2019.3.22 06:13/ Jun
人間らしく生きようとするならば、
自ら、物事に「名前」をつけることーすなわち「命名すること」である(Name the World)
(Freire, P.)
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精神に問題を抱えたり、アルコール依存などに苦しむ人びとが、北海道浦河の地で共同生活を営む家に「べてるの家」がございます。全国的にとても著名な事例になっているので、ご存じの方も多いかも知れません。「べてるの家」では、自分の抱える病気や生きづらさに対して「当事者研究」というものが行われるといいます。
ここで「当事者研究」とは、「病に苦しむ本人」が、自分の病気の「当事者」となり、自分が抱えている「生きづらさ」に関する研究を行うことをいいます。
自分の病気が(たとえばパニックが)、いったい、どのようなときに起こり、どのような影響力を他に及ぼし、それをどのようにすれば克服することができるのか。
それらの問いに対する答えを、病に苦しむ当事者たちが、同じように生きづらさを抱えている人々とともに考えていき、自分の病気に「名前をつける」のです。精神のプロフェッショナルたちに問題を解決してもらうのではない。あくまで問題の所在を「当事者」たちが引き受けていくのです。
ここで貫かれている方針は、
「自分自身で、共に」
「自分でつけよう、自分の病名」
たとえば、ここで「幻聴」に苦しむAさんがいるとします。べてるの家では、「幻聴」という病を、まずは本人(Aさん)と分けます。そしてこれを「幻聴さん」とよぶ。そして、「幻聴さん」が、どのようなときにAさんに引き起こされ、Aさんをどのように苦しめるのか。それをどのように対処することができるのかを、ともに考えます。
もちろん、このアプローチでは、「病気の根源」自体は、消失はしないかもしれません。しかし、問題を抱えつつも、共存することはできる。
べてるの家は、
「今日も明日もあさっても、順調に”問題”だらけ」
なのだといいます。
しかし、一方で、精神医療のプロフェッショナルによって収奪され、薬物づけになってしまう状況を変えることができる。プロフェッショナルによって奪われた「苦労を取り戻すこと」ができる。
これを物語るかのように、べてるの家で、ひとびとによって交わされる会話は、非常に特徴的です。
「自分の行き詰まりに、手応えを感じます」
「この困り方は、いい線をいっているね」
「悩み方のセンスがよくなってきた」
しかし、こうした物言いの力強さを侮ってはいけません。
自分の手によって「名付けること」ができた痛みや葛藤は、本人に「手応え」を覚えさせ、不思議と、和らぐのだというから不思議です。
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今日は「自分自身で命名すること(Name the world)」ということを、「べてるの家」の事例をもとに考えてみました。
ふりかえってみれば、わたしたちは、多くの物事を、プロフェッショナルに依存し、手放してしまっているようにも思います。そして、他者に「名前をつけること」を委ねてしまっている。
本当に大切なことは、
自分を「他者に預けっぱなしにしない」こと
自ら「名前をつけること」をあきらめないこと
自ら「探究を行うこと」
なのかな、と思います。
あなたは、他者に「名付けられた世界」を生きますか?
それとも、自ら「名前をつけた世界」を生きますか?
探究の主体たれ
そして世界を命名せよ!
そして人生はつづく
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