2020.4.21 09:41/ Jun
リモートワークとは「家庭」と「仕事場」を「強制接続」してしまうことである!
今、日本中では、リモートワーク中に「子どもから繰り出される、パパママ攻撃」に悩んでいるビジネスパーソンが増えているのではないか?
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業種・業態・雇用形態にもよりますので、一概には言えませんが、新型コロナウィルスの感染拡大が進むなか、現在、多くの会社で、リモートワークが急速な勢いで進行しているようです。
1週間ほど前に、パーソル総研の小林祐児さん、渋谷和久さんたちが行った全国25000人の調査では、「緊急事態宣言後のテレワークの実施率は全国平均で27.9%。1か月前の13.2%に比べて2倍以上の伸びを示しているようです。
この実施率は、現在、感染拡大が懸念されている東京都に限れば49.1%(3月半ばは23.1%)。
約半数のビジネスパーソンが、自宅でPCの前にすわり、慣れないなかで、仕事をはじめている様子がうかがえます。
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ところで、一般に、リモートワークとは「オフィスに通わず、遠隔で業務を遂行すること」と認識されますけれども、僕がもつイメージはそれとは異なります。
僕にとって、
リモートワークとは「家庭」と「仕事場」が「強制接続」してしまうこと
を意味します。
近代以降、これまでビジネスパーソンは、「仕事」と「家庭」を分離して、その間を、自分だけが行き来しながら働いていました。それ以前の時代、たとえば家内制手工業の時代は「家庭」と「仕事」は分離されておりませんでしたが、近代という時代は、これを2つに分離してしまいました。
そして、この間を行き来する人が「特定のジェンダー」に偏っていた問題ーすなわち、男性に偏っていた問題ーが、要するに「性別役割分業」ということになるのかな、と思います。
しかし、リモートワークは、いとも簡単に「家庭」と「仕事場」を「強制接続」してしまいます。
(ということは、家庭内の状況、情報環境、家庭間の格差が仕事に影響することを意味しますが、それはまた別のところで)
もちろん、いくらリモートワークが導入されたといっても、近代以降、「家庭と仕事場」が分離していた時代が長かったため「これまでの慣習」は色濃く残っています。
この慣習にしたがい、ビジネスパーソンは苦労して「仕事場」に「家庭」の影響が及ばないように、及ばないようにしようとします。
リモートワークによって、それらはいとも簡単に強制接続されているのにもかかわらず、家庭が「見えない」ように、見えないように、仕事をしなければならない、というプレッシャーにさいなまれています。
しかしながら、そんなビジネスパーソンの思惑とは裏腹に、家庭とは、いつも「想定外のこと」が起こるものです。とりわけ幼い子どもがいる家庭では。。。幼い子どもにとって、「家庭と仕事」の「分離」も「強制接続」も知ったことではないのです。
オンラインで授業をしている最中に
「パパー、僕のレゴ、どこいった?」
と小さな子どもが「奇襲」をしかけてきたり、
オンラインでかなりシリアスな議論をしているときに、
「ねぇ、にいちゃんが、僕のクリームパン、食べちゃった」
と泣きながら入ってきたりします。
そんなことは朝飯前。
場合によっては、「ピンポーン、宅急便です」ということも多々あります。
「パパ、今日、ペットボトルのゴミの日だよ、ゴミだした? あっ、会議中なの?」
なんてのは、ニチジョウチャハンジ(笑い)。
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ビジネスパーソンとしては、もちろん、そうした「家庭の影響」を排除しながら、仕事を進めなければと思います。家庭が仕事に影響しないように、仕事場から見えないように、何とか苦闘します。
しかしながら、今まで分離していた「家庭と仕事場」を、緊急時ということで、無理矢理パコーンと「強制接続」しているのですから、そこには、どうしても、無理がでます。
ちょっと気まずいなとは思いつつも、「ちょっと、すみません。子どもが・・・なので、ちょっと席を離れます」ということになります。
後ろめたさを感じながら。
僕は、この気持ち、痛いほどわかります。
うちも、何度もそういう経験がありますので。
先日も、オンラインで授業をしていたら、6歳児KENZOが部屋に入ってきました。
奇襲です。
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この問題、様々な立場によって、その判断は分かれるでしょう。
しっかりと子どもには言い聞かせておかなければならない、という方もいらっしゃいますし、そうだとも思います。
仕事と家庭を分離してもらわなければ困るという方もいらっしゃいますし、それも、もっともなこととも思います。
なかには、ビジネスパーソンのなかには、本人のルーズな性格から、家庭と仕事が分離できない人もいるでしょう。そうした働き方には、一定の内省も必要でしょう。
しかし、おそらく、多くのビジネスパーソンは、子どもには事前には「パパとママは仕事をしているからね」と言い聞かせておくこと、諭しておくことはやっていて、それでも、彼らのもとには、不測の、想定外の、「パパママ攻撃」が訪れているのではないでしょうか。
以下は、わたしの個人的な見解になりますが、この問題を考えるとき、一番大切なのは、今が「平時」ではない、という認識です。
今は「100年に1度の緊急時」です。
おそらく「戦後でもっとも被害が広がる緊急時」です。
そのようななか、テクノロジーの進展によって、リモートワークが実現し、奇跡的に仕事ができている人もいる。
そんななか、やむをえず、突貫工事で導入されたリモートワークによって「家庭と仕事場は強制接続」されました。
よって、子どもや介護など、様々な事情を抱えるひとに、想定外のことが起こったとしても、それは「やむを得ない」と割り切ることも必要なのかな、と思います。「甘えさせてくれ」と言いたいわけではありません。仕事と家庭を分離しなければならないという慣習が残っていることも百も承知です。しかし、やむを得ないことも多々発生するのが、家庭であり、もはや、それはテクノロジーによって「強制接続」されている、ということです。
管理者としては、そうしたことは、どんなに本人が意識していてもおこりうることを理解したうえで、多くの人々が働ける職場をつくっていくことが求められるでしょう。
といいましょうか、今、社会に求められるのは「寛容さ」だと思います。
今もっとも社会で失われている「寛容さ」を取り戻さなければ「強制接続」された「家庭と仕事場」の狭間で悩むビジネスパーソンが増えるだけですし、また、この難局を乗り切ることはできないのではないか、とも思います。 リモートで働けなくなれば、多くのひとびとが路頭に迷います。さらに経済が止まります。
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今日はリモートワークによって、家庭と仕事場が強制接続されちゃって、パパママ攻撃に悩むビジネスパーソンのことを書きました(笑)
とかく、コロナウィルスはひとびとの間に、分断や怒りをつくりだします。家庭と仕事場の強制接続によって、分断や怒りが生まれなければいいのに、と思います。
「寛容さ」は「甘え」ではありません。
必要なのは「寛容さ」です。
そして人生はつづく
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