2020.8.17 09:04/ Jun
コロナ禍を乗り越えるために、教育機関には何ができるのか?
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この週末、土曜日・日曜日にわたって開催された公益財団法人電通育英会主催「コロナ禍を乗り越えるスクールリーダーシップ~いかに学びを継続させるか」が、昨日、無事終了いたしました。
当日は、2日間にわたり300名近い方々にご参加をいただきましたこと、この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
僕は、この会の冒頭、
【有事のリーダーシップ:学びを保障し、学びをアップデートせよ!リーダーシップ格差を子どもの格差につなげるな】
という講演をさせていただきました。
コロナ禍における社会貢献の一環として、ささやかながら、この講演資料のPDFファイルをすべて公開させていただきます。下記からどなたでもダウンロード可能ですので、どうぞご笑覧くださいませ(いらんかもしれませんが・・・笑)。
【無償ダウンロードできます】
中原淳(2020)有事のリーダーシップ:学びを保障し、学びをアップデートせよ!リーダーシップ格差を子どもの格差につなげるな. 公益財団法人電通育英会 2020年8月15日-16日 リーダー育英塾・特別オンラインセミナー. http://www.nakahara-lab.net/blog/wp-content/uploads/2020/08/yuji_leadership_nakahara2020.pdf
このファイルをきっかけにして、多くの現場で作戦会議が開かれたり、多くの方々に対話が起こることを願っております。どうぞご自由に配布、引用をいただければ幸いです。
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この講演において、わたしが申し上げたかったことは、いくつかございます。
ひとつめは、【コロナ禍との闘いは長期戦を余儀なくされること】と、そうした惨劇においては、ひとは様々なバイアスに絡め取られてしまい、希望的観測と現実を混在させ、リスクを正しく見積もることができなくなってしまう、ということです。
コロナ禍はわたしたちの判断をときに狂わせます。
わたしたちは、下記のように自分にとって都合のよいものだけを見るという「確証バイアス」に陥ることを避け、答えの出ない事態に耐える能力である「ネガティブ・ケイパビリティ」を行使したうえで「楽観的な現実主義者」であることが、まずは求められます。
教育中断がいったん起こってしまえば、それは子どもの将来の就業などに甚大な影響を与えます。
「平等を過剰に意識」して、短期的にリスクをとらないでいると、下記のように「子どもが抱える中長期のリスク」は甚大なものになっていくということです。ことは「学校が止まった」だけではすまないのです。
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もうひとつは、コロナ禍は、教育機関が望むと望まないとにかかわらず、「教育機関の出口」である「働くことの世界」を猛烈な勢いで変えているということです。
正確には、多くの変化は、コロナ禍「以前」にもすでに、その兆候はございました。しかし、コロナ禍は、その変化の勢いを「超加速」しているのです。働き方、必要になるスキル、そして雇用・・・多くが揺らいでいます。それに対応する教育機関の変化が求められます。教育機関には、仕事世界・社会に子どもを安定的に「トランジション」させる責務があると僕は思います。
以前からも言われたいたように、これからの社会でさらに必要になっていく能力は、変化の対応力、チームで課題解決をする力、物事を生み出す力です。よって、アクティブラーナーの育成が求められますが、まだまだ道半ばというのが現実でしょう。ここを変革していくことが求められます。コロナ禍は、人々のやりとりを禁じますので、ともすれば、「アクティブラーニング殺し」「探究殺し」になってしまいがちです。講演資料にあるように、アクティブラーナーの育成を、あらゆる手を使って実現していくことが求められます。
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ちなみに、スキルといえば、よく「IT」「ICT」が取り上げられることもありましょう。
しかし、もはや、それはスキルとすら形容できないものだと僕はおもいます。
私の言葉でいえば、ITとは、もはや「スキューバーダイビングでいうところのボンベ=生命線」です。
それなしでは仕事世界を「冒険すること」は非常に難しいでしょう。
教育機関や教育に携われる行政、政治家のあいだでは、よくITが「文房具」にたとえられます。
そして、子どもには「高価な文房具=IT」は必要ない、ということがまことしやかに言われるのですが、僕は、これからは「IT=文房具」という喩えの利用をただちに「停止」するべきだと思います。
「子どもにITの経験を持たせないこと」は「ボンベなしでスキューバーダイビングを行わせること」と同義であると僕は思います。
よく日本の学校では「教員にITスキルがない」といいます。しかし、Windows95が発売されて、もう25年です。僕が学部生の頃、大学院生の頃であった20年前から、この紋切り型の台詞は、当時からまったく同じ形で繰り返されてきました。
行政、教育委員会、ITの整備にお金を振り分けてこなかった地方公共団体は、このことの意味をよく考え直した方がいいと思います。
あくまで、未来志向でいきましょう。
これからを変えましょう。
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後半部は、このような事態を、いかに変革していくか、という部分に話題を展開しています。
考えてみれば、コロナ禍における教育機関の混乱は、行政・地方公共団体・校長会・教育委員会・個々の学校というさまざまなステークホルダー(利害関係者)の不一致と「コミュニケーションの目詰まり」によって起こっていました。まずは、それぞれの地域が、この目詰まりを検証し、議論の過程や情報公開を行っていくことが重要だと思います。わかりやすいメッセージングと、しっかりとバトンを現場に渡しきり、現場に権限委譲を行うことが重要です。必要なことは徹底的な現場への権限委譲です。
そのうえで、緊急事態には、現場では、全員参加型のリーダーシップが求められます。こういうときこそ、カリスマ型のリーダーシップをひとは期待したくなりますが、それは「リーダーシップロマンス」といわれるものです。世の中が不確実で視界不良な場合には、カリスマに依存した物事の決定は極めて危険です。
もちろんリーダーにはやるべきことはあります。垂直型リーダーシップとしてリーダーが達成するべき事・・・
それは、
1.今、わたしたちがどの状況にたっているか?
