2020.7.14 06:57/ Jun
あなたの周囲には「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患している方はいませんか?
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数年前から、大学で学部生を教え始めるようになって、ずっと疑問に思っていることがあります。
それは、
1.多くのひとびとが集まっている集団で
2.物事を決める方法とは
3.どこで教えられているのか?(≒学ばれているのか)
という素朴な問いです。
己の浅学を恥じますが、これが、正直に、僕にはよくわかりません。そして、今日お話しする内容が、どの教科、どの分野に関連づくことなのかも、よくわからないのです。
この話題は、とてもシンプルですが、ずっと感じてきたことです。
恥を忍んで、今日は、このことを書いてみましょう。
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数年前、学部にうつってきて、20歳前後の若い学生と接するようになって、まず、僕が気になったのは、彼らがチームや集団になったとき、「物事を決めるときの決め方」でした。
僕の目からみると、彼らのなかには「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患していると思われる症状が見て取れたのです。
ここで「対話ゼロで、とりあえず多数決病」とは、「物事を決める」ときに
1.まずは「個人」であまり「考えをまとめること」をせず、
2.集団では、いいね、いいね、と空気とノリでやりとりをして
3.とりま(とりあえず)多数決で決めてしまい
4.結果がでたあとで、不平不満がプスプス生じて
5.中には「わたしは知らない、関係ない」とトンズラする輩がでてくる
ような決め方です(号泣)。
特に気になるのは、「とりま(とりあえず)多数決」です。
何をやっても「とりま多数決」、考えもなく「とりま多数決」。別に「多数決」が悪いわけではないのです。多数決が悪いのではなく、「とりま多数決」がどうも案配が悪い。
といいますのは、この「とりま多数決」には「事前に行わなければならない対話」や「事後に各人が担わなければならないない責任」が付随していません。
ですので、
物事が決まっているようで、決まらない
決まってはいるんだけど、動かない
という状態が生まれます。
教員としてもっとも気になるのは、「多数決」に至る前に「何をしなければならないのか」ということと、多数決を行ったあとは「何が必要か」がわかっていないのではないか、ということです。
こういう場面を、何度となく経験してきました。
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これに対して、僕が、自分のなかで理想的だなと思っている「物事の決め方」とは、下記のようなものです。これをなんと表現していいか、まったくわからないのですけれども、僕のなかの理想です。もちろん、これは「僕の理想」であって「他の方の理想」ではないかもしれません。ただ、僕が指導する学生には、物事を決めるときには、下記のようなステップをとるように助言してきたつもりです。
物事を決めるときには、
1.個人でいったん考えをまとめる
2.個人の考えを表出し、個人間の考えの「ズレ」にだしあう
3.相互の「考えの分岐点」をしっかりと確認したうえで、
4.最後は、議論か、多数決などで決める
5.決まったことには、みなで従う
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嗚呼、こう書いてみると、「アタリマエダのクラッカー」すぎて、もう泣きたくなります。
しかし、どうやら、この手のことは、きっちり、学生には大学に入る前には、定着していない印象があります。いや、むしろ、少なくない学生が「対話ゼロで、とりあえず多数決病」に罹患している。この「対話ゼロで、とりあえず多数決病」を「アンラーニングすること(揺さぶること)」から、大学での学びがはじまります。
皆さんは、いつ、どこで「物事の決め方」を学びましたか?
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今日は「物事の決め方」に関して、ずっと疑問に思ってきたことを書きました。
今日のブログでは学生をとりあげましたが(ごめんね)、よくよく考えてみると、大の大人だって、「物事をきちんと決めているか」というと、そうではないような気もしてきます。物事が決められないのは、学生だけではなく、大人もそうなのかもしれません。
そんなことを考えていると、この国は、
物事を「話し合い」よりも「空気」で決めてしまう国
なのかもしれないな、とも思ってきます。
いずれにしても・・・わたしは、教師です(キリッ・・・なんつって)。
そして学校とは、社会に出る前の「試行錯誤」の場所です。
学校という安全空間での、学生との試行錯誤を通して、「物事の決め方」を教えていこうと思います。
そして、今日の話題は、自分に対しても「矢印」が向きますよね。
自戒をこめて申しますが、物事を決めるときには、しっかりと意見を表明し、得た結論にはフォロワーシップを発揮しようと思います。
そして人生はつづく
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