2020.2.26 08:11/ Jun
コロナウィルスの広がりにより「人材開発」が危機を迎えています。
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現在、コロナウィルスの対応により、2月ー3月に開催される研修やワークショップが、軒並みキャンセルになっています(泣)。まだ、多くの企業では、影響は4月には及んでいません。が、ここにも何らかの影響が及びかねない事態が生じつつあるのを、多くの関係者の会話から、ひしひしと実感します。
人材開発の業界は、4月の新人研修が一年間最大の繁忙期でもあります。
企業の人事からすれば、多くの新人たちを、いかに短期間に、質をあげて「組織社会化」していくのか。ここに多くの投資がなされています。新人の適応にとっては、もっとも重要な時期です。
ここで「組織社会化」とは「企業に、新たに入ってくる人々を組織適応させ、同時に、組織において必要になる知識・スキル・マインドを獲得させること」をいいます。研修やワークショップの自粛・延期・中止は、この組織社会化を遅らせてしまいます。必要なものは、リスクを勘案したうえで計画的に実施し、確実に学んでもらうほかはありません。
民間の教育ベンダーの皆さまからすれば、4月は、もっとも「稼ぎ時」ということになります。企業にも寄りますが、1年間の売り上げの2割ー3割を、ここに頼っている企業も少なくないとききます。4月に悪影響が及び始めると、かなり厳しい、というのが実感かと思います。
コロナウィルスは「健康の危機」でもありますが、「人材開発の危機」でもあります。
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しかし「危機」を前に、わたしたちは顔を下げて、下を向いていくわけにはいきません。少なくとも、企業側には、できることがあります。
この状況に、いかに心折れることなく「できること」を探っていけるか、どうかも、また、わたしたちの「挑戦」なのかもしれません。
「脳天気」と言われるかもしれませんが、ここでどう立ち回るか、ここが試されているような気もします。願わくば、これを機会に、すべての人材開発の仕組みや内容を見直し、より「力強い人材開発」を模索できるのではないか、と妄想します。
ここは、まずは、いったん「深呼吸」しましょう。まずは、深く息をすってはいて、スーハースーハーとしましょう(笑)。頭を抱えたくなる気持ちは痛いほどよくわかります。僕も、ここ数日間、頭が痛い問題だらけですので・・・(泣)
そのうえで、研修・ワークショップが中止・延期にせざるをえない、迫り来る現実に対して「クールな頭」で、以下の5点を考えてみることも、また一計かと思います。
(なお、わたしは医療の専門家ではないので、下記に含まれる医療的な知識等々については、ご疑問が生じた場合、ご自身でご確認くださいませ!)
もちろん、これ以外にもあり得るかもしれませんが、ぜひ、皆さんで知恵をしぼって「集合知」を完成させられるとよいかなと思います。下記の5点は、そのための「頭出し」だとお考えください。
1.学習内容の選別
2.学習時期の選別
3.学習手法の選別
4.リスクへの対処
5.ルール・ポリシーの策定
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まずもっとも根幹にあると思われるのは「1.学習内容の選別」です。
どうしても必要な学習内容は何で、さして業務に影響しない学習内容とは何か?を選ばなくてはなりません。
その際に、もっとも重要な問いは、
もし、万が一、その研修がなくなったとしたら、現場でどんな悪影響が起こるか?
です。
もちろん、多くの研修は「必要だから」存在していると思います。しかし、この有事にあっては選別する勇気を持たなくてはなりません。
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つぎに「2.学習時期の選別」もできます。
今すぐに学ばなければならないものは何か? 前倒しができるものはなにで、後ろ倒しても問題がないものは何か?を考えます。もし開催が不可能になった場合、フォローの日程をどこで獲得できるかも、ここで考えなくてはならないことです。
学習内容と学習時期の選別が可能になってはじめて、講師などへの連絡が可能になります。キャンセルポリシーなどを確認のうえ、対応をとっていく必要があります。ここまでは早急に行わなくてはなりません。
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次に可能なのは「3.学習手法の選別」です。
コロナウィルスは「ソーシャルな病」です。要するに、ひととひとが出会う時期が、長ければ長いほど、その接触頻度や時間が長ければながいほど、リスクがまします。
この場合、フェイス・トゥ・フェイスの対面状況下で学ばなければならないものは何で、オンラインに置き換えが可能なのは何かを考えていきます。
オンラインの場合、メディアには個人のスマホを用いるのか。はたまた会社支給のPCを用いるのかを決めなければなりません。その場合のセキュリティはどうするのか、などなど考えるべきことは、多々あります。
その後は、ソフトウェアです。
オンデマンド動画を活用したり、ZOOMなどのテレカンシステムを用いれば、質はともあれ、たいていのことはできます。これらのトライ&エラーを行わなくてはなりません。
脳天気と言われるかもれませんが、この逆境をバネにしつつ、重い腰をあげ、「人材開発のDx(デジタルトランスフォーメーション)」を実現するのも一計です。
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つぎに「4.リスクへの対処」も必要です。
消毒液、マスクなどの準備はいうにおよばず必要です。一方、それらを個人で用意してもらうことも一計です。
万が一、患者がでてしまったときの対応やプロシージャをまとめておくことも重要です。また、もし研修施設で患者がでてしまったときに、他の研修をどうするか、施設自体をどうするかに関するコンティンジェンシープランが必要かもしれません。
また、今回のウィルス禍では、多くの人々が食べ物を共有すること、近い距離で接触することが危険だと言われているようです。懇親会などは大きなリスクかもしれません。
また長時間、密閉空間で、密集することもリスクを増すようです。時間の短縮、換気の実施、座席を離すなどの措置がありうるかと思います。身体接触をふくむワークなどは一時的に差し控えることも一計かもしれません。
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つぎに「5.ルール・ポリシーの策定」です。
このたびのウィルス禍は、個人が日頃から注意をして避けなければならない部分もあります。ウィルスに対する正しい知識を教え、もし万が一、何かがあったときには、どのような行動をとらなければならないか、に関するルール・ポリシーを策定する必要があります。
もし、万が一、病人がでてしまった場合、誰が、どのように、連絡を行うのか。それは勤務になるのか、ならないのか、など各種のルールが必要です。
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もちろん、実務的には、これ以上、さまざまなことがありえるでしょう。ここで書いたことくらいは、すでに通常の人事担当者は、考えつつあることかと思います。くどいようですが、上記は頭出しです。皆さんで知恵をしぼっていけるとよいですね。
新人さんにとって、組織社会化の時期は、とてつもなく重要な時期です。いろいろ考えをめぐらせたうえで、冷静な対応で、貴重な人材をお迎えできるといいですね。また、これを機会に人材開発の在り方を見直せるチャンスかもしれません。この逆境をうまくはねのけ、「力強い人材開発」を創りだしていけたとしたら、素晴らしいことです。
いずれにしても、わたしが申し上げたいことは、下記の通りです。
気持ちが「下」を向くときだ。
度量が試されるのは、
いつだって、そういうときだ。
気持ちが「下」を向いて、
意気消沈しているときこそ
ぼくらは、顔を上げよう。
前を向いて歩こう。
転んでも、ただで起きぬ。
転んで、賢くなろう。
賢くなって、笑おう。
ともに、何とか、この危機を乗り越えられたとしたら、素敵なことです。
そして人生はつづく
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