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2021.3.5 07:57/ Jun

人材開発・組織開発を志すひとは「他人の靴」を履いて「鬼の子ども」の気持ちにならなければならない!?

 人材開発や組織開発の仕事にまったく「向いていないひと」は、どんなひとか?
   
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 昨日のブログで、僕は、そんなお話をさせていただきました。
    
人材開発・組織開発の仕事にまったく「向いていないひと」はどんなひとか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12696
    
 実は、この話題には続きがあるのです。グローバルに展開する企業で組織開発の仕事に従事なさっている方々への聞き取り調査では、もうひとつ「大事な点」が指摘されていたのです(聞き取り調査へのご協力感謝いたします!)。
  
 昨日のブログで話題になったのは、「言語に関する感受性」でした。端的に申し上げれば、「言語に関する感受性が低い方」は、人材開発・組織開発の仕事には向いていない、ということになります。
  
 それでは、もう1つ、どうしても、この仕事に必要な資質・能力とは何か?
 皆さんは、何だと思いますか?
  
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 もちろん、この問いに対する答えはたくさんあるでしょう。当日は、2名のプロフェッショナルの方々から、同じ答えが示されました。
  
 それは、ワンワードで申し上げますと、
  
「他者視点」
  
 です。
   
 他者視点とは「他人の立場にたって、物事を見る能力」です。別の言葉でいえば、共感(empathy)といってもいいかもしれません。Oxford dictionaryによれば、共感(empathy)とは「他人の感情や経験などを理解する能力」とされています。
  
 他者視点とは、下記のような場面で発露するでしょう。
  
 自分の立場から見れば、この状況は「Aという光景」に見えるかもしれない。しかしながら、赤の他人から見れば、同じ状況が「Bという光景」に見えるかもしれない。
 問題は「Aという自分の見え方」を大切にしながら、他人が見ている「Bという光景」に対して思いを馳せることができるか、どうかということです。
  
 これが「他者視点」だと思われます。
  
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 ちなみに・・・「他者視点の重要性」を説明するために、その方々が用いておられたのが、ある広告のコピーでした。リンク先の記事をご覧ください。
  
 
 
【衝撃】「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました」
https://rocketnews24.com/2013/12/30/397368/
  
 詳細はリンク先の記事をご覧いただきたいのですが、広告のコピーの要点は、
  
 立場が異なると、同じ状況でもまったく異なった解釈がなりたつ
  
 ということです。
  
 誰もが知っている「通常の桃太郎の物語」といえば、皆さん、ご存じのように「悪い鬼を、正義の味方、桃太郎が仲間を連れて退治するお話」ですよね。
  
 しかし、見方を変えて、今、仮に「鬼の子ども」の立場に立って「桃太郎の物語」を考え直すとします。そうなると、物語が一変します。
  
「鬼の子どもの立場にたった桃太郎の物語」は、「桃太郎と、その仲間たちに、自分のお父さんが殺されるお話」になってしまうのです。
  
 問題は、どちらの物語が「真実なのか」ということではありません。そうではなく、このように「世の中には、自分とはまったく物語を生きている他者がいる」ということを認識し、他者の視点にたって、物事を考えることができるか、ということです。これが、人材開発・組織開発の仕事には、どうしても必要です。
  
 なぜならば、昨日も申し上げたとおり、
  
 人材開発の仕事とは煎じ詰めれば「他人に変われ」という営みです
 組織開発とは「他人と他人との関係を変える」営みです
    
「他人に対して、変化を迫る営み」は、ときに、そこに関わる他者の気持ちに「触れること」もあります。場合によっては「逆撫ですること」があります。
 なぜなら、人々にとって「変化」とは、そもそも「億劫」なものですし、変わった先に何があるか、見通しがきかないので、不安・疑心暗鬼といった「負の感情」に襲われやすいのです。
   
 そして、こうした「負の感情」を「逆撫で」してしまうのがファシリテータの使う言葉です。
 そして、「他者からみて不用意とも言える言葉」を、なぜファシリテータが発してしまうのかを考えたとき、その根幹にあるのは「他者視点の不在」があるように思うのです。
  
(詳細は下記記事をご覧ください)
  
人材開発・組織開発の仕事にまったく「向いていないひと」はどんなひとか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12696
  
 他者の視点にたてないひとが、他者に対して適切な言葉かけができるとは、僕には思えません。
  
 ですので、他者の視点にたって物事を考えることができない人というのは、この仕事には向いていません。
 もちろん、向いていないからといって何の問題もありません。あくまで「人材開発・組織開発の仕事には向いていない」というだけの話です。
  
 作家のブレイディみかこさんは、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」という小説のなかで、他者に対する共感のことを「誰かの靴を履いてみること」としています(この本は、名著だと思います!)。
    

  
 人材開発・組織開発に向いているひととは「他人の靴をはいて、物事を考えられるひと」なのだと思います。
 自戒をこめて申し上げます。
   
 あなたは「他人の靴を履いて、物事を考えられるひと」ですか?
  
 そして人生はつづく
  
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