2020.3.3 07:21/ Jun
「説明力は3割くらいだ。それ以外の7割は、自分の状況で、自分の頭で考え、自分で持論を見つける他はない。経営学は、自分で考える余地を残す学問だ」
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せんだって、神戸大学の金井壽宏先生の退職記念パーティに伺ったときのことです。金井先生がおっしゃっていた言葉のひとつで、僕がとくに、印象に残ったものが、冒頭のそれです。
ここで「説明力」とおっしゃっているものは、
ある変数(A)が、ある変数(B)の「変動」を、どの程度の割合で、説明しうるかどうか
ということだとお考えいただけるとよいのかなと思います。
要するに、AがBをどの程度予測しちゃうかどうか。
この割合が3割くらいなら、AはBの変動を3割くらい予測する。これが10割なら、AはBをぴったり確実に100%予測できる。
(これ、厳密に書こうとすると、ここだけでデータ解析・統計の授業を14回やることになってしまうので、敢えてシンプルに、このくらいの記述にしておこうと思います)
そのうえで、「説明力が3割」というのは、わたしたちが生きるシャバの世界において科学的に、あるひとびとの「経営行動」や「組織行動」を予測できるのは、たかだか、3割くらいだ、ということです。
逆にいうと、複雑怪奇・魑魅魍魎なひとの行動は、そのくらいしか、予測できない、ということです。
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ここで、問題になるのは、この3割を高い、とみるか、低いとみるかです。
物質を扱っている自然科学ならば、物質自体には「意志」はありません。また物質が置かれている環境も、通常は「実験室」で安定しております。
ですので、物質を扱っている科学では、説明率は9割、場合によっては99%を求められる分野もあります。
しかし、人間科学、社会科学の場合はそうはいきません。3割くらいは科学の力で予測はできるかもしれない。しかし、残りの7割は、科学的には推測ができない。
じゃあ、7割はどうするか?
端的に申し上げれば、
残りの7割は、自分の頭で考えるほかはない。
ある行動主体が、どのような組織環境で、どのような職場環境で、どのような状況に置かれているかによって、この7割は、容易に変わりうるということです。
この事態は、一般的な自然科学の研究者からみれば、実に「嘆かわしく、かつ不確かに見える」ところもあるようです。
研究者によっては「ノイズをノイズで推測している」と揶揄する方もいらっしゃるとのこと。私自身も、他の分野の研究者に、同種のことを言われたことがあるので、よくわかります。
しかし、一皮むけばドロドロ血的な複雑怪奇・魑魅魍魎世界を生きる、人間行動が、3割しかわからないことは、それほど悲観するべきことでもない、ともいえます。
だからこそ、金井先生は「それ以外の7割は、自分の状況で、自分の頭で考え、自分で持論を見つける他はない」とおっしゃったのだと思っています。
そして、それゆえに、高らかに
経営学は、自分で考える余地を残す学問だ
と結論づけられたのではないかと推測します。
わたしは、そこに共感いたします。
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今日は、金井先生のご講義をもとに、人文社会科学における科学の役割とは何か、というお話をさせていただきました。
わたしが、学生によく申し上げるのは、
ひとに関する科学は、「大成功」を導くことはないと思うよ
でも、ひとに関する科学は、「オオゴケ」を防ぐことはできると思う
先人の肩にのったうえで、あとは、自分で考えるしかないよ
ということです。
だからね・・・どんなに経営書を読んでも「大成功」はしないよ。
でも、それは「無駄」ではない。
複雑怪奇な世界で、大失敗することをさけ、安定的基盤から、じっくりと、自分の頭で物事を考えることができる。
成功を導くのは、
自分の頭で考えること
です
ま、アタリマエのことですが・・・
そして人生はつづく
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なお、今日のブログは、金井壽宏先生(神戸大学)の退職記念式に、外部の講演者として守島基博先生(学習院大学)とともにお招きいただいたときのお話です。このとき、先生から伺ったお話をときに思い起こしております。金井先生におかれましては、一区切り、おめでとうございました。さらなるご活躍を心より願っております。
服部先生、金壽会のみなさま、そしてMBAの同門の皆様には、大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。平野先生や、鈴木先生、同門の先生方にもお会いでき、大変嬉しく思いました。暑く御礼を申し上げます。ありがとうございました!
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