NAKAHARA-LAB.net

2020.9.8 08:21/ Jun

「あいつ、地頭がいいね」とは「あいつは、放置しとけて最高だね!」かもしれない!? : 「地頭力」という怪しい能力!?

「あいつ、地頭(じあたま)がいいね」という言葉ほど、何がいいんだか、さっぱり、わからない言葉はない
      
  ・
  ・
  ・
   
 地頭力(じあたまりょく)という言葉があります。
  
 シャバのビジネスパーソンの一部の方々が、よく用いる言葉のひとつです。「仕事にとって大切ななんらかの能力・コンピテンシーらしきもの」を表現しているように、シャバでは用いられている気がします。
  
 しかし・・・経験上、この言葉ほど、ひとによって定義がズレる言葉はありません。つまり、ひとによって、「地頭」というひとつの言葉で、イメージしている能力は異なる。
  
 結局、「地頭」という言葉で、いったい、何を表現しているかを深掘りしない限り、本当の意味するところはわかりません。
  
  ▼
  
 下記は、ちょっと前のことになりますが、ある会合で 「地頭」の定義を書いてもらったときの記録の一部です。
  
 問いはシンプル。
  
「地頭力って、どんな能力ですか?」
  
 です。
  
 しかし、それに対する答えは、下記のようなものでした。あくまでN=10ですが、その多様性にびっくりしてしまうのではないでしょうか。
  
【答え】
   
 地頭力=空気を読めるやつに使う言葉
  
 地頭力=問題解決する力
  
 地頭力=学校で学べない人間力
  
 地頭力=俺のやりたいことを、素早くやってくれそうな能力
  
 地頭力=生来の、素で、機転がきくこと
  
 地頭力=情報処理力
  
 地頭力=1を聞いて10を知る力
  
 地頭力=情報を加工して、ぱっと出す力
  
 地頭力=生まれながらにもっている能力
  
 地頭力=管理職のやってほしいことを読んで、手をかけなくても、放置しとけること
  
  ・
  ・
  ・

 いかがでしょう?(笑)
 この会合には他の方もいらっしゃいましたが、たいてい、回答はこの10パターンのどれかに該当する気がいたします。
  
 ちなみに
  
 あなた自身は「地頭力」という言葉で、いったい、どのようなイメージをもってきましたか?
  
 それはN=10のどれに近いですか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 結局、冒頭申し上げましたように、
  
「あいつ、地頭(じあたま)がいいね」という言葉ほど、何がいいんだか、わからない言葉はない
  
 のだと、僕は思います(笑)
  
 このことから敷衍するに・・・もし、あなたが
  
「おっ、中原くん、さすがに地頭いいね」

  
 と褒められたとしても、それは「何を褒められている」んだかわからない(笑)。一歩踏み込んで、聞いてみなきゃ、わからないのです。
  
 もしかすると、
  
「中原君は、放置しとけて、最高だね!」
  
 と思われているかもしれない、ということですね。
  
 また、こうもいえるでしょう。
 もし採用の局面で、「地頭を見る」という課題があったとしたら、そこで何が測定されているかは、わからないことも多い。
  
 もしかすると
  
 地頭のいいやつ=俺のやりたいことを、素早くやってくれる、使い勝手のある便利なやつ
  
 かもしれないんです。
  
  ・
  ・
  ・
  
 あなたの周囲で用いられる「地頭力」の用語は、いったい、何を示していますか?
  
 そして人生はつづく
    
(このように、ひとびとが、どのように言語を用い、どのように、日常生活を組み立てているかに関して、僕は、学生時代から、非常に関心があります。この言語が、このひとにとっては、どのような意味をもち、どのように合理的に用いられているのかをみていくこことによって、さまざまな物事の背後を見ることができます。今から20年くらい前、構築主義、エスノメソドロジー、社会構成主義などの風に、ほんのすこしだけ触れていたことは、無駄ではなかったな、と思います、笑。ややこしいだけのやつかも、しれませんが)
  
  ーーー
    
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
   

  
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q
    
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。初回は、特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」で中原が講演させていただきます。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
  
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://diamond-labo0911.peatix.com/
  
  ーーー
    
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」が好評発売中です。AMAZON人事・マネジメントカテゴリー1位を記録しました。組織調査を用いながら、いかに組織を改善・変革していくのかを論じた本です。従業員調査、HRテック、エンゲージメント調査、教学IRなど、組織調査にかかわる多くの人事担当者、現場の管理職の皆様にお読みいただきたい一冊です!
  

  
 ーーー
  

    
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約28000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.22 08:33/ Jun

最近、僕は何をやっているのか?そうね、いろいろやってます!?

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)