2021.3.17 07:57/ Jun
対話とは「わたしたちに馴染みのない、特異なコミュニケーション」である
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これは、納富信留著「対話の技法」を読んだときに、僕が、まっさきに惹かれたセンテンスです。「対話の技法」は、プラトンの研究者である著者が、「対話とは何か」を論じた書籍です。非常に簡便、かつ明快に、対話を論じているので、おすすめの一冊です。
著者によりますと(以下、要約)、
対話とは、もともと「ディア+ロゴス(相互+論理)」のことをさします。
つまりは、二人以上のひとびとが相互に(ディア)、言葉を交わすこと(ロゴス)を「対話」というのです。
ここで重要なことは、「対話」の冒頭の文字は「対」であるという事実です。
ここから示唆されるのは、ここで集う二人以上の人々の関係は「対等」であり、かつ「ひとりの独立した人間(生身の人間)」として相手に「対面すること」が求められている、ということです。
かくして、ひとびとは話し合いをします。
抜き差しならない対面状況で、お互いを尊重し合い、「今、ここ」で思ったこと、感じたこと、に関してことばを交わすのです。彼らを結びつけるのは「共通の目的」です。この共通の目的をめざして、「今、ここ」の思いや考えを言葉でかわしあうことが、対話です。
その中では、自己に変容がもたらされることもあります。対話のなかで、ひとは、「自分はわかっていなかった」ことを自覚できる機会をもつのです。ですので、対話とは、自らの思い込みを破壊して、自分自身を「無」にすることでもあります。
つまり、対話とは「無知の知」のきっかけを提供するものです。
対話とは「甘美な万能薬」ではありません。
むしろ、対話とは「医療薬」に近いものです。
対話とはときに「痛み」をともなうものであり、そこに「自己を変えていくこと」の契機があります。
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ここまでの簡単な要約をお読みになって、皆さんは、どのように思われましたでしょうか。
僕が抱いた思いは、冒頭申し上げたように、
「わたしたちの日常生活においては、対話とは、なかなか存在しないコミュニケーションなんだな」
というものです。
むしろ、わたしたちの「シャバの世界」は、「対話」の「真逆」を地でいくコミュニケーションの連発ではないでしょうか。
わたしたちの社会には
・一方向にしゃべくりまくり、まくし立てる「声の大きいひと」がいます
・言葉を交わすのでなく、忖度することをもとめるひとがいます
・権威と権力をふりかざして、制圧するひとがいます
・共通の目的をもたないまま、ただ「そこにいる」だけの人々がいます
・「今、ここの感情・考え」を語るのではなく、「かつての、あちらのこと」にしがみつくひともいます
・他人は変えようとするくせに、自己を変えようとしないひとがいます
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よって、おそらく、わたしたちが対話を行おうとするときには、様々なトレーニングや仕掛けが必要なのだと思います。
僕には、だんだんわかりかけてきました。ひとびとを対話に向かわせるとき、どのような事前準備を行うことが必要なのか、について。私たちに必要なのは「対話のトレーニング」であり「対話のレッスン」なのではないか、と考えています。
本書は、対話について思いをはせ、対話について冷静にかんがえるための、様々な素材を提供してくれます。
おすすめの一冊です。
そして人生はつづく
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