2020.11.12 08:13/ Jun
組織開発の用語に「境界透過性(きょうかい・とうかせい)」という概念があります(1年ほど前の研究会で、立教大学院大学院生の杉江美樹さんがお読みになった論文でご紹介いただいたものです・感謝!)。
境界透過性とは、ある集団の内と外を分ける「境界」をどの程度、明瞭にしていくか」ということです。
境界透過性が高ければ、境界は透明に近くなるわけですから、集団の内外での情報の流れ・ひとの相互通行が多くなります。うちと外の境界が薄くなり、集団は「うすらぼんやり」したものになります。
一方、境界透過性が低ければ、境界はくっきり・はっきりするわけですから、集団のうちとと外では、情報やひとの相互通行は少なくなっていきます。集団の内部の血は濃くなります。内部と外部との違いが強調されてきます。
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境界透過性のアイデアは、
集団のうちと外の「境界」をマネジメントすることで、いかに集団をヘルシーに保っていくか
という関心を、私たちに思い起こさせてくれます。
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集団をヘルシーに保つというものは、実に難しいものです。
境界透過性を低め、集団をガッチガッチに運営し、境界を「万里の長城」並みに気づけば、集団内部は、コテコテの濃さになっていきます。
たいていの場合、外部との通行がないので、マンネリ化が生まれたり、惰性につながったりするというデメリットもあります。
一方、集団の境界を「サランラップなみ」にペラッペラッにしておくと(境界透過性が高い)、境界はほぼなくなりますので、外部からは情報がゴリゴリはいってきます。
そこに新しいアイデアや新しいご縁などが生まれるチャンスもありますが、一方、境界透過性が高過ぎれば、集団内部のメンバーのアイデンティティは「拡散」します。
要するに、集団では、常に集団の状況をモニタリングしながら、適切に境界透過性をマネジメントしなくてはならないのです。
閉じぬこと、オープンであること
しかし
拡散せぬこと、それでいて、まとまること
うーん、実に難しい!
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僕は、15年以上にわたり、中原研究室とか、中原ゼミとかいう仮想共同体を学生とともに運営していますが、常に気にしているのは、この問題です。
もちろん、研究室とかゼミの担い手は「学生」なので、わたしから問題提起することはあまり多くはありません。
ただ、今、うちの研究室・ゼミはヘルシーかな
ということは、常に考えています。
なぜなら学ぶ環境が「ヘルシー」ならば、たいていの学生は、「よく育つから」です。
学生を直接ゴリゴリと育てようとしなくても「環境さえヘルシーであれば」、学生はおのずと学びあってくれることが多いものです。わたしは、過去20年の教育経験で、このことを確信しています。
中原研究室、中原ゼミも境界透過性を低くすれば、内部の血が濃くなり、集団凝集性が高くなります。一方、それを高めれば、中原ゼミのメンバーとしてのアイデンティティは拡散します。
その頃合いを見つけるのが、まことに難しいのですが。。。
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今日は、組織開発の学問概念「境界透過性」の話をさせていただきました。
学部の中原ゼミでは、せんだって、同じ経営学部の石川淳先生のゼミと合同ゼミをさせていただきました。両ゼミの学生の皆さんの発案で、わたしは提案されたとき、それは実現できたら素晴らしいことだ、と思いました(感謝!)。
合同ゼミでは、両ゼミが「ミニワークショップ」を持ち寄り、相互に学び合う場をつくってくれました。短い時間ではありましたが、いろいろ学び合うところは多かったように感じます。
このような機会をつくってくれた4年生の両ゼミの学生の皆さん、とりわけ幹事のみなさま、櫻澤蘭さん、松本莞爾さん・西岡茉優さん・熊野真子さん・山川由斗さん、趣旨にご賛同いただきました石川淳先生に、この場を借りて心より御礼を申し上げます。今後は、石川先生のゼミも含め、他のゼミとの合同ゼミも企画できればよろしいのではないか、と思います。
4年生は、大学での授業は70日たらずです。
最後の最後まで、フルスロットルで学びを楽しみ、完走していただきたいと願っています。
そして人生はつづく
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