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2020.10.7 07:15/ Jun

シャバでの課題解決は「海千山千の利害関係ドロドロピーポー」に満ちている!?

 シャバでの課題解決は「海千山千の利害関係ドロドロピーポー」に満ちている
  
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 人材開発・組織開発とは、端的にいってしまえば、
  
 1. ひとと組織の側面から
 2. 現場の課題解決を行い
 3. 経営・現場にポジティブなインパクトをもたらすこと
 
 です。
  
 細かいことは、様々ありますが、基本的には、このフレームのなかで行われる課題解決が、人材開発・組織開発です。
  
 しかしながら、現場の課題解決というのは、「口にだす」のは簡単ですが、実行してみると「困難極まりない世界」でもあります。
  
 そのひとつの理由は、
  
1. 現場とは「中立の真空状態」ではなく、さまざまな「利害関係に満ちたドロドロの場」であり、
  
2. 現場には、利害関係にがんじがらめになっている「海千山千のステークホルダー」たちが満ち満ちているからです
  
 要するに、
  
 人生いろいろ、現場の人もいろいろ
  
 変わりたくないひともいれば
 変えたいにともいるし
 変えたいひとのことを嫌いなひともいれば
 変わりたくないひとを苦々しく思うひともいる
  
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 組織の内部コンサルタントであれ、外部コンサルタントであれ、現場の課題解決を行うためには、この「海千山千の利害関係者」の利害関係を読み解き、ときには「そそのかし」、ときには「のせて」、ときには「プレッシャー」をかけて、物事を動かさなければなりません。
  
 そして、これは、難易度が極めて高いことです。
 おそらく、駆け出しのコンサルタントが、もっとも苦労するのが、このクライアントマネジメントではないでしょうか。
  
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 マサチューセッツ工科大学、エドガー・シャインは、著書「プロセスコンサルテーション」のなかで、現場のひと(≒クライアント)を十把一絡げに一様にとらえるのではなく、様々なラベルをつけて、それを読み解きます。
  
 シャインによれば、クライアントは、下記のような6つの分類で整理されます。
  

1. コンタクトクライアント
 一番最初に問題をかかえて、コンサルタントに接触してくる人
  
2. 中間クライアント
 プロジェクトが展開していくにつれて、ミーティングなどに「参加・関与」してくるひと
  
3. プライマリークライアント
 取り組んでいる課題に、最終的に責任をもつひと。決裁権者。
  
4. 自覚のないクライアント
 今回の取り組みの影響をもろかぶりするけれども、自分に影響が及ぶことにはまだ気づいていないひと
  
5.究極のクライアント
 より大きなコミュニティ、組織集団、職業集団の全体
  
6. 巻き込まれた「ノンクライアント」
 上記のどのクライアントに定義にもあてはまらないけれど、課題解決の足を引っ張ったり、止めることが、自分の利益につながるとおもっているひと
  
(シャイン「プロセスコンサルテーション」p90より要約して引用)

  
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 いかがでしょう。
  
 わたしなどは、このクライアントの分類を見ただけでも、「海千山千のクライアント」「一筋縄ではいかないクライアント」「利害関係ドロドロのクライアント」を想像し、軽く「めまい」がしてきます。
  
 自覚のないクライアント・・・嗚呼、ややこしそうだなぁ。
  
 ノンクライアント・・・嗚呼、めんどくさそうだなぁ・・・
  
 嗚呼。
    
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 しかしながら、くどいようですが、現場とは「中立の真空状態」ではなく、さまざまな「利害関係に満ちたドロドロの場」です。
  
 ならば、それを乗り越えることは、支援者としては必須。
   
 そして、そうであるならば、ここでもっとも重要なことは、
  
「クライアントを見抜く目」をいかにもつか?
  
 ということかな、と思いますが、いかがでしょうか。「見抜く目」がなければ、その先に「いかに介入するか」を考えることは無意味です。そして、この「見抜く」は、常にダイナミックでなければならない。

 今日は「従順なクライアント」が、明日は「抵抗勢力」になることは、ままあることなので。
   
 わたしとしては、
  
 優れたコンサルタントは「クライアントを見抜く術」をいかに学んだのか?
  
 ということが、興味深いところです。
  
 あなたは「クライアントを見抜く術」をどこでどのように身につけましたか?
  
 そして人生はつづく
  
※追伸
最近本当に忙しくて、ちょっとげんなりしていたのですが、シャイン経営学を渉猟していたら、元気になりました。シャイン経営学、まだじっくり読めてない本もあります。じっくり読み込める機会があればいいのですが・・・。
  
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