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2019.3.25 07:11/ Jun

「副部長に就任した話」はもう聞きたくない!? : 「リーダーシップ肩書き症候群」にご注意を!

「就職面接で、これまであなたが経験してきたリーダーシップについて語ってください、とお願いをしたんです。そしたら、みんな「肩書き」のことしか話をしません。
  
クラブの副部長になっただの、部活の副部長になっただの。それも、みんな、判を押したように副部長なんです。日本には、なんで副部長が、そんなに多いんですか?(笑)
 
こちらは、肩書きの話をしてほしいわけではないのです。リーダーシップを話して欲しい。
  
誰もが手をつけないこと、未解決の課題に、ひとびとを巻き込みながら、どのように取り組んだのかを話して欲しいのです」
  
 ・
 ・
 ・
  
 先日、ある採用担当者の方と話していたら、こんな話になりました。その方は、就職希望の学生に、面接などで
  
 「リーダーシップを語って欲しい」
  
 とお願いをしていました。そうしたら、多くの学生が「ほにゃららの肩書きに就任したこと」を話し、それ以上のエピソードを語ることができなかったことに、違和感をもっていたそうです。
 もちろん、肩書きからはいってもいいのです。しかし、大切なのは、その肩書きよりも、その状況で「他人と何を成し遂げたのか? そのとき、自分はどのような影響力を行使したのか?」ということ。それに関する言及がほぼないのが、違和感の元だったそうです。
  
  ▼
  
 リーダーシップの定義には、様々なものがございます。ただ、近年、わりとひろく用いられている定義は、リーダーシップを「現象」としてとりあげる視点です。
  
 すなわち、
  
1.共通の目的にむかって
2.ひとびとが貢献・影響力を行使し合いながら
3.ワイワイと進む「現象」
  
 をリーダーシップととらえる考え方が、徐々に趨勢になりつつあるような気がします。
  
 先ほどの採用担当者の方が、リーダーシップを語って欲しい、とおっしゃっていたのは、まさにこの考え方の延長上にあられるのかな、と思います。
  
 その考えは、
  
「誰もが手をつけないこと、未解決の課題に、ひとびとを巻き込みながら、どのように取り組んだのかを話して欲しい」
  
 というお言葉に端的にあらわれているような気がします。
  
  ▼
  
 同様の話は、実は、グローバル企業の執行役員を決める面接などに取り組まれていた、外国人のAさんからもうかがったことがあります。
  
 曰く、
  
「あなたが過去に関与してきたリーダーシップを聞かせて欲しい」
  
 という依頼をすると、日本人管理職のなかには、
  
「わたしは、X年に課長になって、Y年に部長になり、Z年に本部長になりました」
  
 としか答えられないひとがいる、とおっしゃっていた記憶があります。この事例も、先の学生と同じ症状かもしれませんね。
  
 すなわち、
  
「リーダーシップ肩書き症候群」
  
 です。
   
  ▼
  
 今日は「リーダーシップ」という言葉と肩書きについて書きました。
  
 あなたの経験してきたリーダーシップについて聞かせてください
  
 と他者から依頼を受けたら、あなたは何を話しますか?
  
 あなたは、リーダーシップ肩書き症候群に感染していませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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