2019.4.11 06:55/ Jun
新年度を迎え、4月11日です。おそらく、この時期になりますと、日本全国で、新入社員たちのなかには、下記に示すような「心の叫び」が、生まれている頃だと思います。
こんなハズじゃなかった・・・
ヤバイ、わたし、選択を間違ったかも・・・
この組織を選んだのは、ハズしたかも・・・
ババ引いちゃったかも・・・
嗚呼、こんなハズじゃなかったのに・・・
新たに自分が就職したりした組織が、自分が当初思い描いてものとは、かけ離れていた。そのイメージの違いによって生まれてくるのが、こんな思いです。
こんなハズじゃなかったのに・・・
4月も中旬に入りますと、日本全国には「こんなハズじゃなかったのに病」にかかった新入社員たちが、3万6千人くらいいらっしゃるのではないかと推察します。社会人だけで亡くて、新入生なども含めたら、10万人くらいはいるんだろうか?(笑)
「こんなハズじゃなかったのに病」は、症状が行きすぎると「早期離職」につながります。昨今は、新入社員研修の間から「転職サイト」への登録をする人も増えているのだとか。
まあ、基本的に、どのような場所で、どのような働き方をしようと、大の大人は「自由」です。基本は「あなたの、好きになさいな」ですね。ただ、流行病のような「こんなハズじゃなかったのに病」は、突発的な行動を生み出すので、注意が必要です。
流行病のような「こんなハズじゃなかったのに病」にパニックになってしまい、必要以上も離職を生み出してしまっているとしたら、余り望ましい事態ではありません。
ですので、今日は、「こんなハズじゃなかったのに病」で離職を選択する前に、すこしだけ考えておきたいポイントを3つにわけてご説明します。
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3つのポイントとは下記の通りです。
1.多かれ少なかれ、どんな組織に入るときでも「リアリティショック」は存在する
2.今、感じている「リアリティショック」は「会社へのリアリティショック」か「社会へのリアリティショック」かを見分ける
3.新入社員時期は「剥奪的な社会化」によって「アイデンティティロス」に陥りやすいことを知る
まず1の「多かれ少なかれ、どんな組織に入るときでもリアリティショックは存在する」です。
こちらは、書いてあること、そのままですね。
今、新入社員のあなたは、自分の組織への参入時に、「こんなハズじゃなかったのに・・・」という思いを抱えています。組織のエントリー時に、人が感じるネガティブな思いや、当初抱いていたイメージとのズレは、専門用語で「リアリティショック」と申します。そして、このリアリティショックは、どんな組織であろうと、新たにひとが参入しようとする際には生じます。
「今の会社」に入社した時に感じたリアリティショックは、程度の差こそあれ、「違う組織」に入社しなおしたときにも感じてしまうものだよ
ということですね。
程度の差こそはあれ、ひとは、どこに行っても、違和感だらけなのです。
だから「リアリティショック」が生じたことを理由にして、早々に離職を決めてしまうと、新たな組織でも「リアリティショック」を感じることになってしまうよ、ということなのかなと思います。
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次に、2「今、感じているリアリティショックは、会社へのリアリティショックか、社会へのリアリティショックかを見分ける」はいかがでしょうか。
これは、教育機関を出た新入社員という物は、実は2つの新たな世界へのエントリーを行っています。
つまり、「社会人の世界」と「会社の世界」のふたつです。
ということは、今、感じている「リアリティショック」は、「社会人生活を始めることになった事に対するリアリティショック」なのか「自分の会社に対して感じているリアリティショック」なのかを峻別する必要があると思います。
最悪なのは、「社会人生活を始めることになった事に対するリアリティショック」を「自分の会社に対して感じているリアリティショック」とまぜこぜにしたり、取り違えたりして、不用意な離職につながってしまうことです。
だって、そうした場合には、その会社を辞めたって、社会人として働く時に感じる違和感は、減ることはないでしょう。どこの会社を選んだって、社会で働く限り、たいした変わらないのですから。
大丈夫、どこにいっても「違和感だらけ」です(笑)。
大丈夫、あそこでハナクソほじってるオッサンだって、社会で、やっていけてるんだから。
▼
3の「新入社員研修時期は「剥奪的な社会化」によって「アイデンティティロス」に陥りやすい」は、どうでしょうか。
学術的には、新入社員研修のように、新たに入ってくるメンバーを、その「組織のひと」に仕立て上げることを「組織社会化」といいます。そして、新入社員時期というのは、それが過剰に凝縮して行われる傾向があります。何せ、新入社員研修というのは、やる側からすると時間がないのです。時間がないなか「さっきまで学生だったひと」を「社会人」に仕立て上げなければならないので、社会化を急ぐ場合がございます。
そうしたときに行われるのが、いわゆる「剥奪的な社会化」です。
すなわち、これまで自分が持っていたアイデンティティを一時的に揺らがせたり、壊したりして、新たな社会人というアイデンティティをつくりだそうとするのです。
たとえば、
「いつまでも、学生気分じゃいるんじゃない!!!」
という叱責や、
「今までの君たちのやり方は、学生だから許されていたけど、これから社会人になったら、そのやり方は、もう通用しない」
といった物言いは、その典型的なものです。
大丈夫、こんな叱責、日本全国津々浦々で、1日5万回は生み出されています。
これまでの「学生」というアイデンティティに亀裂を生み出し、新たな「社会人」というアイデンティティをつくりだそうとしがちです。多かれ少なかれ、程度の差こそはあれ、多くの新入社員研修で、このようなアイデンティティ操作は、行われます。そして、このような「剥奪的な社会化」のときに、新入社員は、「アイデンティティロス」を感じやすいのですね。でも、大丈夫、長くは続きません。剥奪的な社会化なんて、新入社員研修のときの恒例行事です。
ちなみに、この「剥奪的な社会化」には闇もございますことを指摘しないわけにはいきません。これが行きすぎると、非常にマズイ事態になる。
この世には、ドサイアクな新入社員研修、新入社員研修のベンダーというものがあって、意味のわからない叱責や、ハラスメントまがいの指導を行うところもございます。わたしとしては、人材開発の研究者として、そうしたコンプライアンス違反のベンダーや試みの「根絶」を願っております。
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今日は、「こんなハズじゃなかったのに病」というメタファを用いながら、組織社会化研究の知見をときおり引用しつつ、新入社員時期に感じる違和感の根源を考えてみました。
端的にいってしまえば、
どこだって「リアリティショック」は感じるよ
たいして、どの組織でも変わんないよ
その「リアリティショック」は新入社員時期は、時に強く感じるよ
リアリティショックは長くは続かないよ
ということでしょうか。
もちろん、行きすぎた指導やコンプライアンス的にマズイ社会化は、行けません。また、大の大人が、最終的にどんな仕事をしようが、それは「好きになさいな」です。
でも、本気のブラック企業はさておき、程度の差こそはあれ、どこに行っても、新入社員時期の「リアリティショック」や「違和感」などは、たいした変わらないというのが、社会人のハダカンではないでしょうか。
ともかく・・・新入社員の皆さんが「こんなハズじゃなかったのに病」を克服なさり、明るく楽しく仕事に迎えることを願っております。
あなたの組織には、「こんなハズじゃなかったのに病」に罹患している新入社員がいらっしゃいませんか?
そして人生はつづく
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