2020.10.20 09:07/ Jun
この10年でもっとも普及した人材開発施策といえば、おそらく「1on1(ワン・オー・ワン)」ということになるのでしょう。
ここで「1on1」とは「隔週・月1程度で行われる、上司ー部下のあいだの日常的な振り返りのミーティング」のことをいいます。
1on1は、学術用語ではありません。これをアカデミックに言い直せば、1on1は、おそらく管理者コーチング(Managerial Coaching)ということになるのでしょうね。管理者コーチングは、部下の職務満足・コミットメントを向上させ、離職意思をさげることが知られています。
ところで、5年前から、さまざまな企業で導入されはじめた1on1ですが、導入が急であったように様々な課題も生み出しているようです。いわゆる「むごい1on1」問題です。
中原は、これまで巷に存在する「むごい1on1」に関して、PHP研究所さんとともに、アチャパーケースを集め、この典型的失敗がなぜ生まれるのかを考察してきました。
たとえば、上司側の問題であるならば・・・
実例1:説教2時間コース「1on1」(1on1のスキル不足・目的理解不足)
「先生、うちの上司の1on1は密室説2時間コースなんですよ」
実例2:なぞなぞ「1on1」(1on1のスキル不足・目的理解不足)
「先生、うちの上司の1on1は、なぞなぞみたいなんです。君はどう思うって聞かれて、答えるんですが、違う!って言われるんです」
実例3:へーほーはーふーん「1on1」(1on1のスキル不足・目的理解不足・信頼感の欠如)
「うちの上司は、人事から、1on1の意義を、何があっても自分の意見を言うな、と言われたらしいんです。だから、うちの上司は、1on1の最中、へーほーはーふーんしか言いません」
たいがい上司側におこる問題は、このように、1on1のスキル不足・目的理解不足などかと思います。
(他にも、たくさんありそうですよね・・・御社ではどんな事例が生まれていますか?)
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一方、部下側にも少なくない問題があり、「むごい1on1」が生まれ得ます。
実例4:ドタキャン1on1(目的の打ち込み不全)
部下「ちょっとお客さんから、また呼ばれちゃって。3回目のキャンセルになって申し訳ないんですが、1on1リスケをお願いできませんか? すみません、1on1、今回はキャンセルでお願いします(次回も)」
実例5:会議室に入ってから思いつき1on1(振り返り不全)
部下「話したいことですか・・・(何も考えていない)そっすね、こないだやったBBQのことかな」
実例6:特にないです攻撃で1分で終わる1on1(振り返り不全)
上司「話したいことありますか?」部下「ないっすね」
部下側の課題は、1on1の目的理解不全、また、そもそも1on1にのぞむ下準備の不足によって生まれることが多いものです。1on1は、一般に部下が「話したいこと」を決める会議とされています。その場合には、部下側が1on1の前に、業務経験
を振り返っておくことが求められます。しかし、これがなかなか為されていません。
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せんだって、PHP研究所さん主催のフォーラム「1on1の失敗学」では、このあたりの失敗ケースを分析したうえで
1on1を「上司と部下がペアですすめる共同作業」である
と捉えることが重要であることをお示しいたしました。
とりわけ、上司の1on1のスキル不足なども問題なのですが、部下側に対する会社からの働きかけも、また重要であることを確認しました。下記は、「1on1の失敗学」のイベント最中に、参加者の皆様からいただきました投票結果のデータです(N=258)。
上記のグラフは「1on1推進にあたって、上司と部下に対して、会社側がどの程度の支援(サポート)を行っているか」を示
したものです。一読してわかるとおり、部下の方が、上司よりも、1on1に対する支援がいきとどいておらず、
「上司と部下がペアですすめる共同作業」
が進んでいない可能性があることがおわかりいただけるかと思います。
その結果、部下からすれば・・・
1on1って、何のためにやるんだろう?
1on1って、何を話せばいいんだろう?
となっている可能性があることが示されています。ま、もちろん、上司に対する1on1の理解や、スキル形成も課題があります。
要するに、この施策を回していくためには、「あの手、この手」で1on1推進のための人材開発施策を立案し、実行していくことが大事になってきます。
今回の「1on1の失敗学」では、さまざまな事例を通して見出した「1on1」成功のポイントを、PHP研究所さんと中原で映像教材・研修プログラムに開発いたしました。昨日のフォーラムでも、その一部の映像教材を公開させていただきましたが、多くの失敗から学び、成功・成果をだせる1on1が実現することを願っております。コロナ禍にあわせて、リモート1on1での失敗もケースとして取り扱ってあります。
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
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さて、今日は「1on1の失敗学」についてのお話をざっとお話しさせていただきました。
最後になりますが、昨日のフォーラムの実現に至りましては、お申し込みいただきました600名上の皆様に、心より感謝いたします。最後にも申し上げましたが、1on1に至っては、実現のポイント、成功の秘訣、失敗の理由などが、かなりわかってきています。
ZOOMの退出ボタンを押したら、事を為すのみ!
現場で力強い実践をなさってくださいませ。
また、フォーラムでは、パナソニックの西峰 有紀子さん、大西 達也さん、きらぼし銀行の吉田 裕幸さん、山本 頌 さんに、同社の1on1についてご講演をいただきました。ありがとうございました!
西峰さんとは、美瑛・地域課題解決研修以来の再会、大西さんとは、大西さんがすすめておられる同社の組織開発の事例共有会以来の再会となりました。きらぼし銀行の吉田さん、山本さんとは、去年、ゼミ生が「金融庁・きらぼし銀行・立教大学中原ゼミ」の産学共同イベントでご一緒させていて以来の再会です。本当にご登壇をありがとうございました。
最後に、このプロジェクトを推進してきたPHP研究所の海野 翔太さん、加藤 五士さん、村上 雅基さん、的場 正晃さん。そして同フォーラムで見事な司会をなさった野崎 竜也さんにも心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
このブログを読み終えたら、事を為すのみ!
1on1で、多くの現場に働きがいがもたらされることを願っています。
そして人生はつづく
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【好評発売中】
中原とPHP研究所さんは、1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
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