NAKAHARA-LAB.net

2020.10.21 08:24/ Jun

オンラインでのプレゼンテーションに最も欠けているのは「身体性」である!?

 個人的なことでまことに恐縮なのですが、僕は、オンライン(Zoom)でプレゼンをするときに、いつも、下記のような画面(パワーポイントの編集画面)を「画面共有」して、プレゼンを行っています
    
 
   
 すなわち「パワーポイント」のスライド表示を行う前の「編集画面」で、そのままプレゼンするということですね。
     
 これに対して、通常の場合は下記ですよね。
 すなわち、スライドを「全画面表示」してプレゼンをするのが「よし」とされているのでしょう(あたりまえ)。ま、その方が大きな画面で見やすいのだと思うのです。
  
 
    
 けれども、わがままで恐縮なのですけれども、個人的には、やりたくない(ごめんなさい)。
 実は、理由が3つあります。
     
  ▼

理由1. 視線がカメラにあわなくなる
 スライドを「全画面表示」してしまうと、僕のモニタいっぱいに僕のスライドが表示され、それが画面共有されましう(これは僕の環境上、やむをえないです)。
    
 そういたしますと、どうしても、僕はスライドを読む際、広い画面を目でおっていくことになります。一方、カメラは「前方」の1点にしかありません。かくして「カメラに目線があわない」状況が生まれます。
     
 これに対して「編集画面」でプレゼンをすると、画面が小さくなります。「編集画面」のウィンドウをカメラの位置までなるべく近づければ、目線とカメラがあうようになるはずです。
    
  ▼
  
理由2. 動きをつくりたい
 Zoomでの他人のプレゼンを聞いていて、いつも思うことのひとつに「今、何に注目して、この話を聞けばよいのかが、わからない」というものがあります。
   
 通常のプレゼンの場合ならば、プレゼンターが「おのれの身体」を使って「指さし」をおこなうことができますので、「今、どこに注目すればいいか」がわかります。
  
 しかしながら、Zoomでのプレゼンは、なかなかそれが難しい。
    
 よって、僕は、オンラインプレゼンの際に、つねに、自分が「注目してほしいところ」にマウスを動かしながらプレゼンをしています。そうしますと、この問題を解決できるのではないかと考えています(ディレイがあるので、うまく機能しているかはわからないのですが・・・)。
    
 しかし、もし、このマウス移動作業をスライド表示画面で行ったら、移動距離が長すぎて、おそらく目で追ってしまう。ですので、編集画面でプレゼンしています。
      
  ・
  ・
  ・
    
 ちなみに、オンラインプレゼンにとって、一番、厳しいのは、「プレゼンターの身体を使えないこと」だと僕は思っています。
   
 つまり、オンラインプレゼンには「身体性」が欠如している。
        
 対面状況のプレゼンならば、プレゼンターは、プレゼンを行う際に「自分の身体」を使えます。
 歩き回ることもできれば、指さしを行うこともできる。ジャンプすることもできれば、表情を使って演技もできる。そのようにして、聴衆の「注意資源」を獲得し、ゆるやかに、それらを、自分が見てほしいもの、聞いて欲しいことに、ナヴィゲートするのです。
    
 畢竟、プレゼンとは「パフォーマンス」です。
  
 しかし、この「パフォーマティブな部分」がオンラインプレゼンでは、どうしても減ってしまいます。よって、十分注意しなければ、オンラインプレゼンは退屈なものになってしまうのだと思います。
   
  ▼
  
理由3. 編集画面でプレゼンすると、よりスムーズな「つなぎ」を行える
 編集画面でプレゼンをすると、「次のスライド」や「次の次のスライド」は、常に、画面左横の方に常に見えています。
   
 それを片目でみながらプレゼンを行いますと、「今後の展開」を踏まえたうえで、プレゼンを行うことができます。前後のつながりがよくなります。
    
 もうひとつ可能になるのは、相当前のスライドに直前ジャンプして戻る、といったことです。「編集画面」のプレゼンでは、常に左横にスライドが表示されていますので、自由自在に、先ほど読んだプレゼンに戻れるのです。
 これは、ラジオのDJのように、チャットの意見をひろいながらプレゼンをするときには威力を発揮します。「質問された箇所」まで、すぐにスライドを戻すことができます。
   
 これらのことによって、おそらく理解度があがるものと思われます。
  
  ・
  ・
  ・
   
 以上。
    
 もちろん、上記で書いたことは、他の方法でも可能なのかもしれません。僕は、そんなにテッキーではないので、このローテクが、自分にとっては一番よいのではないかと考えていますが。。。
   
 なお、この方法は、よいことばかりではありません。
 デメリットもあります。
     
 それは、スライドが全画面表示されるわけではないので、「見にくいとおっしゃる方がでてくること」(まことに申し訳ございません)。
 画面に表示される情報量が増え、おもわず、左横のスライドが表示されているところに目がいくこと。
 また、あとのスライドを隠しておきたい場合などに、すでに次のスライドが表示されてしまっていることです。
  
 とはいえ・・・たまーに「見にくい」とお叱りをうけつつも、個人的には、今のやりかたが、しっくりきているのですが、いかがでしょうか。 
  
 そして人生はつづく
   
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
     
  ーーー
     
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

   
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約28000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?

2024.10.14 19:54/ Jun

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?