンテンツが、学習者にしっかりと伝わっているのなら、よいのですが、おそらく、そうではない気もする(笑)
オンライン授業ならば、よりゆっくり、理解を確かめながら進むところを、対面授業では、ノリや勢いに任せて、授業を早く進めることができてしまうのです。
このことは、グループワークでも言える気がしました。
先日の授業はハイフレックス授業でしたので、グループには2つの種類ができました。すなわち、オンラインからの参加者が混在しているグループと(対面で参加している人と、オンラインで参加しているひとが混在しているグループですね)、対面の参加者だけから構成されるグループです。
これはスタッフ間同士で話していたことなのですが、2つのグループのグループワークを比べると、下記の仮説が得られました。
1.対面の参加者だけから構成されるグループの方が、おそらく、表情が豊かである。独特の勢いやノリが生まれている気がする。
しかしながら、
2.オンラインからの参加者が混在しているグループは、ひとつひとつ、お互いの理解を確かめ合っている。おそらく、話している内容への注目は、こちらの方が高い気がする。
3.対面の参加者だけから構成されているグループの方が、話している内容に脱線が見られる
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わたしたちは、常に授業を観察し、リフレクションしています。もちろん、これらはそうしたプロセスから得られる「仮説的妄想」です。
また、両グループともに素晴らしい活動をしてくださっているので、どちらがよいとか、悪いというわけでは全くありません。
しかし、オンライン授業と対面授業には、どうやら、私たちが、それぞれに埋没していると気づかない特徴がある気がいたしました。
わずか1年前まで、わたしたちは、授業といえば対面授業でした。わずか1年前まで、授業は授業であり、対面授業という言葉はなかったのです。
しかし、わたしたちは、一時期、これまで「アタリマエ」だった「対面すること」を失いました。オンラインに移行し、そこで授業をしてきました。そして再び「対面」に戻ると、
対面授業というものの「特質」が浮かび上がってきます
まことに興味深いことです。
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今日は、久しぶりに行った「対面授業」の様子をリフレクションしてみました。
先日、わたしどもが経験したように、これからオンライン授業から対面に戻られた先生は、おそらく、これから様々な「違和感」を経験するのだと思います。
そうして「違和感」を乗り越える「再適応」が、これから必要になるのかな、とも思いました。
最後になりますが、「ハイフレックス授業の授業環境づくり」とは、どうして、こんなに複雑なのでしょうね・・・。マイク、カメラの位置、資料の準備、教室環境の感染対策、当日の音声コントロールなど、すべてに配慮して授業を行うのは、教員ひとりでは絶対に不可能だと、わたしは感じました。
今回の教室環境は、リーダーシップ開発コースの事務局スタッフの皆さん、加藤走さん、井上裕香子さんと、藤澤広美先生らが準備を進めてくださいました。広報には、井上左保子さんも入って、当日の様子を取材いただいております。この場を借りて、彼らに心より感謝をいたします。ありがとうございました。
(リーダーシップ開発コースには、教員と学生をつなぎ、学習環境をデザインする専門のスタッフがおられます。この動きが、手前味噌ながら、素晴らしい!外部の先生方にもお褒めをいただいております)
立教大学大学院・経営学研究科・リーダーシップ開発コース2期生、いよいよキックオフです。2期生も1期生に負けないように、対話的で深い学びを達成していただければと思います。
もちろん、1期生の皆さんも、今年はプロジェクトを成し遂げ卒業となります。それぞれに個人のプロジェクトを成し遂げていただけることを願っています。
そして人生はつづく
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