NAKAHARA-LAB.net

2019.3.12 07:47/ Jun

「自分」と「他人から貼られるラベル」のお話!? : デュシャンは「便器」を置きたかっただけだった? エジソンは「音楽」を持ち運びたかっただけだった?

 ピカソは、自分を「キュビズムの創始者」だと思っていたのか?
 デュシャンは、自分のことを「現代芸術の作家」だと思っていたのか?
    
 ヘミングウェーは、自分のことを「文学者」だと思っていたのか?
 エジソンは、自分を「発明家」だと思っていたのか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 山奥でセッションを重ねているせいか、ここ数日、脳裏をかけめぐる「問い」があります。それは「他人からみた自分のイメージ」と「自分」にどのような関係があるのか、ということです。
(わからない方は、昨日のブログをお読みくださいませ)
  
 ピカソは、自分を「キュビズムの創始者」だと思っていたのか?
 デュシャンは、自分のことを「現代芸術の作家」だと思っていたのか?
 ヘミングウェーは、自分のことを「文学者」だと思っていたのか?
 エジソンは、自分を「発明家」だと呼ばれたかったのか?
       
 冒頭、僕は、4つの問いをだしましたが、これらはいずれも、
   
1.「ある著名な業績をなしとげた人々」が、他人から受けたラヴェリング(レッテル貼り)に対して、
    
2.本人は、心の底では、いったいどのように思っていたのか?
    
 ということを命題(仮説)として表現しています。
  
 これらの仮説に対して、僕は歴史学者でも、何でもないので、これらの仮説を「史実」や「資料」にもとづいて検証することはできません。
 しかしながら、あくまで勝手な想像でしかないのですが、ついついこんな妄想をしてしまうのです。
  
 その妄想とは・・・・
  
 これらの仮説に対する4人の偉人たちの回答は、すべて「NO(いいや、違う)」という妄想です。
 つまり、こういうことです。
   
 ピカソは、自分を「キュビズムの創始者」だと思っていなかった。
 彼は、描きたい絵を、彼が見たままに描いただけだった。
 彼が、気にしていたのは、
 「泣く女」をいかに彼がみたままに描くか、というそのことだけだった。
  
 デュシャンは、自分のことを「現代芸術の作家」だと思っていなかった。
 彼は、美術館に「便器」をおいたら、どんなに楽しいだろう
 どんなに「ワクワク」することが起こるだろう、と想像していただけだった。
 デュシャンは、それを実際に行動にうつした。
 まさか、こんな風になるとは思っていなかった。
  
 ヘミングウェーは、自分のことを「文学者」だと思っていなかった。
 ヘミングウェーは、単に、キューバの老漁師サンチャゴとカジキとの死闘を描きたかっただけだった。
 後世のひとびとが、彼を「偉大なる文学者」と呼んだ。
 彼は書きたいものを書いただけだった。
   
 エジソンは、自分を「発明家」だと思っていなかった。
 彼が心を砕いたのは、音楽をコンサート以外の場所で聞くことができたら、素晴らしいだろうなということだけだった。
 無我夢中になってものを作り続けた結果、ひとびとの暮らしをよくしていた。
 彼は知らず知らずのうちに「発明家」と呼ばれるようになった。
  
  ・
  ・
  ・
  
 くどいようですが、ここに書いてあることは、僕の「妄想」でしかありません。
 しかし、僕は、すこしの「確信」をもって、きっと、これらの希代のクリエイターたちのことを妄想するのです。
  
 彼らは、「何かをしたかった」だけだったのではないか
 彼らは、自分につけられる「ラヴェル」を意識して仕事をしていたわけではなかったのではないか
 彼らが、気にかけたものは「自分のしたいこと」であり
 彼らは、もっとも気にしなかったのは「自分がどう呼ばれるのか」
 
 ということではなかったのか、と。
    
 しかしながら、ここには、「他者からみた自己」と「自己」のあいだの、微妙な関係が示されているような気がします。
  
 ラベル上等、ご勝手に!
  
  ▼
    
 今日のブログは、壮大なる妄想となりました。
 皆さんは、どう思われますか?
    
 あなたは、何を気にしていますか?
 あなたは、何をしたいですか?
 あなたは、他人にどのように呼ばれたいですか?
     
 そして人生はつづく
      
  ーーー
    
新刊「データから考える教師の働き方入門」(辻和洋・町支大介編著、中原淳監修)好評発売中です。1日の労働時間が約12時間におよぶ、先生方。その働き方を見直し、いかに持続可能な職場をつくりだすのか、を考えます。「サーベイフィードバック方の組織開発を応用した働き方改革」の事例として、教育機関以外の組織でも応用可能です。どうぞご笑覧くださいませ
  

  
  ーーー
  
新刊「残業学」重版出来、5刷決定です!(心より感謝です)。AMAZONの各カテゴリーで1位を記録しました(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」を記録しました。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「組織開発の探究」発売中、重版4刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
   
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約11000名の方々にご登録いただいております(もう少しで1万人!)。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
   
友だち追加
  

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.22 08:33/ Jun

最近、僕は何をやっているのか?そうね、いろいろやってます!?

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)