2.何を、なぜ、目指さなければならないのか?
3.そのことを達成すれば、どのような未来が待ち受けているのか?
の3点セットを語ることです。この3点セットに関して、組織のメンバーが同じ情景を脳裏に思い浮かべられる状況になること。これを「ビジョン」といいます。リーダーに必要なことは、向かうべきエリアを方向づけ、ビジョンを脳裏に思い浮かぶことができるようにすることです。
そして、そのオリエンテーションが合意できたなら、個々のメンバーにとって何より重要なことは、
完璧を目指すよりも、迅速に判断し、やってみること
につきます。視界不良のなかでの意志決定は、やってみて、状況がわかり、状況が見えるから、次の一手を打てる側面があります。
緊急事態下では、「みんな、同じタイミングで、いちについて、よーいドン」なのです。
ですので、早く走り始めた方が、必ず勝ちます。
ただし、このときメンバーには、いつも以上に負荷がかかります。そうした状況でパワーを発揮するためには、チームとしての一体感や情報が行き渡っている、と認知できることがあります。下記のポイントなどは、ぜひ、各職場ごとに、現在の職場の状況をチェックしてみられるとよろしいのかな、と思います。
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結局、
これからの学校は、一方で「学びを保障すること」を重視すること。
もう片方では、雇用・社会の激変にそなえ「学びのアップデートを行うこと」が目指されるとわたしは思います。
それらをリーダーシップを発揮し達成していくことが何より重要です。
これからの学校は「両利きの学校づくり」が重要になります。
そのうえで、この問題の根っこにあるのは、教育機関の「リーダーシップの機能不全」です。
大切なことは、
教育機関内部のリーダーシップ格差を、子どもの教育・学習の格差につなげるな
ということにつきます。
プレゼンの要諦は以上です。
今回のプレゼン、あくまでわたしの私見です。このプレゼン自体に「答え」はありません。このプレゼンを「対話の肴」にしつつ、多くの現場で、未来を決める作戦会議が行われること。対話が生まれることを願ってやみません。
もしご興味があるようでしたら、ご自由にダウンロードいただき、ご自由に配布を行っていただければと思います。引用も、引用表示さえ行っていただければ、わたしに承諾は必要ございません。広くお役立てくださいませ。
中原淳(2020)有事のリーダーシップ:学びを保障し、学びをアップデートせよ!リーダーシップ格差を子どもの格差につなげるな. 公益財団法人電通育英会 2020年8月15日-16日 リーダー育英塾・特別オンラインセミナー. http://www.nakahara-lab.net/blog/wp-content/uploads/2020/08/yuji_leadership_nakahara2020.pdf
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最後になりますが、毎年の夏恒例のイベントをともに成し遂げた、盟友の桐蔭学園の溝上慎一さん、電通育英会の安藤さん、有井さん、永妻さんに心より御礼を申し上げます。運営サポートを担っていた桐蔭学園の松井さん、京都大学大学院の溝口さんにも大変お世話になりました。
また、素晴らしい現場事例をご発表いただいた森朋子先生、北村恭崇先生にも心より御礼を申し上げます。会場には、上田信行先生にもお越しいただきコメントをいただきました。ありがとうございました。
また、この公開資料のうち、データアナリティクスラボの資料を作成いただいた田中聡さん(立教大学)、利用をご許可いただいた立教大学経営学部・山口学部長、そのほかデータアナリティクスラボのメンバーの舘野泰一さん・高橋俊之さん・小森谷祐司さん・加藤走さん・木村充さんに心より感謝いたします。
加えて、この公開資料のうち、「学びをとめるな」の大規模調査を実施いただいたいる立教大学 中原淳研究室の田中智輝さん・村松灯さん・高崎美佐さんにも心より御礼を申し上げます。こちらのデータに関しては、後日、東洋館出版さんより、「学校がとまったとき、何が起こったか?」という書名で刊行の予定です。東洋館の編集者の河合さんには、御礼を申し上げます。
そして・・・夏の最も暑い時期、2日間のイベントにご参加いただいたすべての参加者の皆様に心より御礼を申し上げます。
このZoomを閉じれば・・・
確実に、一歩一歩
事を為すのみ
です。
多くの教育現場で、多くの素晴らしい「事」が生まれることを願っております。
必ずできる。
完璧をめざすよりも、ただちに動く。
事を為すのみ。
事を為すのみ。
そして人生はつづく
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【お誘い:参加者募集中】
昨日も申し上げましたが、8月21日(19時ー21時:フルオンライン)に、立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラムでは、同校のオンライン授業と、オンライン授業の学習効果・成果を報告する公開講演会を開催するそうです。同プログラムを教職員ともどもと牽引する舘野泰一さん、田中聡さんが、講演をなさるそうです。ノウハウ満載、学生たちの達成度をご覧いただけるチャンスになりそうです。下記から応募いただけます。ご参加のほどご検討をお願いします。
「立教BLPカンファレンス2020——BLPのオンライン授業化と学習効果について」、オンラインご参加ください
https://www.rikkyo.ac.jp/events/2020/08/mknpps0000019m9i.html
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