NAKAHARA-LAB.net

2019.12.6 06:40/ Jun

「戦艦ヤマト化した研修体系」に巣食う「ゾンビ研修」は「成仏」させたほうがいい!?

「戦艦ヤマト化みたいになっちゃった会社の研修体系を、見直したいんです。年次・階層・選抜・カフェテリア・・・様々な研修が、やたらめったら存在していて、なかには存在意義がなくなっているように感じられるものもあります。
   
でも、導入には、いろいろな「過去の経緯」や「組織の事情」もあったみたいで・・・内部の議論だけでは限界もあります。先生、外部の視点を活かして、私たちの議論に参加してくれませんか?」
  
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 今年になって、僕のところに寄せられた、人事の方々からの数件のご依頼がこちらです。
 ご依頼主が、元・受講生だったり、以前お世話になっていた方だったり、仕事で接点のある方でしたので、いずれも半日程度お付き合いすることになりました。
  
 仕事柄、各社の「研修体系」というものをよく拝見しますが、研修体系が充実している会社は、冒頭のお話のように「とてつもなく巨大な研修体系」をもっているところもございます。
  
 その様相は、まるで「戦艦ヤマト」
 全長263メートルありーの、46センチ砲ありーので、まことに「重厚長大な研修体系」になっております。
 
 今年になって数件、こうした会社で、「今ある研修体系」を見直して、資源を「選択・集中」させたいというご要望がございました。人材開発の費用を減らすというわけではなく、体系を見直して、よりスリムで骨太のものにしたいというご要望であったと記憶しています。
  
  ▼
  
 A3用紙にびっしり描かれた研修体系・・・
 すなわち、「戦艦ヤマト化した研修体系」を目の前にしながら、みなで議論をする。
  
 こうした場合、議論といっても、「僕」が議論するのではありません。
  
 基本的に、僕が行うのは、
  
「万が一、この研修が明日なくなったとしたら、経営と現場に、どんな悪い影響が起こりますか? 誰が困りますか?」
  
「この研修は、経営と現場に、どんなよい影響をもたらしていますか? この研修を受けて、現場の誰が感謝しますか?」
  
 という質問を発することだけです。
  
 これら一連の問いに対して、議論を行っていただくのは、基本的に会社の方々です。
 答えをだすのも僕ではありません。
  
「なにせ、僕の会社の研修体系ではありません」
  
 自分の会社の研修体系の未来に答えをだすのは、あくまで、自分の会社のひとだけであると僕は思います。
  
 僕の役割は、既述したように「質問をさせていただくこと」
 そのうえで、議論の様子をじっと伺っていて、ときおり、介入しなければならないときだけ、フィードバックをしたり、質問をさせていただいたりします。
  
「今の議論は、かみ合っていないように僕には聞こえますが、それについてはどう思いますか?」
  
「今のご質問の意図と、それに対する答えがズレているように感じますが、それについては、どのようにお考えですか?」
  
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 このような議論を半日かけて行っています。
 僕のかかわりは、「研修体系を見直す」ための「プロセスコンサルテーション」を行っているといってもいいのかもしれません。
  
  ▼
  
 このようなミーティングを数件経験して、つくづく思ったことがあります。
 それは「戦艦ヤマト」という「研修体系のためのメタファ」もさることながら、
  
 この世には「ゾンビ化した研修」というものが多数存在するのだ
  
 ということです
  

  
「ゾンビ化した研修」とは、いわば「ゾンビ」のように、「時代にあわなくなっているけれど、死に切れていない研修=ゾンビ研修」のことです。あるいは、「担当者が変わって、過去の経緯すらわからなくなっている研修」といってもいいのかもしれません(笑)
  
「戦艦ヤマト化した研修体系」の内部には、いわば「ゾンビ」のように、実質的には「死んでいる(dead)」のだけれども、いまだ形式上「生き残っており(Living)」、目標をすでに失い、組織のなかを、当てもなく彷徨っているような(Go nowhere)研修が、含まれているのだ、と、つくづく思いました。
  
「万が一、この研修がなかったとしたら、経営と現場に、どんな悪い影響が起こりますか?」
  
 という質問に対して
  
「いやー、悪い影響はないと思います。ただ・・・この研修は、当時の副社長の「肝いり」ではじまったものみたいなので、やめられないのかなーなんて思っているんですよね」
  
 とかいうお答えが返ってきたり・・・
  
「この研修は、経営と現場に、どんなよい影響をもたらしていますか?」
  
 という質問に対して
  
「よい影響ですか・・・(5秒沈黙)・・・見当たらないですね。この研修は、当時の役員層と、研修会社の方が「ご友人」だったらしくって、導入の経緯は、あまりわかんないんですよね。何度も辞めようという議論がでているのですが、辞め切れていないんですよね」
  
 とかいう答えが返ってきたりします。
  
 そんな答えを聞くと、ついつい「現場」を思います。
 現場には、長時間労働是正の圧力のなか、一生懸命仕事をなさっている方も少なくないので、
   
 そんなゾンビ研修を受けるくらいなら、仕事した方がマシだ
 そんなゾンビ研修に招集されるくらいなら、仕事をさせてくれ
   
 と思うだろうな、と深いため息がでたりします。
    
 ゾンビ研修には、はやく「成仏」していただいた方がいい
    
 のではないでしょうか。
  
 もちろん、決めるのは、僕ではないと思いますけれども・・・。
  
  ▼
  
 今日は「戦艦ヤマト化した研修体系」に巣食う「ゾンビ研修」のお話をしました(笑)。
  
 僕の基本的スタンスは
  
 ・研修は「ミニマム」でいい
 ・不要な研修を受けるくらいなら、仕事をしたほうがいい
  
  しかし
  
 ・「必要な研修」は絶対に存在する
 ・研修をやるなら、絶対に仕事に活かせるものにする
  
 という信念を持っていますが、みなさまはいかがでしょうか?
 もっとも・・・このことは、あらゆる教育機関についても同じ事がいえますね。膨らみに膨らんだカリキュラムを前に、整理のつかない授業や学習機会が増えていく。スリムに、筋肉質に、そして身軽にありたいものです。
  
  ・
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  ・
  
 あなたの会社の研修体系は、「戦艦ヤマト化」していませんか?
 あなたの会社には「ゾンビ研修」がウヨウヨしていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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