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2020.12.22 08:22/ Jun

「自分の居場所」を複数持ちなさい!:全く役に立たない「中原淳の子育て論」!?

「自分の居場所」を複数持ちなさい
  
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 このような仕事をしていると、仕事柄、よく問われる質問がこちらです。
  
 中原さんは、お子さんの教育方針として、どんなものをお持ちなのですか?
   
 中原先生は、どのような子育て方針をおもちなのですか?
  
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 と、言われましても(笑)
 何一つ変わったことは、していないんですが・・・・
 我が子、何一つ変わった子でも、ございません
  
・KENZOも、TAKUZOも、完全無欠のバリバリ公立小学校・中学校にかよっておりますので、受けている教育も、とりたてて変わったものではありません
  
・習いものも、ひとと同じくらい、さして、変わりばえもないものをしているだけで、とりたてて特別な教育を行っていません
  
 というわけで、「先のご質問」に対するお答えは、聞かれたとおりに答えるとすると、
  
「何も変わったこと」はしておりませんし
「特別な方針」があるわけでも、ありません
  
 以上。
  
 となってしまいます(笑)
  
 有機野菜だけで育てているわけでもございませんし、家庭内の公用語が英語であるわけでもありません。テレビはありますし、ゲームも自宅にはあります。鬼滅の刃もみますし、夜な夜な、アツモリで、せっせと化石を集めているようです。
 
 ふつーです。
  
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 とはいえ、、、それでは、せっかくご質問いただいた相手に悪いですし、また「残念な気持ち」にしてしまいますので、強いてしいてあげるのであれば、ということで、下記のお話をすることがあります。
  
 それが・・・
  
 「自分の居場所」を複数持ちなさい
  
 です。
  
 もう少し具体的に申しますと・・・僕は、自分の子どもに
  
 異なる場所を行き来して
 それぞれに「居場所」を持ちなさい
  
 と言っております。
  
 逆にいうと
  
 ひとつの場所だけにしか
 居場所がない生き方をするんじゃない
  
 とことあるごとに言い聞かせています。
 子どもは「ふーん・・・パパ、またはじまった」「あのさー、もうお話はいいから、ゲームしていい?」という感じで聞いておりますけれども。
  
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 その含意は、こうです。
  
 世の中で暮らしていると
 うまくいくことも、うまくいかないこともある
  
 問題は、うまくいかないことが続いた時だ
 たしかに、長い人生には、そういうときもある。
  
 そのときに、たったひとつの場にしか「居場所」
 がなければ、そこの価値基準で、自分の将来が決まる
 すぐに、角っこに、追い込まれてしまう。
  
 角っこに追い込まれた場合、やがて、しっぽを掴まれる。
  
 生殺与奪を他人にあずけ、
 他人の人生を生きなくてはならなくなってしまう
  
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 反面、複数の場所に居場所があれば、事態は変わる。
 精一杯頑張っても、うまくいかないことは、人生にはままある。
  
 そのとき、ひとつめの場所で、居場所を失っても
 他の場所に「旅」をすればいい
 旅にあきたら、戻ればいい。
 ただ、それだけのことだ
  
 頑張ってさえいれば、
 世の中には、必ず、自分を認めてくれる場所がある
   
 場所が変われば、評価の基準がかわる
 自分をはかる「物差し」もかわる
   
 人生は、自分に最もフィットする場所
 自分が生きる「物差し」のある場所
 を探す「旅」のようなものだ
  
 だから「自分の居場所」を複数持ちなさい
 そして旅をしながら、生きなさい。
  
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 「自分の居場所」を複数持ちなさい論、いかがでしょう?
 
 誤解を避けるために申し上げますが、「逃げろ」「逃走しろ」といいたいわけではないのです。
 ただ、シャバの世界では、努力しても、うまくいかないこともある、そのときに、どのように生きるか、知恵をもったほうがいいよ、と思うのです。
  
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 僕がこういうことを、自分の子どもに話すのは、以下のような認識があるからです。
  
ニッポンの若者が「世界最低の自己効力感」しか持てていない理由!? : 世の中にはびこる「単一の物差し」幻想とは何か?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12354
  
 この記事にありますように、日本の若者のもつ「自己効力感」は世界最低ランクなのです。その理由は多々あるものの、その理由のひとつとして有力なのは、
  
 「ひとつの物差し」のなかで、追い詰められているからではないか
   
 と僕は思っています。
  
 たとえば「学校」という場所の「学力」という物差しによってしか、自分のアイデンティティを保てないひとというのは、それがうまくいかなくなったとき、追い詰められていきます。

 これは大人だって同じでしょう。
 たかだか22歳の頃にはいった会社のなかにしか、居場所がないひとは、それがうまくいかなくなったときに追い詰められます。
  
 しかし、記事にありますように、世界はもっともっと「多元的」なはずです。だから、そこを適宜旅して、自分の居場所を複数持った方がいい。
  
 別の言葉でいうと、様々な場所に居場所をもちつつ、自分にもっともフィットする「物差し」のある場所で、活躍すればいいんじゃないか、と思っています。
  
 いかがでしょうか?
  
  ▼
  
 今日は、わたしの教育論、子育て論のお話をさせていただきました。
 N=1の取るに足らない、なんの一般性も持たない子育て論でしたので、誰の役にも立たないと思います。気ままに読み飛ばしてください。
  
 しかしながら、
  
 「自分の居場所」を複数持ちなさい
  
 と、子どもに諭す僕自身も、「複数の居場所」を持ちつつ、しなやかに生きていこうと思います。
  
 他人に、しっぽ掴まれた生き方はいやだ。
 角っこに追い込まれるのも、もっといやだ。
 自分にあわない「物差し」をあてがわれるのもいやだ。
 他人の物差しで「スペック化」される生き方はしない。
  
 僕は、旅人だからね。
    
 以上。
  
 そして人生はつづく
  
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