NAKAHARA-LAB.net

2019.8.26 05:40/ Jun

「外の世界」の人々の「ひと言」効果とは何か?:「あなたが気づけばそれでよろしい」という「悟りの境地」!?

「何を言われるか」も大切ですが、それ以上に「誰に言われるか」が重要です
 
 そして、
   
学生に「刺さる」のは「教員の言葉」ではなく、市井のひとびとの「一言」だったりするものです
   
  ・
  ・
  ・
   
 僕は、学部・中原ゼミの学生には、可能な限り、僕が関係する「大学外の様々な人々」に出会わせてあげたいと思っています。
   
 僕が教える社会人を対象とした講座、僕が様々な企業で行っている講演、僕が深く関係している企業の方々、中原と関係のある大学教員の主宰しているゼミ・・・・etc
  
 ひとつひとつあげていけば枚挙にいとまがありませんが、これらの大学外の、僕が関係している場に、先方に無理を申し上げてご許可をいただき、なるべく学生たちをオブザーバーとして参加させてもらっています。
    
 連れて行く学生は、もちろん、無理矢理ではありません。学業に差し支えない範囲です。
 また、僕の教育の信念は「自ら動きたい、と願うひとを応援すること」です。
 ですので、自発的な意志で動きたい、という学生を毎回募り、外の世界に連れ出しています。
  
 とかくキャンパスのなかにこもりがちで、イツメンとウダウダしたがる学生たちに、もし望むのであれば、「外の世界」を見せてあげたいと願っているのです。
   
  ▼
   
 このようなことを僕が積極的に行っているのは(結構、大変なのですが・・・)、そこに「確かな教育効果」を感じているからです。
  
 やや自爆気味に申し上げますが、
  
 学生たちは、同じことを大学教員の「僕」が言うよりも、「外の世界」のひとに指摘された方が、どうやら「刺さる」ようなのです(自爆)
   
 といいますのは・・・学生たちを「外の世界」に連れ出し、「外の世界」の方々にフィードバックをもらう段になると、よくこんな台詞に出会います。
    
  ・
  ・
  ・
  
学生A「先生、課題の深掘りが足りてないって、XX会社のXXさんに言われました。論理思考ができていないってことですよね。はじめてわかりました」
    
 そんなとき、僕は、心の底で、ひそかに、こんなことを思っています。
  
僕「あのさ・・・だから、僕だって、前から言ってたじゃん。君らの提案には、論理に飛躍があるって。僕が言ってたことと、同じこと言われてるだけじゃん。君ら、はじめて指摘されたんじゃないでしょ」(自爆)
  
 あるいは・・・
  
学生B「先生、人材開発のことを、XX企業のXXさんに聞かれて、自分は全然理解できていないって気がつきました。やっぱり本を読むのは大事ですね。はじめてわかりました」
    
 そんなとき、僕は、心の底で、こう思っている。

僕の心の底の声「あのさー、だから、前から、本読めって言ってたよね。君ら、基礎知識がなさすぎるよって。本読めって、はじめて言われたんじゃないでしょ・・・」(自爆)
  
 学生を外に連れ出すと、一事が万事、こんな感じです。
  
 外の世界のひとの「一言」は、刺さる。
 しかし、教員の僕の言葉は、刺さらない。
  
 外の世界の一言はいつも「はじめて言われた」になる。
 いや、はじめてじゃねーよ。
 僕、ずっと前から、言ってたよ(笑)。
    
 いやはや、僕の言葉の軽さ、指導力不足を痛感します(笑)
  
  ・
  ・
  ・
  
 いやー、正直に、本音を言えば
    
「おんなじことを、言っているのにな」
   
 と思うこともある。自分の無力感も感じる(笑)。言い方が悪いのかな、とかタイミングがズレてんのかな、と思うこともある。ちょっとジェラシーも感じる(自爆)。
    
 だけど、そこは、不肖・中原、そこはとうの昔に「悟りの境地」に入ってる。
 南無ー(ナームー)。
   
 結局、誰が指摘しようと、学生が「気づけば」いいのです(笑)。
 彼らが「変われば」、教員としては、それでよろしい。
   
 教員が「学び手の中心」にいなくてもいい。
 彼らが「変われば」、それでよろしい。 
   
(脚注:教員というのは、自分が「学び手の中心」にいたがる生き物でもあります。ひとによっては、自分以外の教え手が生まれることを極端にいやがる方もいます。お早く、悟りをひらくといいと思いますが・・・笑)
  
  ▼
  
 今日は、「外の世界の一言」と「自分の言葉の耐えられない軽さ(笑)」についてかきました。
 まぁ、学生が「気づき」、そして「変わる」きっかけをもてれば、教員としては、それでよろしい。
  
 かくして、学生を「外の世界」に連れ出す算段をまた立てているところです(結構、大変なんです・・・)。
  
 そして人生はつづく 
  
 ーーー
     
残業学プロジェクトでご一緒させていただいてきた盟友の岩崎真也さんが(議論に議論を重ね、教材をつくりあげていきました!)、「職場に対話を促しながら、職場ぐるみの組織開発で、働き方を改革するやり方」について解説なさっています! 
     
働き方改革から組織開発へ 本当の働き方改革に求められる「次の一手」とは~
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201907020001.html
     
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
    
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フィードバック入門等で御一緒させていただいているPHPさんで、登壇の機会をいただきました。「部下育成のスキルを伸ばす」というテーマで、1on1やフィードバックのやり方、効果について講演させていただきます。9月10日・東京開催です。どうぞお越しいただけますと幸いです!
  

9月10日・東京開催「部下育成のスキルを伸ばすー1on1とフィードバック」
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
   
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新刊「残業学」重版出来、6刷決定です!(心より感謝です)。AMAZONの各カテゴリーで1位を記録しました(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
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