2019.8.28 06:59/ Jun
研究者と実務家のコラボレーションが、うまくいかないのはなぜか?
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分野にもよりますが、「実践現場をもつような学問」の場合、「研究者と実務家のコラボレーション」などが「よきもの=理想」として「喧伝」されます。そして「実践的研究」だったり「研究に裏打ちされた実践」だったりが夢想されたりします。
僕は、これまで数多くの共同研究を、実務家のみなさまと「達成」してきました(心より感謝です!)。そのなかには、数多くの試行錯誤もありましたし、成功もありました。
「実践現場をもつような学問」においては「実務家と研究者のコラボレーション」は、ひとびとを魅了する「ロマンチックワード」のように語られます。
しかし、そこには一定の難しさや落とし穴が存在しているように思います。今日は、そのなかで、もっとも「根源的で、ハマルとヤヴァイ落とし穴」である「相互理解の欠如」について書いてみましょう。
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ここで「相互理解の欠如」とは、
研究者と実務家が、それぞれ異なった目的をもち、ことなった基準で、意志決定を行い、行動していく存在であるという「違い」を十分認識できていないこと
をさします。
そうしたお互いの存在の認識の欠如によって、さまざまなコミュニケーションロスが生まれたり、役割分担のミスが生まれたりします。
端的に申しますと、研究者と実務家は、同じ領域で仕事をしていたとしても「異なっている」のです。
たとえば、
研究者は「すべてを理解」しようとします
「理解」してから、「実践」することをよしとします。
研究とは「すべてをわかろうとすること」です
「わかった」あとに「実践」があります
また、研究者の時間感覚は「年単位」です
じっくり物事に向き合い、年単位でアウトプットを考えます
一方、
実務家は「実践のためにこそ理解」します
すべてを「理解」しなくても、意志決定を行います。
実務とは、「限定的合理性」のなかで、明日を信じて「前に進む行為」です
ですので、実務とは「信じること」です。
「実践」のためにこそ「理解」があります
また、実務家の時間感覚は「月単位」です
期初・期末を意識しながら、「月単位」で物事を考えます
このように、ざっと書いただけでも、研究者と実務家は、一見、似ているようで「相当異なる」のです
もちろん、違いはこれだけではなく、たくさん存在しています。
実務家と研究者のコラボレーションのためには、その「違い」を前提としたうえで、
1.いかに目的を共有し
2.いかにコミュニケーションをとり
3.いかに落とし所をさがし
4.いつまでに、どちらが何の役割を担い
5.何をアウトプットとするか、
を考えなくてはなりません。
ですので、
実務家と研究者のコラボレーションは「仲良くすること」ではありません
実際には、
実務家と研究者のコラボレーションは「違い」を受け入れ、腹をくくり、それでもともに前に進もうと腹をくくる覚悟
なのです。
そうした「違い」に関する認識が欠如している場合、また、実務家と研究者のコラボレーションといいながら「腹をくくる覚悟」がない場合に、実務家と研究者のコラボレーションはあっという間に頓挫する可能性が高まります。
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気をつけなければならないことは、
「実務家と研究者のコラボレーション」は、いわば「ロマンチックワード」であるということです。
この他にも、
研究と実践を架橋する
とか
研究と実践をつなぐ
とか、人々を魅了する「綺麗な言葉」が、学会のシンポジウムやら機関誌やら、Webページでは踊ります。
そのルートイメージにあるのは「研究者と実践者がいかに仲良くするか、その関係を良好にたもつか」というイメージなのかな、と思います。
しかし、かつて数多くの共同研究をなしとげてきた僕のイメージは、それらとは大きく異なります。
研究と実務には「違い」があることを認める
そして、お互いの存在すらも、行動原理すらも「違う」ことを認識する
そして「違う」からこそ「同じ目標」をさがす
違うからこそ、「腹をくくって」ともに前にすすむ
僕には、こういうイメージがございますが、いかがでしょうか?
研究者と実務家のコラボレーションは、「みんな仲良く、おてて、つないでチーパッパ」じゃないYO!
そして人生はつづく
(いつか「実践的研究入門」とか「共同研究入門」とかを書けるかもしれませんね・・・そのまえに、今抱えている原稿をなんとかせい、というお叱りが、多方から聞こえてきそうですが・・・)
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