2020.6.18 07:42/ Jun
あなたの「人生の質」を決めるのは、たかが「こころ」、されど「こころ」!?
あなたの「心理的資本」は高い方、それとも低い方?
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経営学(ポジティブ心理学)には「心理的資本(Psychological Capital:略称 PsyCap)」という概念があります。
「心理的資本」とは、端的にいってしまえば、
「ひとが、いかに希望や目標をもちつつ、物事に挑戦し、出来事を意味づけ、逆境をはねのけてでも、前にすすむことができるか」という「ひとの心の状態」のこと
をいいます。
「心理的資本」は「資本」といっているくらいですから、これが「原資」として機能して、そのうえに、さまざまひとびとの成功や幸福が築かれていきます。
より具体的には「心理的資本」を構成する成分は
1.希望
目標をもち、目標達成にむかって、いかに前向きに進むことができるか
2.自己効力感
自分を「やればできる子」と考え自信をもち、ものごとに挑戦できるか?
3.レジリエンス
困難な課題が生じても、それに屈せず、前にすすめるか?
4.楽観
今の出来事や、未来にいかにポジティブに意味づけを行い、自分を鼓舞できるか?
といったところでしょうか。
皆さんの「心理的資本」はいかほどですか?
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さて、この心理的資本・・・10年くらい前からでしょうか・・・経営学では、人的資本、文化資本、社会関係資本など、おなじみの「資本」に加えて、論じられるようになってきました。中原研究室でも、かつて、いくつかの調査で、この概念を用いて調査をしたことがあります。
「心理的資本」は「資本」といっているわけですから、「個人」に果たす影響は甚大です。
「個人が心理的資本をもっているか、否か」で、個人が「キャリア上の成功」を収めるかどうかが決まり、それに強い影響を及ぼしてしまうのです。
それはちょうど「文化資本」「社会関係資本」などの従来の資本が「個人のキャリアや成功」に影響を及ぼしてしまうのと同じです。
おそらくは、ここからは妄想ですが、「文化資本」「社会関係資本」といった「従来の資本」と交互作用をもって(つまりはシナジーをおこして)、心理的資本の効用は高まるかもしれません。
「心理的資本」というレンズを用いて「自分の周囲にいる学生や社会人」を見回してみても、そのことはおおよそ首肯できるような気もします。
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さて、もし「心理的資本」が個人の成功をある程度左右してしまうのなら、個人的には、それが「高い」状態はいかにつくられるのか、ということです。
つまり
1)希望・目標をもって、2)自分に自信を保ちつつ、3)困難な状況に挑戦し、4)逆境をはねのける「スーパーポジティブ野郎」はいかにして育成可能なのか?
ということが僕はもっとも気になります(笑)。人材開発が専門ですので。
これには個人的な性格やパーソナリティの影響、家庭の影響、早期教育の影響など、様々な要因が関係してくるでしょう。
しかし、もし万が一、それを後天的に獲得させたければ・・・おそらく、ここからは「妄想族」に入りますが、
1)本人にとっては「背伸び」を含む困難な状況に挑戦する経験を繰り返すこと
2)最初はフルサポートでも、達成にしたがい、フェイドアウトされていくサポートを得ること
3)自分の現在や未来を「ポジティブに意味づける習慣」を内面化すること
なのかなと思います。これらを一通り、何度も経験していくことが重要なのかもしれません。
それらの経験を通じて、ひとは自分に自信をもち、目標設定したり、ポジティブな原因帰属を行う習慣を経験学習するのかな、と思います。
結局は、経験と社会的サポートを通じて、心理的資本を高めていくなのかなぁ・・・と妄想します。
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今日は「心理的資本」という概念についてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
今日は、個人のレベルでこれを説明しましたが、考え方によっては、「組織レベル」でも、これは十分注目に値する概念のようにも思います。
つまり、世の中には
「高い心理的資本を有しているスーパーポジティブ野郎」が「わんさか」と集まる「スーパーポジティブ組織」
と
何をやってもドンヨリシケシケ後ろ向きの「スーパーネガティブ野郎」が集まる「スーパーシケシケ組織」
があるといった妄想も成立するような気がいたします。
心理的資本については、最近、日本でははじめてのことになる「翻訳」が刊行されました。「こころの資本」という本で、中央経済社から刊行されています。
翻訳者らに心より感謝するとともに、もう一度、この概念について学び直してみたいと考えています。
そして人生はつづく
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